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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第59回 水流の取込み部に圧力差を発生させて発電効率を高める小型水力発電機 [茨城製作所]

茨城製作所は、用水路や小川の流れの中に置くだけで簡易に発電できる小型水力発電機「Cappa」を開発した。2013年12月の発売以来、「緊急災害時などの備えにこれは便利」と全国の自治体などから注目を集めている。

茨城製作所は日立製作所の協力会社で、エレベーターやエスカレーターのモーター、発電機などの産業用回転機を主に製造する。2008年秋のリーマンショックで激減した受注をカバーするために事業の新機軸を模索し、それまでに蓄積してきた発電機技術を活かして新製品開発につなげようと取り組んだ成果が小型水力発電機「Cappa」だった。流体に関する研究で学位(博士)をもつ菊池伯夫社長(当時、専務)のプロジェクトチームで開発した。

小型水力発電機「Cappa」

小型水力発電機「Cappa」

集水筒に圧力差を生じさせて水流を増速する

Cappaは、集水増速装置(ディフューザー、増速プレート)、2枚羽根式のアルミ製プロペラ、ダイナモ(発電機)、バッテリーで構成される。全重量は57㎏と軽く、用水路などに成人2人で楽々と設置できる。また、設置に際して工事はほぼ不要で、Cappaは置くだけで発電を始める。

Cappaはディフューザー(FRP製の集水筒)に水流を取り込むと、その流速を1.4倍に増速してプロペラに供給する。この水流が増速する仕組みは、水が通過するディフューザーの入口(低圧)と出口(高圧)に圧力差を生じさせることにある。そのため、ディフューザーの形状は6~10度の傾斜を持つ円筒にしてある。また、ディフューザーの出口に設けた増速プレートも水流が高圧になる機能を果たす。この集水増速装置を構成する一連の技術等は特許出願中だ。

ディフューザーの出入口に圧力差を生じさせることで、プロペラを回転させる水流の速度を増す

ディフューザーの出入口に圧力差を生じさせることで、プロペラを回転させる水流の速度を増す

ディフューザーに取り込んだ水流の速度が秒速1.75mの場合、それを集水口で1.4倍(秒速2.45m)に増速してプロペラを回し、1分間に400~700の回転数を得る。この高速回転で得たエネルギーをダイナモで電気に変換する。プロペラの動力をダイナモに伝える伝動部材など強度を要する部分にはステンレス鋼を採用した。

水さえ流れていれば発電できる

以上がCappaの発電メカニズムだが、システム構成としてはコントロールパネル(コンバーター、インバーター)とバッテリーを揃えて安定出力を実現している。
 ダイナモで発電した電気はコンバーターにより交流から直流に変換されてインバーターに入り、インバーターで直流から安定した交流に変換されてバッテリーに蓄電される。そして、そのバッテリーから放電される安定した交流の電気を利用する。発電機の定格出力は160W。ちなみにLED電球の消費電力は15W以下、スマートフォン約6W、ラジオ20W以下、TV(17インチ液晶)60W、ノートパソコン50~120Wと緊急災害時なら十分に対応可能だ。

「3.11で被災したときは当社のある日立市も1週間以上完全に停電し、その間わずかな灯りもない状態が続いて大変不自由な思いをしました。電気が停まると私たち現代人の生活は途端に立ちゆかなくなってしまいます。そんなとき、小規模でもこんな電源があればとつくづく思います」(商品開発部・川上武宣さん)

このCappaの仕様寸法は幅832㎜、奥行き770㎜、上部バッテリーも含めた高さ665㎜。適用条件は、幅1.1m、水深50㎝以上、流速1.5-2.0m/sの用水路や河川なら発電できる。
 「水力発電というとこれまでは水流の落差が必要とされてきましたが、私どもの発電機はその通念を覆しました。落差は不要で水さえ流れていれば発電できる。それがCappaの強みです」(川上さん)

利便性・デザイン性が評価され国から表彰

2012年に1号機を開発し、同年暮れに再生可能エネルギー世界大会の展示会に展示した。独立行政法人科学技術振興機構(JST)マッチングプランナー鴨志田氏の仲介で茨城大工学部機械工学科の西泰行准教授を紹介され、西准教授の協力を得て茨城製作所が開発した1号機は全長1080㎜と大きく、プロペラも3枚羽根式だったが、西准教授のシミュレーション解析に基づいて大幅な改良を加え、プロペラを2枚羽根式に替え、寸法も現在の大きさに小型化した。ちなみに小型化しても1号機と同等もしくはそれ以上の性能を実証し、かつ製作コストも引き下げた。

Cappaの価格は290万円(発電機本体、インバーター、コンバーター、蓄電器)。設置場所によって必要な延長コードの長さは異なるためにオプションを含めた価格は変わるが、大規模な土木工事が不要なために従来の水力発電よりも安価に導入でき得る
 商品名は、水中の想像上の動物「河童」にちなんで「Cappa」とした。用水路などに複数機のCappaを直列に設置すれば、当然ながらその分発電量も上がる。ただ、その場合は先頭の発電機が取り込んだ水流が元のエネルギーを取り戻すまでの距離として10mくらいの間隔を要するという。

Cappaは、経済産業省の「グッドデザイン・ベスト100」(2013年度)に選ばれ、さらにそのベスト100の中から特に優れた中小企業の製品開発に贈られる「グッドデザイン・ものづくりデザイン賞(中小企業庁長官賞)」を受賞した。製品の利便性、実用性だけでなく、洗練されたデザイン性も評価されての受賞だった。

同社は当面Cappaについて、緊急災害時などの備えとして自治体向けを中心に利便性を訴求しつつ普及を図っていく。が、農作物を被害から守る防獣対策用の通電網やイベントなどのイルミネーション向け、あるいはエコ学習向けにも営業を進めていく。
 すでに2013年9月には、福島県南会津の只見町で教育委員会主催のエコ学習に供し、身近な水路から電気エネルギーが得られることを実証的に示して好評だったという。

掲載日:2014年3月13日

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