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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第47回 太陽光の入射角度に応じて透過率を自動制御する調光シート [産業技術総合研究所中部センター]

窓から室内に入りこむ日射は、朝と夕方、太陽の高度が低い時は、部屋の奥の方まで差し込み、太陽の高度が高い昼には、窓際にしか差し込まないと思われている人がほとんどではないだろうか。しかし、太陽光がどのくらい室内に入りこむかは、建物の向きと季節によって、大きく変化する。例えば、夏の太陽光が、真南を向いた建物内に差し込む日射は、朝と夕方は、窓際までで、正午に最も部屋の奥まで差し込む。つまり、窓に対する鉛直方向の太陽光の入射角は、朝と夕方は90°に近く、昼に最も小さくなるのだ。
 この目からウロコが落ちるような事実に気が付き、独自の発想から産業技術総合研究所の吉村和記さん(サステナブルマテリアル研究部門環境応答機能薄膜研究グループ長)は住友化学と共同で新しい自動調光型省エネシートを開発した。

断熱したいけれど景色も見たい

元来、窓の機能は光を取り入れることにあるが、採光の時に通常の窓ガラスだと可視光以外に熱(近赤外光)も透過させてしまう。それが建物の断熱性を低下させる要因になっている。
 そのため最近では、断熱性の高い複層ガラスやLow-E複層ガラス(エコガラス=断熱性、遮熱性に優れた複層ガラス)が徐々に普及している。さらに断熱に加え、日射を効果的に遮る目的で、ガラスそのものが光や熱の出入りを制御する調光ガラスも開発されている。

その調光ガラスには、夏季の冷房負荷を下げるための遮光機能だけでなく、窓から外の景色を見たい(光を透過させる)という需要もある。そのため省エネルギー用の調光ガラス(低放射率ガラスやエレクトロクロミック窓など)が実用化されている。
 ただし、これらの調光ガラスは、夏季と冬季で日射量が異なるにもかかわらず、一律に太陽光を遮蔽してしまうため、断熱・遮熱性を発揮する一方で窓外の景色を見るための光も遮ってしまう。それを改善するため吉村さんたちは、夏季のように入射角の大きな太陽光だけを遮ることで、断熱・遮熱しながらも景色を見るための光は取り入れられる調光ガラス(調光シート)の開発を目指した。

太陽光を夏は遮蔽、冬は透過させる調光シート

今回、開発した調光シートは、夏季と冬季で太陽光の入射角が変化することを利用して、全反射現象(屈折率が大きい物質から小さい物質に光が入る時、入射光が境界面を透過せず、すべて反射する現象)によって夏は太陽光を遮蔽し、冬は透過させる。
 また、既存の調光シートとは異なり、外部の景色は常に見えるものの、直達日射(大気中で散乱・反射されることなく太陽から直接地上に到達する日射)の透過を制御でき、さらに、調光シート自身は何も変化しないにもかかわらず、季節によって自動的に調光できることが特徴だ。
 調光シートの基本構造は図1のように、同じ傾きを持ったシート(透明体)を上下反転させて合わせてある。

図1:調光シートの基本構造

図1:調光シートの基本構造

このシートは図2のように、入射角が60°より小さい光は入射角と同じ角度で透過させるが、入射角が60°を超えるとシート間で全反射が生じてすべての光が底面に集まり透過させない。そのため、このシートを用いればプロファイル角(図3)によって自動的に太陽光の透過を制御できることになる。

図2:入射角に対する太陽光の透過特性

図2:入射角に対する太陽光の透過特性造

                       
図3:プロファイル角とは、太陽光が差し込んだとき、窓に垂直な平面部分にできる射影の角度

図3:プロファイル角とは、太陽光が差し込んだとき、窓に垂直な平面部分にできる射影の角度

ちなみに、真南に面した窓にできるプロファイル角は、冒頭に述べたように夏季(春分の日から秋分の日まで)は朝と夕に90度近くなり、正午に最も小さくなる。冬季は逆に朝、夕はゼロに近く、正午に最も大きくなる。

ところで、図1のような構造の全反射調光シートをそのまま窓ガラスに用いると厚みが大きすぎてしまうため(シートの大きさが1mの場合、厚みが約10cmになる)、図4のように、面積の小さな全反射調光シートを多段にして窓ガラスに張り付ける。

図4:多段にした全反射調光シートの断面と光の透過特性

図4:多段にした全反射調光シートの断面と光の透過特性

また、各段の全反射調光シートの下側の傾きを42°以下にすることで、水平方向の光はそのまま透過するので外の景色は透明ガラスのように見える。
 ちなみに全反射調光調光シートを多段にした場合、全反射は起きるが光を完全には遮断しないため、遮断率は約75%となる。
 図5は透明アクリルで多段の全反射調光シートを作製した模型だが、入射角が60度以下だと光は同じ角度で透過するが(左側)、入射角が60度以上(右側)だと相当量の光を遮断するため影ができている。

図5:透明アクリルで多段の全反射調光シートを作製した模型

図5:透明アクリルで多段の全反射調光シートを作製した模型

実際の環境でも効果バツグン

以上、述べた多段型の全反射調光シートだが、実際の環境でも太陽光は直達日射だけでなく、間接日射もあるため、それを含めた太陽光の遮蔽能力をフィールドテスト(真南に面した窓に4段の全反射調光シートを貼り付けて太陽光の透過量を時間ごとに測定)した。その結果、1日の太陽光の透過率は夏季38%、冬季80%であることがわかった。つまり、夏と冬とでは約40%の太陽エネルギーの透過を自動的に制御したことになる。自動的とは、全反射調光シートが能動的に太陽光の透過を制御したわけでなく、太陽光の入射角に応じて透過率を制御した、つまり太陽の傾き次第で任意に透過率が変化するという意味だ。いわば、太陽が勝手に自らの透過率を季節ごとに変える自律型の調光シートともいえる。

現在、共同開発先の住友化学では、1mmピッチの多段型全反射調光シートの製造技術を確立し、試作品も完成させたが、さらに狭ピッチ化を目指し、0.1mmピッチの多段型の製造技術を開発中だ。
 この多段型全反射調光シートは既存の窓に貼付できるので、薄型シートを効率よく製造できるようになれば、冷暖房の負荷を大きく低減できる省エネ型の全反射調光シートとしても期待できる。

掲載日:2013年10月31日

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