本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > エネルギー新時代

エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第49回 光吸収力を高める、新しい構造の薄膜シリコン太陽電池 [産業技術総合研究所つくばセンター]

独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)は、太陽光発電技術研究組合(PVTEC)と共同で、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託研究の一環として、薄膜シリコン太陽電池の光吸収力を高めた新たな周期構造(テクスチャ構造)を開発した。同構造を利用した薄膜微結晶シリコン太陽電池において過去最高値の発電効率10.5%を達成、さらにそれをアモルファスシリコン太陽電池とタンデム化して14-15%まで高めていく研究開発に取り組んでいる。

膜厚は従来の1/100

太陽電池に用いられる従来のシリコン膜厚が約200μm程であるのに対し、産総研が開発した薄膜微結晶シリコン(微結晶シリコン)のそれは2-3μmとほぼ100分の1の薄さだ。
 既存の太陽電池の製法ではシリコンウエハで作製した太陽電池をガラス基板に並べるが、産総研方式では、1.1m×1.4mの大面積のガラス基板に一体成形することで量産化とそれに伴う低価格化を狙う。その際、当然ながら厚膜は生産上好ましくないので、必然として薄膜にすることが生産上の条件になる。

ハニカムテクスチャ構造の基板に形成した微結晶シリコン太陽電池(直径5cm)

ハニカムテクスチャ構造の基板に形成した微結晶シリコン太陽電池(直径5cm)

ただ、薄膜にすると光を閉じ込めるうえで重大な問題を生じる。膜が薄いと太陽光の透過度が上がるため光の吸収効率を下げてしまうのだ。その難点を解決するために採ったのが、薄膜表面に微細な凹凸をつけるテクスチャ構造だった。
 その凹凸のサイズは0.1-10μmほどで、このテクスチャ構造によって取り込んだ光を発電層内部で散乱させる。光が散乱して縦方向に逃げず横方向に進めば、そのぶん光路長が伸び、結果、発電層における光の吸収力が上がって発電効率が向上する。

薄膜表面の凹凸がきれいに並ぶよう制御する

このようにテクスチャ構造にすることによって、光の透過度が上がる薄膜の問題に解決の道を拓いたのだったが、ことはそう簡単ではない。
 というのも、無作為に凹凸をつけたからといって光の吸収効率がおのずと上がるわけではない。無作為に険しい形状のテクスチャ構造を形成すると、光の吸収力が上がってもむしろ発電効率は劣化することがあるという。産総研太陽光発電工学研究センターの主任研究員・齋均さんはこう述べる。

「太陽光を受けてそれを電流に変換する場合、その電流の値が1cm角当たり30mAであることが1つの目安になります。薄膜表面をテクスチャ構造にする際、これまでランダムに凹凸構造にされてきましたが、それはそのほうがつくりやすいという単に製造上の要請にすぎませんでした。しかし、私たちはそうではなく、規則的な構造、すなわち周期構造に着目しました。最近の研究論文でも、きれいな構造にしたほうが理論的に望ましいことが報告されています。私たちは、薄膜表面に蜂の巣状に穴がきれいに並んだハニカムテクスチャ(蜂の巣構造)にしました。そうするとその穴の直径や深さのパラメーターを制御することによって最適の理論値が導き出しやすくなります。この整然とした蜂の巣構造にしたことによって、薄膜でも30mAという電流数値を達成できました」

穴を深くえぐれば光の吸収が上がるという単純なものではない。穴の直径を一定に設定した場合、穴の深さがある数値を超えると光の吸収性能が落ちる。穴の直径に対し望ましい深さはどの程度かということを的確に見極めたテクスチャ構造を形成することが望ましいというわけだ。

(a)はハニカムテクスチャ構造の表面形状、(b)は同構造を用いた薄膜微結晶シリコン太陽電池の断面

(a)はハニカムテクスチャ構造の表面形状、(b)は同構造を用いた薄膜微結晶シリコン太陽電池の断面

産総研と共同研究を進めるPVTECは、NEDOの委託を受けて、産総研の他、シャープ、パナソニック、カネカ、三菱重工、東京エレクトロンの5社と東工大、岐阜大、九州大の大学の協力開発体制を構築し研究開発を推進している。「大面積モジュールの発電効率が13%になると、実用的魅力が高まる。その数値が当面の目標」と同組合技術担当部長の吉田功さんは言う。

さらに発電効率の向上を目指す

これまで微結晶シリコンアを中心に研究開発を進め、その実証データを取ってきたが、現在はアモルファスシリコンとの積層構造でさらに性能を高めることを狙った太陽電池の研究開発を進めている。緑色から赤色の波長の光をとらえる微結晶シリコンと、青色から緑色への波長の短い光をとらえるアモルファスシリコンとを組み合わせるタンデム化によって光をオールラウンドにとらえ、発電効率の向上につなげていく。

従来の結晶シリコン太陽電池は、高温下で発電効率が下がるのが泣きどころ。それに対してこのタンデム型薄膜シリコン太陽電池は高温条件下でも性能劣化が小さいのも強みで、太陽がギラギラ照りつける砂漠や熱帯地域で優位だとして、それら諸国の将来的な市場性にも期待を膨らませている。

掲載日:2013年11月21日

前の記事次の記事


このページの先頭へ