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エネルギー新時代


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第56回 洋上風力と潮力の2つのエネルギーを利用して発電するハイブリッド発電システム [三井海洋開発]

三井海洋開発は、洋上風力と潮流の両エネルギーをとらえて発電する「浮体式潮流・風力ハイブリッド発電」(SKWID)の開発を進めている。世界初の発電システムで、2014年に佐賀県東松浦半島北端、呼子町の海上にこの設備を設置、その後は九州電力の送電線を通じて電力供給を開始する計画だ。

「SKWID(スクイッド)」は洋上の風力と潮流の2つの自然エネルギーを利用して発電する

「SKWID(スクイッド)」は洋上の風力と潮流の2つの自然エネルギーを利用して発電する

低重心で復元力に優れる風車

この「浮体式潮流・風力ハイブリッド発電」(SKWID )は、水上の風車と水中の水車を中央の浮体部分で一体化させた構造。風車には垂直軸型のダリウス風車を採用しているが、この風車は、一般的な陸上型のプロペラ式風車と違って重心が低いため、海上での復元力に優れる。しかも、どの方向から吹いてくる風でも受けることができるため、陸上型のように電力を使って風車の向きを変える必要がないうえ、同じ直径の陸上型と比べると約2倍の発電量が得られる。

一方の水車には、大きな曲面形状(縦割りの円筒)を組み合わせたサボニウス水車を採用。潮の流れがどちらの方向を向いても同じ回転方向を保ち、緩やかな潮流でも確実にとらえる。しかも、この水車の回転は潮流以上のスピードが出ないため、海の生態系を脅かすことがないうえ、潮流を受けて回転する抗力型なので、カキやフジツボなどが付着してもそれによって性能を低下させることはほとんどない。

SKWID (スクイッド)の風車は垂直軸型のダリウス風車、水車はサボニウス水車であり、黄色部が浮体で発電機を内蔵している

SKWID (スクイッド)の風車は垂直軸型のダリウス風車、水車はサボニウス水車であり、黄色部が浮体で発電機を内蔵している

海上にプカプカ浮く中央部の浮体は円盤形だ。底の浅い形状なので、水深の浅い海域にも容易に設置できる。浮体の大きさは直径約29mで、その真ん中に空洞が空いたドーナツ状になっている。その空洞部分で水上の風車と水中の水車が垂直に連結され、その連結されたあたりに発電機が設けられる。

円盤形の浮体の内部に発電機が設けられ、その発電機を介して風車と水車の軸が連結されている

円盤形の浮体の内部に発電機が設けられ、その発電機を介して風車と水車の軸が連結されている

主要部の風車、発電機、水車は直線上に垂直並列する構造だ。佐賀県呼子町の海上に設置する予定の装置は、風車(ブレード)が幅1.2mで長さは約36m。水車の高さは約16mで、風車先端から水車下部までの主要部全長は60m強だ。

このような縦長の構造物を海上に浮かべるのかと不安定に思えるが、そこは絶妙の設計がほどこされている。装置の全体の重量が約1000tであるのに対し、水中の水車のそれは300t弱あり、水車自体がおもりの役目をはたして低重心の風車の直立安定性を保ち、さながら起き上がりこぼしのように復原力が働く。

浮体の中央が空洞になっていることは先述したが、その穴を垂直に貫く水車と風車の直線上の連結主要部は浮体とは一体化しておらず、防振ゴムによって主要部を支えている。
 防振ゴムは、ゴムと鉄板の積層構造(ミルフィーユ構造)になっていて、免震構造のゴムとほとんど同じ。この防振ゴムによる支えで、主要部には波の揺れが伝わりにくく、直立安定性が保たれる。

ダリウス風車の起動に外部電源が不要

発電の仕組みは、まずサボニウス水車が潮流をとらえて回転を始める。この水車による回転エネルギーは増速機を通じて回転数を上げ、そのエネルギーを水上部のダリウス風車に伝える。風車自体は一定の風を受ければ自力で回転を始めるが、それ以下の速度の風でも起動させることができるよう、水車による回転エネルギーが利用される。

湯沢典弘事業開発部マネジャーの説明はこうだ。
 「ダリウス風車の起動のアシストのために、通常はモーターを使ったりしますが、当社のSKWID は水車によるエネルギーでそれをまかなっています。従来の風車で不可欠とされてきた外部電源を必要とせず、離島向けの独立電源や非常用の電源としても期待が大きいと考えています」
 風をとらえた風車は、風速の3倍で回転して発電を開始し、さらにSKWID は水車のエネルギーでも発電する。さらに風が強くなって風車の回転が上がると、水車と風車のシステムが自動的に切り離され、風車だけで発電を続ける。気象条件に応じて潮流と風力を最適に活用し、安定して発電できることがこの装置の強みだ。

SKWID は、3方向に2本ずつ計6本のチェーンを海底のアンカーに接続して係留される。その距離は半径500mほどだ。

風車と水車の直結部に設けた発電機の発電能力は最大1MWで、SKWID 1基で約300戸の電力をまかなうことができる。

装置名のSKWID は、savonius keel & wind turbine darrieusの頭文字をとって名づけたが、呼子町がイカの産地であることから、同じ発音の「squid」(イカ)にもなぞらえている。「海洋エネルギーの開発は、地元漁業者との協調によって成り立つものであり、その思いをこめた命名です」と湯沢さんは語る。

将来的には、既存電力の補完のみならず、漁業関係者に装置をリースし、漁業者は漁業と売電を組み合わせた兼業で生計を営んでもらうこともビジネスモデルとして考えられるという。

掲載日:2014年2月 6日

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