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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第42回 水道のわずかな圧力で発電するモーター [中野製作所]

産業機械メーカーの中野製作所(横浜市)は、水道の水圧で発電する「マグネット式流体圧力モーター」を開発し、その実用化を急いでいる。
 同社は2013年3月に国内・国際ともに特許を出願し、国内の企業や自治体はもちろん、米国、台湾など世界数カ国・地域からも問い合わせが続々入っている。

水道水の圧力を利用して駆動する「マグネット式流体圧力モーター」

水道水の圧力を利用して駆動する「マグネット式流体圧力モーター」

微小エネルギーを電力に変える

同社の技術部長、中野和明さんによれば、流体圧力モーターの開発のキッカケは、「エネルギーハーベスティング技術」に着目したことだった。
 エネルギーハーベスティング技術とは、身の回りの微小エネルギーを効率的に回収し、電力に変換して利用するもの。すでに大手企業を中心にEHC(エネルギーハーベスティングコンソーシアム)が結成されており、同社としてもその一端を担う技術が開発できないかと頭をひねった。

身の回りで捨てられているエネルギーをあれこれ検討した結果、辿り着いたのが水道水の圧力だった。水道水はポンプで加圧され、その圧力は蛇口から出た瞬間に捨てられる。その圧力を電力として再生する。全国の年間水使用量は800億m3(取水ベース)。うち生活用水と工業用水は300億m3と膨大で、もちろんそのエネルギーのすべてを回収・利用できないことは当然としても、ごくわずかを利用するだけでもエネルギーハーベスティングに資するのではないか、と中野さんは考えた。

遊び心が気づきにつながった

水道の水圧エネルギーをどう回収するか。開発に着手したのは2012年6月頃だったが、そこから中野さんの試行錯誤が続く。
 最初は羽根車で水圧を受けとめる方法を考えたが、思わしい成果は得られない。いったんあきらめかけたとき、磁石を利用するアイデアに行き着いた。そのきっかけは社員から聞いた「磁石を数㎜間隔で配列すると磁力が増す」という情報であり、中野さんは遊び心でそれを確かめてみた。最初は磁石をそのまま並べようとしたが、磁石同士に磁力が働いて直列に並べにくい。そこで直列になるようポリウレタンチューブに磁石を入れてみた。すると、最初に挿入した磁石がポリウレタンチューブ内を落下しながら回転運動を始めた。

「アイデアが湧いたのも偶然です。水道の圧力について考えていなかったら、ふ~ん、ポリウレタンチューブに磁石を落下させると、よくわからないけれど回るんだ、でおしまいになっていたでしょう。しかし、たまたま流体の圧力を利用するモーターを考えていたので、回転する磁石を見たとき、あ、これだ!と気づいたのです」

早速、磁石を2つ用意し、お互いの磁力を反発させながら、一方向から水道水を流す実験してみると、思った通り磁石を回転させるモーターができた。2012年10月、こうして開発にこぎつけたのが、タービンブレードや羽根車のような複雑形状の部品はいっさい使用しない新方式のマグネット式流体圧力モーターだった。

構造はいたってシンプル

マグネット式流体圧力モーターの構造は以下ようだ。

マグネット式流体圧力モーターの構造と作動の原理

マグネット式流体圧力モーターの構造と作動の原理

樹脂製のハウジングにネオジム磁石(右)を入れて固定させる。そこにもう1つのネオジム磁石(左)を入れ、相互が反発する状態にして配置する。
 磁石(左)を水道水の流体圧力によって磁石(右)に接近させると、磁石(左)が回転運動を始めるので、その回転エネルギーを出力軸で受けとめる。水道水の流体圧力は最小でも0.2MPaであり、受けとめた回転エネルギー(回転数2000rpm)を直接ダイナモに伝えて発電する。

「2つの磁石は、近づけば近づくほど回転数が上がります。ところがある限界を超えると磁石が相互にくっついてしまうので用をなさない。微妙な限界点まで接近させ、その段階で流体を逃がすクリアランスをつくってやらなければなりません」
 接近させる磁石の距離は1-2mmであり、この絶妙な最適条件で磁石を回転させることに技術ノウハウがある。
 開発した試作品は、長さが男性の手のひらサイズで、重量は100g以下と軽い。主要部品もわずか10点ほどで構造はシンプル。分解・組立も簡単なので、家庭の水道に使った場合でも誰でも容易に分解・メンテナンスできる。

手のひらサイズで重量100g以下と軽量

手のひらサイズで重量100g以下と軽量

1台の発電量は数百mW程度だが、すでに実験ではLED照明を点灯させている。1台あたりの発電量は少なくても、複数台で発電してコンデンサーなどに蓄電して利用する方法も考えられる。

同社は実用化段階として、学校などの集合トイレや手洗い場、オフィスビル・駅ビルなどのトイレ、あるいは工場配管の排水などにマグネット式流体圧力モーターを普及させたいと考える。
 「トイレなら、芳香剤や殺菌剤を散布・拡散するエネルギーとして使う用途が有力です。また、この技術は液体だけでなく気体にも利用できるので、工場排熱の蒸気利用の幅を広げる可能性をもっています」
 マグネット式流体圧力モーターのポテンシャルに中野さんは期待を寄せている。

掲載日:2013年8月 8日

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