本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > エネルギー新時代

エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第60回 塗ってつくれるフィルム型リチウムイオン電池 [積水化学工業]

積水化学工業は、軽くて大容量、しかもフィルム形状なので用途がグンと広がりそうなリチウムイオン2次電池(LIB)を開発した。2013年12月に開催された環境関連の展示会「エコプロダクツ2013」(東京ビッグサイト)に出展したところ、内外で大きな話題を呼んだ。2014年夏にはサンプル出荷を開始し、2015年度から本格的な市場展開に入る計画だ。

このフィルム型リチウムイオン電池は、その重量が現行品の3分の1と軽く、しかも電池容量は3倍と大きい。高性能なゲルタイプの電解質を電極表面に塗工することによってフィルム型を実現したところにこの技術のポイントがある。

軽量で大容量のフィルム型リチウムイオン電池。ポイントは電解質をゲル化(固形化)したこと

軽量で大容量のフィルム型リチウムイオン電池。ポイントは電解質をゲル化(固形化)したこと

電解液の液漏れを防ぐ

現在普及しているリチウムイオン電池は、正極のリチウム金属酸化物、負極のグラファイト(炭素材)、有機系の電解質からなる。この電解質は液体(電解液)なので、リチウムイオンの動きはスムーズなのだが、難点がある。液体なのでどうしても液漏れのリスクを伴い、もし液漏れするとショートを起こして発火したりすることだ。
 そこで電池メーカー各社はそのリスクをなくすため、電解液をゲル化するなど固形化を目指した開発を進めているのだが、ゲル化すると案に相違してリチウムイオンの動きが鈍り、電池としての性能が出ないという壁があった。

今回、積水化学がついにその壁を突き破った。従来から試みられた電解液をゲル化しようとする手法では、どうしてもリチウムイオンの動きを鈍らせてしまう。しかし、どこかにブレークスルーがあるはずと苦戦を続け、試行錯誤してポリマー構造を幅広く検討した結果、ようやくリチウムイオンがなめらかに動く新規の有機ポリマーの構造に辿りついた。それについて同社R&Dセンター先進エネルギーグループ長の加納正史さんは言う。
 「このポリマー構造は公開していませんが、リチウムイオンが正常に動く通常の温度範囲においては、電解液と同等レベルの性能が出せることを確認しています。それによって電解質がゲル化でき、リチウムイオン電池の安全性が高まりました」

電解質がゲル化されれば、電極表面にその電解質を塗布することが可能になる。それによって高速生産性が実現し、プロセスコストの低減が達成できる。具体的にはつぎのような理由だ。
 電解液を用いる従来の方法では、一般的に真空注液工程といって、電池内部の空気を抜きながら電解液を注入する。この方法だと必然的にバッチ工程になり、手間と時間のかかるタクトシステムになってしまう。
 それに対し、新開発のゲル化した電解質を電極に塗布するシステム(塗工・高速積層プロセス)なら、連続工程によって生産できるというわけだ。この連続塗工プロセスによって、生産速度は約10倍に高まった。一部の小型電池に塗工プロセスを採用しているものがあるが、大容量のリチウムイオン電池ではこれが世界で初めてという。
 ゲル電解質を幅広かつ連続工程で電極に塗布するというプロセス技術は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて開発した。

フィルム型リチウムイオン電池は環境関連の展示会でも来場者の話題となった

フィルム型リチウムイオン電池は環境関連の展示会でも来場者の話題となった

負極材も新たに開発

今回新開発したフィルム型リチウムイオン電池のもう1つのポイントは、高容量の負極材にある。前述のように、最近のリチウムイオン電池の負極材は、グラファイト(炭素材)を用いるのが一般的。ただ、正極のリチウム金属酸化物が発するリチウムイオンを負極が吸収する場合、グラファイトはそれ以前の鉛系材料より高いエネルギー密度能力が得られるとはいえ、それでもその能力に限界がある。
 そこで積水化学は今回、このボトルネックを解決すべくグラファイトに代えて新たにケイ素系シリコンを負極材として採用した。加納さんの説明はこうだ。

「ケイ素系材料は炭素系のそれより10倍ほどリチウムイオンの吸収能力があるとされています。ただ、たくさんのイオンを吸収するということは、シリコンがそのぶんだけ膨れたり縮んだりすることを強いられるわけで、それによってシリコン自体がたちまち崩壊し、伝導性を失って電池として機能しなくなる。
 10倍というのはあくまで理論値であって、各社ともいかに伝導性を担保しつつ電池としてシリコンを使うかという研究にしのぎを削っているわけです」 積水化学はあらゆる角度から検討した結果、炭素系に比べ約3倍(900Wh/L)の電池性能をもった電池セルが開発できたという。
 想定したサイズは、長さ200㎝、幅30㎝、厚み0.3~5㎜。当然ながらユーザーの要望に応じてこのサイズは変わる。
 電池容量が大きく、軽量でフィルム形状、安全性が高く低コストとくれば、想定されるその用途は広い。自動車、住宅、電子機器向けなどにユーザーの要望を取り込みながら普及を図っていきたい、としている。

掲載日:2014年3月20日

前の記事次の記事


このページの先頭へ