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第50回 海水と淡水の圧力差を利用する浸透圧発電 [協和機電工業]
浸透圧発電は、海水の圧力(30気圧)と淡水の圧力(1気圧)の差から得られるエネルギーを利用して発電する。これは、海水と淡水を半透膜(真水は透過するが塩分は透過させない膜)で隔てると淡水は圧力の高い海水側に自然と浸透する(=この浸透によって淡水に圧力が生じる)という自然の原理を応用したものだ。
浸透圧発電の特徴には、(1)熱や化学反応を伴わない混合エネルギーを利用する技術である、(2)天候や昼夜の影響を受けない安定した、制御可能なエネルギー利用技術である、(3)都市圏の近郊に立地でき、海水と下水処理場が揃う条件であれば原料の調達が容易、などがある。
この浸透圧発電について協和機電工業は、日本の第一人者である東京工業大学・谷岡明彦特任教授など共同で2002年から技術を開発してきた。
そして2007年に同社と東京工業大学(東工大)らの共同研究がNEDOの委託事業に採択されたことから開発が本格化し、2008-2010年度もNEDOの支援を得る中、2009年に福岡市の大型海水淡水化施設に浸透圧発電プラントを完成させた。
従来、この海水淡水化施設で発生する濃縮海水(海水から水分を除いたあとに残る塩分濃度の高い海水)は淡水と混合して塩分濃度を下げて海に戻している。その濃縮海水を発電に利用しようと協和機電工業・東工大らのグループは考え、2010年には実証試験を始めた。
30気圧の濃縮海水で試験
同グループの実証プラントは図のように、膜モジュールに海水と淡水を導入すると、浸透圧差によって海水に浸透した淡水が圧力を得た状態でタービンに到達し、タービン発電機を回転(駆動)させる。

浸透圧発電のフロー
海水淡水化施設から排出される濃縮海水の浸透圧は海水の約2倍の60気圧になるが、同グループでは濃縮海水の水圧を30気圧に調整して用いる。ちなみに、水のエネルギーは水量と水圧の積になる。例えば30気圧の濃縮海水と1気圧の淡水を半透膜で隔て、浸透圧差を利用すれば、淡水(1気圧)が濃縮海水に浸透することで得られる圧力(30気圧)とその時の水量分だけエネルギーとして得られる(圧力×水量)。
また、実証プラントでは、膜モジュールから排出される濃縮海水をエネルギーとして回収し、濃縮海水供給ポンプの動力として利用する。
半透膜の開発が1つのポイント
同グループの研究は、2011年度からは4カ年のプロジェクトとして内閣府の支援(最先端研究開発支援プログラム)を得て開発を続けている。そして2011年8月には、濃縮海水と下水処理水を用いた浸透圧発電の成功を発表した。試験の計画では発電量7.7kWを目標設定したが、実際の出力は3.7-5.6 kWだった。

膜モジュール
その結果、今後は半透膜の開発をポイントの1つに定める。これまでプロジェクトでは市販の中空糸製の逆浸透膜(半透膜)を用いたが、この半透膜は海水に圧力をかけて真水を得るためにつくられた膜のため、淡水が濃縮海水へ移動する浸透圧発電では水の流れが逆になってしまう。そのためどうしても浸透の効率が上がらない。よって、淡水→濃縮海水という流れに合致した半透膜の開発が必要になる。
そのため、半透膜の穴の大きさや塩分を通さない度合い、膜の強度など、浸透圧発電システムに特化した半透膜の開発に向け技術開発を進めていく。
掲載日:2013年11月28日