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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第37回 太陽光を熱源として利用する調理器具 [足利工業大学]

太陽光のみを熱源として利用した調理器具ソーラー・クッカーが、とりわけ途上国を中心に注目を集めている。途上国の人々を恒常的な薪不足から解放し、地球の森林資源を守るためにもソーラー・クッカーの普及が急務だとして、低価格化や効率化に向けた技術的な改善が進められている。

わが国のソーラー・クッカー開発の第一人者、足利工業大学総合研究センター長(工学部機械工学科教授)の中條祐一さんは、大学での技術開発のみならず、地元の中小企業との製品化にも意欲的だ。中條さんによれば、世界全人口の40%以上(30億人)もが薪を燃料とする調理に依存しており、その大半が慢性的な薪不足に陥っているという。また全体的に見た森林破壊の主な原因は農地への転用ではあるが、局所的には難民も含み人口が集中するアフリカの国々のように、薪や炭としての伐採が深刻な森林破壊の原因となっている地域もある。
 こうした現状を踏まえ、各国のNGOは20年ほど前から、アフリカやアジアなどで各種ソーラー・クッカーの普及に取り組んできており、定着しつつある地域もある。インドの専門家は1台の箱型ソーラー・クッカーが1年で550kgの薪を、またソーラー・クッカーの普及活動を行う最大のNPOであるSCIはケニアで使用する1台の段ボール製パネル型ソーラー・クッカーが1年で1トンの薪を節約できると公表している。

途上国でソーラー・クッカーを説明する中條さん(手前右)

途上国でソーラー・クッカーを説明する中條さん(手前右)

なぜ太陽熱で調理できるのか?

ソーラー・クッカーは太陽熱を利用した調理器具だが、その原理は熱の3つの移動形態(「伝導」「放射(ふく射)」「対流」)を利用することにある。つまり、ソーラー・クッカーの補助反射板や集光板によって太陽から放射された光を増強して鍋(外側)に当てると、太陽光は吸収されて熱に代えられ鍋の内側に届く(伝導)。さらに、その熱によって鍋の内側が温まると素材(食材)に向かって熱が放射(ふく射)される。この熱の伝導、放射(ふく射)により加熱調理する。
 また、上述の反射板を持たないタイプのソーラー・クッカーの場合は、鍋周辺の温まった熱が対流によって逃げないようにガラスやビニールなどで鍋を覆って熱の移動を制御する。

ソーラー・クッカーの原理は、熱の移動形態(伝導、放射・ふく射、対流)を利用することにある

ソーラー・クッカーの原理は、熱の移動形態(伝導、放射・ふく射、対流)を利用することにある

4種類に大別されるソーラー・クッカー

ソーラー・クッカーは集光型、熱箱型、パネル型、テルケス型の4種類に大別される。

集光型ソーラー・クッカー

集光型ソーラー・クッカー

まず、集光型は、太陽光を凹面鏡などの反射板で受けとめ、それを1カ所に集中させて得た熱で鍋などを加熱する方法。反射板にはアルミ板、ステンレス板、アルミ箔、蒸着フィルムなどを用いる。反射板はパラボラ(放物面)の形状にするケースが多く、反射板の面積に比例した加熱力が得られる。主に出力を支配するのは反射板の面積であり、光を絞り過ぎてもかえって使いづらくなる。「直径30-40cmのパラボラアンテナに銀紙を貼り付けただけの反射板でも、レンガを飴状に溶かしてしまうほどの高熱になるが、温度イコール出力ではない」と中條さんはいう。
 また集光型の難点は、太陽の移動に合わせて反射板を調整しなければならないこと。15-20分に1度くらいの頻度で角度調整をする必要があり、調理器に人が常時張りついていなければならないので扱いが面倒だ。

熱箱型ソーラー・クッカー

熱箱型ソーラー・クッカー

それに対して熱箱型は、箱の中に極力多くの光を取り込んで内部温度を上げ、その熱で調理する。とりわけ箱の底面にたくさんの光が当たるようにし、それによって得た熱で箱内部全体の温度を上げる。箱の中をオーブンのようにしてしまう方法なので、鍋は箱の中のどこに置いても均一に加熱される。
 熱箱型の歴史は古く、240年ほど前に遡る。スイス人のソシュールが開発したのがそれだ。二重ガラスで箱本体をつくり、熱が対流によって逃げるのを防いでいる。それに対し現在主流になっている熱箱は、太陽光の入射面のみ二重ガラスにし、箱構造のそのほかの部分に木材、金属、樹脂などを用いて、その素材のあいだに断熱材を入れている。

パネル型ソーラー・クッカー

パネル型ソーラー・クッカー

パネル型は、平板あるいは平板をたわませたパネル構造。パネルは段ボールにアルミホイルなどを貼っただけの素材でもつくれる。折り紙をつくるようにパネルを折り曲げて組み立てる。歴史的にはこの方法が最も新しい。原理的に平易簡素で、あまりにも安直にできる方法なので、これがいかに優れものであるかが世に認識されるまでに、逆にむしろ時間がかかった。中條さんも「これが最もおもしろい」と高く評価する。
 「こんなものでご飯が炊けるわけがないと疑う人たちも、実際にちゃんと炊けてみると一様に驚きます。それが快感ですね」(中條さん)
 パネル型は比較的低価格でつくれ、取扱いも簡易。途上国向けはもちろん国内のレジャー(キャンプなど)や理科の学校教材向けなどにも普及が進む可能性が大きい、と中條さんはその将来性に期待をかける。

テルケス型ソーラー・クッカー

テルケス型ソーラー・クッカー

もう1つのテルケス型は、世界的に熱箱型に分類されることが多いが、集光型と熱箱型の中間的存在だ。開発者のテルケス女史の名前をとってこの名称で呼ばれる。米国サンオーヴン社がすでに大小の同型ソーラー・クッカーを製造販売している。

市場喚起のカギは価格

ソーラー・クッカーの潜在的な世界市場は2億台(180億ドル)とする試算もある。この市場がしっかり掘り起こせるかどうかは、その市場のほとんどが途上国だけに、やはり価格がカギを握る。
 「国内のレジャーや学校教材向けも念頭には置いて開発してきましたが、なんといっても大きいのは途上国です。燃料に困っている人たちが25億人もいるわけですから。そういう人たちが熱源として手軽に得られるのは太陽熱しかありません。太陽熱を利用する調理器具を、なんとか安価で供給できるよう、さらに開発を進めていくことが私どもの研究の使命だと認識しています」
 各種ソーラー・クッカーを開発してきた中條さんの挑戦は続く。

掲載日:2013年5月23日

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