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エネルギー新時代


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第58回 空気力学の常識を覆す独自の風力発電機 [グローバルエナジー]

ベンチャー企業のグローバルエナジー(栃木県下都賀郡岩舟町)は、従来の常識を覆した発想で風力発電システムを開発、学会や業界に衝撃波を広げている。同社の鈴木政彦社長が開発した「ベルシオン式風車」は、従来の風車に比べて著しく高効率かつ省コスト、省スペースであり、風車の回転による騒音もほとんどない。
 2014年2月には栃木市の市庁舎に実用機第1号が稼働する。

翼の先端を45度曲げる

鈴木社長はかつてレーシングカーの車体を開発した経験から空気力学の知識はあったが、風力発電に関しては素人同然だった。それがあるきっかけから高効率の風車開発につて相談が持ち込まれ、既存の風車を根本から見直してみた結果、「これまで常識とされてきた理屈はまったく反対なのではないか」と考えた。それをもとに試行錯誤し、たどりついた結果がベルシオン式風車だった。

ベルシオン式風車の1つの特徴として、翼の先端が内側に45度曲がったウィングレット形状をしているが、これまでの風車の概念として翼の先端を曲げることは常識外れだった。しかし、その常識を打ち破り、かつまた新発想を追い求めるという意味を込め、version(傾斜、変化)をもじって「ベルシオン」と名づけた。
 先端が曲がっていない従来のストレート翼では、翼端から風を逃がしている。それに対しベルシオン翼は、実証試験で割り出した理想的な比率で翼端を内側に曲げているので風を逃がさない。
 鈴木社長が開発した風車は、プロペラ型と垂直軸型の2つのタイプのベルシオン式風車だ。

プロペラ型ベルシオン式風車(左)と垂直軸型ベルシオン式風車

プロペラ型ベルシオン式風車(左)と垂直軸型ベルシオン式風車

逆テーパで幅広の翼を設計

従来のプロペラ型風車は、一般的に翼が3枚で先端に向けて細く、ひねりをつけた形状であるが、「それ自体そもそも反対ではないか」と鈴木社長は断言する。
 「風車は揚力で回転し、揚力は、翼の面積と速度の二乗の積で求められます。ということは、風車に最もエネルギーを伝えるのが翼先端の面積になりますので、先端が広ければきちんとエネルギーを回収できるのです。ところが、実際の翼は逆で先端を細くしていますが、これは揚力の式からみても効率が悪いと考えています」
 そう考えた鈴木社長は、従来の定説とされる風車の空気力学を疑い、4000基もの風車を試作した。その結果、従来型のような翼の先端が細い風車だと初期駆動に力がなく、発電機に負荷がかかるとたちまち失速してしまうが、翼の枚数を5枚に増やし、逆テーパー型で広い翼面積にすれば、風のエネルギーを風車の中心軸から離れたところで最大限にとらえることができ、回転軸に伝わるトルクも大きくできる。その思想から設計したのがプロペラ型のベルシオン式風車だ。

従来のプロペラ型風車の翼は先端に向かって細く、ひねりのついた形状だが、ベルシオン式風車の翼はまったく逆の形状をしている

従来のプロペラ型風車の翼は先端に向かって細く、ひねりのついた形状だが、ベルシオン式風車の翼はまったく逆の形状をしている

さらに、従来のプロペラ型風車が瞬時の突風や風向の変化に対応できず、風車全体が回転してしまうという難点をもっているのに対し、ベルシオン式風車は方向舵の形状とプロペラの位置関係の工夫により、常時風向に正対することを可能にした。

もう1つのタイプの垂直型ベルシオン式風車は、2枚の翼を中心軸から左右対称に垂直に設けている。そのため風向制御が不必要で、頻繁に風向が変化する地域でも安定運転が可能になるという利点がある。
 翼の形状はプロペラ型同様に先端が内側に曲げられ、効率的に風をとらえ、しかも翼の面積を広くとることで揚力を引き出し、最適な回転数を得られるように設計した。また、発電機の負荷がかかってもそれによる失速はほとんどない。

垂直型ベルシオン式風車の翼は2枚式で、翼の両端が内側に曲げられているので効率的に風をとらえる

垂直型ベルシオン式風車の翼は2枚式で、翼の両端が内側に曲げられているので効率的に風をとらえる

さらに垂直型という構造上の利点から、必要に応じて1基の設備に複数段の風車を積み上げることができるため、限られた立地スペースの有効利用が可能になり、設置コストも大幅に引き下げることができる。
 垂直型ベルシオン式風車の翼は、先端が内側に曲がったウィングレット形状になっていて、それが翼先端の空気の剥離と渦(乱流)の発生を防ぐため風切り音がほとんどせず、騒音公害の心配がないので陸上立地を容易に進めることができる。

ベルシオン式風車の翼の性能については、すでに足利工業大学の牛山泉教授との共同研究で風洞試験による実証データを得ている。それによると、一般的な風車では風速4mでせいぜい6%程度、14mの強風でも26%くらいしかエネルギーを回収できないのに対し、ベルシオン式風車では4mの低風速でも25%、最大で32%ものエネルギーを高効率に回収できることを確認した。
 また、同社では別表のようなフィールドテストのデータを取っており、自然風の条件下ではさらに優れた数値を引き出している。この風力発電システムは2月より栃木市役所で稼働するほか、韓国では大型設備が設置される予定だ。

ベルシオン式風車の研究開発で得た知見から翼のない飛行艇を開発した

ベルシオン式風車の研究開発で得た知見から翼のない飛行艇を開発した

従来の常識を疑い、その常識を打ち破って開発が進められてきたベルシオン式風車だが、鈴木社長はいま、風車ブレードの開発で得た空気力学の研究実績をベースに、船舶用スクリューや飛行艇への展開にも取り組んでいる。東大などとの共同研究で実証データを積み上げており、その実現もそう遠くなさそうだ。

掲載日:2014年2月20日

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