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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第40回 ゼンマイで駆動する小型水力発電装置 [東洋ゼンマイ]

ゼンマイで発電するユニークな装置がある。東洋ゼンマイ(富山県黒部市)が開発したゼンマイで駆動する小型水力発電装置だ。
 このゼンマイ式小型水力発電装置は、わずかな水流でゼンマイを巻き、巻き取ったゼンマを解放する時の力で発電機を回す。2007年に開発を始め、2011年秋に完成させた同社の長谷川光一社長はその意図を語る。
 「ゼンマイの特徴は、弱いエネルギーでもゼンマイを巻き取ることで蓄積すれば、解放時には大きなエネルギーを得られることです。つまり小さなエネルギーを大きなエネルギーに変換できるわけです。それを水力発電に応用できないかと考えました」 わずかな河川の水流(毎分100リットル以上)でゼンマイを巻き、巻き取ったゼンマイを解放する時の力を利用して発電機を動かす。まさに小(わずかな水流)から大(ゼンマイの解放時の力)へ変換させたエネルギーを利用する水力発電だ。

ゼンマイで継続的に発電する仕組み

ゼンマイ式小型水力発電装置の構成は、写真1のようにらせん型の水車とゼンマイおよび発電機からなる。発電の仕組みは以下のようだ。

写真1 ゼンマイの駆動力で発電するゼンマイ式小型水力発電装置

写真1 ゼンマイの駆動力で発電するゼンマイ式小型水力発電装置

河川の水流でFRP製のらせん水車(直径300mm、長さ約1m)を回転させてゼンマイを巻き、巻き取ったゼンマイを解放する時に出す力(トルク)で発電機を動かす。
 ゼンマイには、巻き取った力を一定の速さで開放できる「定トルクゼンマイばね」を用いており、同装置では、ステンレス製で幅3cm、長さ20m、直径20cmの定トルクゼンマイばねを2つ以上備えている。なぜ2つ以上かというと、ゼンマイのトルクを連続して発生させるためだ。というのも仮にゼンマイが1つだったら、一旦解放してしまったゼンマイを再び巻き取るまでトルクを得られない。つまり、ゼンマイが1つだけでは解放後に発電機が止まってしまう。そのため2つ以上のゼンマイを設置することで、一方が解放してトルクを出している間、もう一方が水流でゼンマイを巻いていれば継続的にトルクを発電機に送れるわけだ。

このゼンマイの巻取りと解放を連続的に制御する仕組みも電気的制御ではなくカム機構という機械的制御を採用した。写真2のように、左右のゼンマイを巻くギヤ(手前のギヤ)の間に円柱型のカムが設置されている。写真の奥のギヤは水車の回転力(動力)をゼンマイ(手前のギヤ)に伝えるもので、左右のギヤの間には動力伝達を切り替える板(以下、切替え板)が組み込まれている。この板がカムの溝に沿って左右に移動することで、左右のゼンマイの巻取りと解放が切り替わる。例えば写真2(上)は、切替え板が左奥のギヤに付いているので左側のゼンマイ(左手前のギヤ)が巻かれている。左側のゼンマイが巻かれるとカムも回転する。そのためカムの溝に沿って切替え板も徐々に右側へ移動し(写真2中)、左側のゼンマイが完全に巻き取られると切替え板は右のギヤへ移動し、右側のゼンマイが巻かれ始める(右手前のギヤが回転する。写真2の右)。この動作を繰り返すことで継続的に発電機を動かせる。

写真2(上) 切替え板が左奥のギヤに付いているので左側のゼンマイ(左手前のギヤ)が巻かれる

写真2(上) 切替え板が左奥のギヤに付いているので左側のゼンマイ(左手前のギヤ)が巻かれる

写真2(中) 手前のギヤの中央にあるカムの溝に沿って切替え板が徐々に移動する

写真2(中) 手前のギヤの中央にあるカムの溝に沿って切替え板が徐々に移動する

写真2(下) 切替え板が右奥のギヤへ移動すると右側のゼンマイ(右手前)が巻かれ始める

写真2(下) 切替え板が右奥のギヤへ移動すると右側のゼンマイ(右手前)が巻かれ始める

用途のアイデアを模索する

ゼンマイ式小水力発電装置でゼンマイを巻く場合、20~30cmの落差と毎分100?以上の水流があれば、幅50cm、深さ50cmの水路で発電できる。ちなみに、24時間の蓄電で20Wの電球を約4時間点灯できる。
 同社は2012年から実証実験を始め、通学路の防犯灯や土石流・崩落危険地域の監視用装置、鳥獣害防止用鉄柵などの発電装置として用途を見込めたが、まだ実用化には至っていない。
 「当社はメーカーとして開発、製造の技術は十分に持っていますが、用途の開発となるとさまざまな視点からアイデアを案出できるパートナーが必要です」(長谷川社長)
 同社は実用化に向けたパートナーも模索している。ゼンマイ式小型水車は既述のように、駆動させるための電気的動力源が不要なため、場所を選らばず設置できる。また、ゼンマイを巻き取った状態にしておけば(解放してトルクを出させない)、エネルギーを任意に保持し続けられる。それにより、緊急時や災害時など予期せぬ状況に遭遇した場合、保持しておいたエネルギーを利用できるという特徴もある。
 「エネルギーをロスすることなく、動力源の貯蔵時と使用時の時間軸を変えられる。そうしたゼンマイ特有のエネルギーの保存性を活かした用途も模索していきたいです」(長谷川社長)
 創業80年余、玩具用ゼンマイで世界シェア約30%を握る東洋ゼンマイは、ゼンマイの特徴を活かした新たな事業の始動を目指している。

掲載日:2013年7月11日

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