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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第51回 海底の熱水を利用した燃料電池 [海洋研究開発機構]

独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)と理化学研究所は、深海底から噴き出す熱水を利用した燃料電池(熱水-海水燃料電池)の開発を進めている。短時間・小出力ながら、すでに発電に成功。将来的に発電能力をさらに上げ、深海における研究・開発などの電源として活かしていく計画だ。

深海は未利用鉱物資源の宝庫

この熱水-海水燃料電池は、深海底の探査に用いるAUV(自走式潜水艇)やさまざまな調査機器の新動力源として開発が進められた。
 深海には海底温泉のように熱水が湧出しているところがある。その熱水域は、未利用鉱物資源が豊富に眠っているほか、特殊な性質をもった生物も生息していて、この近年、世界的にも注目度が高まっている。

深海で熱水が噴出する孔(中央が「チムニー=煙突」と呼ばれる構造物で、その先端から熱水の噴出によるゆらぎが見える)

深海で熱水が噴出する孔(中央が「チムニー=煙突」と呼ばれる構造物で、その先端から熱水の噴出によるゆらぎが見える)

この海底での探査や調査にはさまざまな装置が使われるが、それらの動力源は燃焼系のエンジンが使えないので、海上の船や陸上から電気を送り込むケーブルを延ばすか、もしくは機械自体に電池を装着することになる。しかし前者の場合はケーブル敷設に膨大なコストがかかり、後者には頻繁に電池交換しなければならないという難点がある。 そこで、その代替案として考えついたのが熱水-海水燃料電池。JAMSTECの深海・地殻内生物圏研究プログラム研究員、山本正浩博士は語る。
 「いわゆる地産地消型の発電です。海底の熱水を使う方法として温度差発電や地熱発電の海底版も考えられてはいますが、いずれも技術的、コスト的問題があって実用化にはいたっていません。それと違って私たちの進めている発電は、海水に含まれる化学成分の電位差を使った燃料電池なのです」

海底から湧出される熱水には、還元的な化合物(硫化水素や水素)と酸化的な化合物(酸素)が大量に含まれている。硫化水素や水素はマイナスの電極、酸素はプラスの電極で反応して電気と水をつくり出す。

「海底の熱水は温泉みたいにボコボコ湧きだしており、海水はつねに循環しています。燃料は無尽蔵で、しかも常時リフレッシュされて供給される。このことからも燃料電池にいかに優位性があるか、容易に想像がつこうかと思います」

シンプルな燃料電池の構造

この熱水-海水燃料電池の構造はいたってシンプル。熱水側電極には直径3cm×長さ40cmのチタンパイプの内部にイリジウムを塗布したチタン網を、また海水側電極は白金を塗布した50cm×50cmのチタン網を配置した。その両極の電極を海底のしかるべき熱水噴出孔とその周辺海水に設置する。すると、熱水側電極では主に硫化水素(H2S)が酸化され電子が電極に流れ込む反応が進行し、海水側電極では主に酸素(O2)が電極から電子を受け取り還元される反応が進行することから、狙いどおりLEDの電球3個を点灯(出力21mW)させることができた。

熱水-海水燃料電池の構成と発電の仕組み

熱水-海水燃料電池の構成と発電の仕組み

海洋研究開発機構が深海で発電に成功した「熱水-海水燃料電池」

海洋研究開発機構が深海で発電に成功した「熱水-海水燃料電池」

電極に用いた材料は、プラス極が白金、マイナス極がイリジウム。正負両極とも白金を使いたかったが、「物資不足の船上にあって苦肉の策でイリジウムを使ったにすぎない」(山本さん)という。
 最初の実験で失敗したくなかったので高価な白金やイリジウムを使ったが、実用化に向けては安価な素材を考えている。

「現実的にはカーボンベースの素材がまず考えられるでしょう。でも、電気を通すものなら鉄でもなんでもいい。時間の経過とともに電極に硫化鉱物が付着していきますが、硫化鉱物自体が優れた特性を示すことも実験でわかっています。硫化鉱物が電極に付着し、それ自体が電極として成長するのです」
 発電量は電極の表面積に比例するので、電極素材が安価でその面積を増やすことさえできれば、当然ながらそのぶん発電能力も上がることになる。
 発電を確認した海底の深度は1050m、熱水温度は309℃。熱水噴出孔から噴き出す硫化水素濃度は1リットル当たり4.5ミリモル。「箱根・大湧谷の硫化水素よりはるかに濃い」そうだ。

長期の実証試験へ向けた開発が進む

深海での試験機会が得にくいので、できれば陸上に同一条件の実験室をつくりたいところ。が、そんな高濃度の硫化水素環境を陸上につくるのは現実的ではない。そこで、温泉地に実験施設を保有する大学と共同研究することももっか検討している。
 今後の研究課題は、発電能力を上げるとともに、腐食に強く長期にわたる使用に耐え得る装置に仕上げることだ。
 この熱水-海水燃料電池の開発は現在、日本が世界で先頭を行く。これが実用化したとき、海洋国日本の海底資源開発能力は格段に上がる。

「自走式の海底探査ロボットは、そのほとんどが電池で動いています。1日8時間稼働すると、それを毎日引き揚げて電池交換しなければなりません。しかしこの熱水-海水燃料電池を海底に設置して充電ステーションにすれば、そんな手間など不必要です。ロボットは探査したあとその充電ステーションに戻って勝手に充電し、それが終わるとすぐまた探査に出ることが可能になります」
 長時間連続作動して海底から送信されてくるカメラ映像が詳細かつ容易に分析しやすくなる、と山本さんの期待はふくらむ。

掲載日:2013年12月12日

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