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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第38回 燃料電池の白金に替わる低コストな新触媒 [群馬大学]

大気中の酸素と水素の化学反応で電気をつくりだす燃料電池は、次世代エネルギーシステムの救世主として期待を集める。ところがその最大のネックはコストがまだ極めて高いことであり、そのコスト高の主因は触媒の白金だ。
 この白金に代替する新触媒として、群馬大大学院工学研究科の尾崎純一教授がカーボンアロイ材料を開発、日清紡ホールディングスとの共同研究で実用化を急いでいる。

白金に替わる有力な材料=カーボンアロイ

燃料電池の触媒として用いられる白金は、よく知られるように極めて希少で有限な資源。産出国の上位3カ国は南アフリカ共和国、ロシア、カナダだが、そのほとんどは南アに偏在している。

正極の触媒に用いられる白金のコストが燃料電池を高価なものにしてしまう

正極の触媒に用いられる白金のコストが燃料電池を高価なものにしてしまう

NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のレポートによれば、自動車に搭載される燃料電池の場合、1台に使用される白金の量は、小型車(80kW)で32g、中型車(150kW)で62g、大型車(250kW)で150g。しかし、現在の産出量は180tで、世界の自動車年産台数の10%以下しかその需要を満たすことができない。しかも白金の推定埋蔵量は3万6000tにすぎず、白金触媒を使うかぎり燃料電池車の普及は考えられない。
 当然のごとく白金価格も高い。ここ数年の国際相場はたった1gでも5000-7000円。1台の燃料電池車の平均使用量を50gとすると、白金だけで25万円を軽く突破してしまう。
 こうした隘路を突破する技術はないかと世界中で白金の効率的使用法や代替触媒の開発が進められているが、その最有力素材としてにわかに注目を集めているのが、尾崎教授の開発したカーボンアロイ材料だ。

世界で初めての技術

尾崎教授の開発したカーボンアロイ材料には、ナノシェル系と窒素・ホウ素ドープ系の2種ある。ナノシェル系は、球殻積層構造になっていて、その大きさは直径10-50nm(nmは10億分の1メートル)。ポリフルフリルアルコールやフェノール樹脂といった熱硬化性樹脂を炭化させてつくる。

ナノシェル系カーボンアロイ材料の構造

ナノシェル系カーボンアロイ材料の構造

もう1つの窒素・ホウ素ドープ系は、カーボン構造に窒素とホウ素を同時に入れる。世界で初めて尾崎教授が考え出した技術だ。
 「半導体にホウ素を入れればp型半導体、窒素を入れればn型半導体になるように、窒素とホウ素はまるっきり逆の性質をもった元素で、化学屋にしてみればそれをカーボングラファイトに一緒に入れるなんてバカみたいな発想なんですが、それをやるとまさしく合金(アロイ)のようになるのです」と尾崎さん。
 「純粋な黒鉛にちょっと不純物(異種元素)を入れたり、原子の配列に乱れを生じさせる。それによって通常のカーボンとは違った構造のカーボンをつくり出すのですが、こうして得たカーボンアロイが、白金と同じように燃料電池の酸素還元反応を促進する機能を発揮するのです」
 ナノシェル系と窒素・ホウ素ドープ系の2種のカーボンアロイ材料は、機能の最適化を導き出した組み合わせで使っていくことを考えており、その研究論文は近々発表するという。

手のひら大の燃料電池スタックを作製

独自につくり出したカーボンアロイが白金同等の機能を発揮する。それを尾崎教授が突きとめたのは1990年頃だった。日清紡がその研究成果に目をとめ、やがて尾崎教授との共同研究へと進む。2006年頃から産業化に向けた共同研究が具体的に始動し、現在では手のひら大の燃料電池スタックをつくりあげるところまでこぎつけた。
 白金をカーボンアロイ触媒に代替した燃料電池で、模型の電車を走らせる模擬実験をすでに公開しているが、この燃料電池の出力は約10W。

カーボンアロイ触媒を用いた燃料電池で鉄道模型を走らせる

日清紡HD中央研究所長の今城靖雄さんはこう語る。
 「このサイズの燃料電池で携帯電話やスマートフォンの充電くらいなら十分賄えます。価格も白金の6分の1、もしくは10分の1くらいに低減できます。それくらいまで触媒価格を下げないと、燃料電池自体が普及しませんから」
 現在、その耐久性や電解膜との親和性などについてさらに突っ込んだ検証を進めている。自動車向け、あるいは家庭用(定置型)など大型化した燃料電池への応用が本格化する日は近く、「この1、2年が勝負」と尾崎さん、今城さんの胸はふくらむばかりだ。

掲載日:2013年6月18日

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