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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第43回 廃水処理しながら発電する微生物燃料電池 [東京薬科大学]

東京薬科大の渡邉一哉教授の研究グループは、廃水処理をしながら電気を創る微生物燃料電池の開発に成功した。独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の基盤技術開発プロジェクトの一環で進めている研究であり、「5~7年後には実用化可能」と、渡邉教授は予測している。

ドラえもんの動力源?

現在、生活下水や工場廃水の処理方法として広く普及しているのが微生物を利用する活性汚泥法だ。活性汚泥法に用いる微生物は好気性で、酸素呼吸して有機物を分解する。このため曝気槽(微生物に酸素を供給する槽)が不可欠で、廃水を攪拌して曝気するのに膨大な電力エネルギーを要し、その消費量はわが国総電力使用量の0.5%に相当するとの試算もある。
 そのように活性汚泥法は電力依存が大きいため、何かのトラブルで電力供給がストップすると必然的に廃水処理も止まるというリスクも抱えている。

また、好気性の微生物を用いるため当然CO2の排出量も多い。国内のCO2排出総量の0.5%を占め、地球環境保全の観点からも無視できない。さらに、下水処理後の活性汚泥は産業廃棄物として処分されるが、その量は全産業廃棄物の2割にも相当する。

廃水処理のこうした難点を一挙に解決するものとして期待されるのが、渡邉教授らが開発した創電型の微生物燃料電池だ。その基本原理は、酸素呼吸しながら有機物を分解する代わりに、有機物を分解して電気を発生する微生物を使うところにあり、ひらたく言えば、活性汚泥槽を燃料電池化するといった発想だ。

微生物燃料電池の原理。電気を発生する発電菌(電流生産微生物)を使って有機物を分解して電気をつくる

微生物燃料電池の原理。電気を発生する発電菌(電流生産微生物)を使って有機物を分解して電気をつくる

有機物を分解して電気に変換する? まさか、思うかもしれないが、渡邉教授はネコ型ロボットのドラえもんを例に説明する。
 「現在、世の中にあるヒト型ロボットは充電して動きますが、アニメのドラえもんは充電する代わりにご飯を食べて動きます。どら焼きが大好物ですよね。つまり、ご飯やどら焼きなどの有機物を電気に変換できる微生物が体内にいれば可能になりますね。実はそういう微生物が地球上のどこにでもいるのです」

その微生物が最初に発見されたのが米国だった。ニューヨーク近郊の湖底で発見された「シュワネラ菌」という微生物(発電菌)で、シュワネラ菌は無酸素の環境下で電極呼吸*1できることが2000年頃にわかった。電極呼吸(電極に電子を渡す)するのであれば、電極から電子を取り出して創電できる。そう発想した研究の結果、開花させたのが微生物燃料電池だった。そしてこの発想に従えば、ドラえもんも体内に微生物燃料電池をもっていると考えられる。

(*1 ヒトなどの高等生物は、有機物を酸化分解して発生する電子を酸素に渡すことでエネルギーを得るが、発電菌は電極に電子を渡すことでエネルギーを得る。これを電極呼吸という)

独自の工夫を施した微生物燃料電池を開発

微生物燃料電池の仕組みは以下のようだ。
 まず、シュワネラ菌のような発電菌の培養液中に正極(カソード)と負極(アノード)を設け、そこに菌のエサ(有機物)を与える。するとその有機物が負極でみごとに酸化分解されて電子が発生する。電子は負極と正極の電位差によって負極から正極に流れるので、その電流を回収して電気を得る。

ところで、渡邉教授によれば発電菌はシュワネラ菌でなくてもよく、「土壌や水中など地球環境のいたるところに発電菌は存在するのでそれを使えばいい」という。水田を燃料電池に見立て、実際に発電できることもすでに実証済みだ。

微生物燃料電池の外観

微生物燃料電池の外観

2013年5月、渡邉教授らの研究グループは独自に開発した微生物燃料電池を発表した。これは廃水処理に応用する微生物燃料電池だが、絶縁膜(プロトン交換膜)を挟んで正極と負極を一体化した「カセット電極」を用いたこととスラローム型流路を形成したことが特徴だ。
 同研究グループでは、活性汚泥槽の中に複数個のカセット電極を流路に対して交互(スラローム)に設置した。これにより、活性汚泥槽の入口から入流した廃水(有機物)は、カセット電極中の発電菌により分解(=発電)され、活性汚泥槽の出口からは完全に浄化された状態で排出される。なお、スラローム状にカセット電極を配置することで廃水処理の効率を上げられる。

スラローム流式カセット電極型微生物燃料電池の(A)カセット電極型微生物燃料電池の模式図、(B)カセット電極の構造および(C)スラローム型流路の概念

スラローム流式カセット電極型微生物燃料電池の(A)カセット電極型微生物燃料電池の模式図、(B)カセット電極の構造および(C)スラローム型流路の概念

実験では容積約1リットルの装置を用いて模擬廃水処理をしたところ、廃水の滞留時間9時間、1日当たり1.3kgの有機物が処理できる速度を確認した。これは活性汚泥法と同等の処理速度であることから実用化レベルに達したと判断でき、しかも前述のように活性汚泥法で不可欠の曝気・攪拌のための電力が不要、かつ産廃処理費用(活性汚泥の処理費用)もきわめて少なくなると予想される。発電量はわずかでも、廃水処理にかかる電力使用量は現状の活性汚泥法より8割ほど低減できると予測している。

ただ現時点での問題は、電極にグラファイトを使用、しかもカソード電極の触媒にはプラチナを使用するなど、イニシャルコストが割高になっていること。そのためそれらに代わる素材の開発・検討や、カセット電極の設置間隔の最適化、電極枚数を減らしながらも処理効率を上げるためのスラローム水流の工夫などが鋭意進められている。

将来的には、当面の廃水処理などに続き、牧畜の糞尿処理、食品工場の廃棄物処理などへと応用分野を広げる可能性もあり、その場合は有機物濃度が格段に上がるため、発電した電力が使用可能なほど効率が高まることも期待されている。

掲載日:2013年8月15日

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