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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第35回 低温廃熱を利用するメカニカルな温度差発電 [アルバック理工]

アルバックの完全子会社アルバック理工(横浜市)は、湯と水の温度差を使って高効率発電する「可搬型小型発電システム」を開発、2012年の「第29回神奈川工業技術開発大賞・地域環境技術大賞」を受賞した。小容量の廃熱をも有効利用しようとする企業や自治体などに向け本格普及を図っている。

可搬型小型発電システム(左、試験用システム)で発電してランプを点灯(右)

可搬型小型発電システム(左、試験用システム)で発電してランプを点灯(右)

熱電素子を使わない温度差発電

温度差発電としてはゼーベック効果による半導体素子(熱電素子)を使う方法がよく知られるが、アルバック理工の開発した可搬型小型発電システムの技術はそれとまったく発想を異にしており、ゼーベック効果は利用しない。冷媒の蒸気圧をメカニックな回転子に与え、その回転子の回転をモーターに伝えて発電する方式だ。
 熱エネルギーを電力エネルギーに変換する方法は現在2つしかない。1つはゼーベック効果を使う熱電発電、もう1つが蒸気発電だ。蒸気発電は火力発電や原子力発電でよく知られるように、水を加熱沸騰させて得た蒸気のエネルギーでタービンを回転させて発電する。可搬型小型発電システムも基本原理はこの蒸気発電と同じだ。
 従来の蒸気発電と異なるのは、可搬型小型発電システムが200℃未満の低温域をターゲットにしているところだ。製鉄所やゴミ焼却場などからは高温の熱が廃され、その廃熱は回収されて発電に利用される。その場合の発電方式は一般的な火力発電と同じだが、可搬型小型発電システムはそれより格段に低い200℃未満の熱源をターゲットにした発電を狙っている。
 工場などの廃熱温度に対する法的規制は200℃以上であり、200℃未満の廃熱はそのまま廃棄できるもののほとんど再利用されなかった。ただ、200℃未満の廃熱が法の規制外とはいっても、現実的に排出されるのはさらに低温域の70-100℃の熱。可搬型小型発電システムは主としてこの低温域廃熱が対象になる。

独自のスクロールで高効率に発電する

ところで、70-100℃程度の低温廃熱では水を沸騰させて蒸気にすることは物理的に不可能。そこで同社は、低温域の廃熱からでも高温高圧の蒸気が得られる媒体(冷媒)を採用した。フロン系の冷媒R-134AあるいはR-245FAだ。これらの冷媒は既存のカーエアコンなどに利用されている物質で安全性に問題はない。この冷媒を使って得た高温高圧の蒸気を回転子に送り、その回転エネルギーを電気エネルギーに変換している。

可搬型小型発電システムの発電メカニズム

可搬型小型発電システムの発電メカニズム

回転子は、火力発電などと違ってスクリュープロペラ型のタービンではない。エコスクロールという回転子だ。研究開発部長の遠藤聡さんはこう説明する。
 「スクロールの技術自体はすでにあり、カーエアコンや冷蔵庫などにも利用されています。当社はそれをオリジナル技術で発電用として開発しました。独自の軸機構により、低機械損失と高密閉膨張室を実現したので、75-100℃のお湯を利用した高効率発電に成功しました。そこに当社の技術の特徴があります」

密閉性の高い独自構造のスクロールにより発電効率を高めた

密閉性の高い独自構造のスクロールにより発電効率を高めた

フロン系媒体は、回転子を回すと低温低圧の蒸気になる。それを冷却水で熱交換し、液体に戻してポンプで再び蒸発器に送り込む。蒸気で回転子を回すスクロールは、2つの渦巻き構造になっている。1つの渦巻きは固定、もう1つは可動式。中心部から入った高温高圧の蒸気媒体がそのエネルギーで固定式の渦巻きを稼働させ、ついでその媒体は外側に広がって可動式の回転子を回す。その回転エネルギーでモーターを回し発電する。社長の五戸成史さんは技術的な優位性をさらにこう強調する。
 「普通のスクロールだとせいぜい1500回転ですが、当社のエコスクロールは3000-4000回転と高速回転できるところに特徴があります。この強みによって少量の熱でも高効率に発電できることを可能にしたのです」
 経産省は2012年から、低温度の未利用廃熱を再利用する設備の導入を対象とした補助金制度を開始した。工場から排出される低温廃熱は全廃熱の9割を占めるとされる。ガソリン車も動力として熱源を利用しているのはわずか3割に過ぎず、実に7割をも捨てている。
 同社の可搬型小型発電システムは、75-100℃のお湯と5-30℃の水との温度差70℃で発電した場合、月間2000kWh程度の発電量が得られる可能性がある。豊富な未利用熱源が眠る工場や自治体(中小規模のゴミ焼却場)、船舶、太陽熱温水器、温泉、大型車、燃料電池などの用途を対象に、同システムの売込みを図っている。

掲載日:2013年4月11日

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