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エネルギー新時代


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第31回 海に浮かぶ風力発電所 [戸田建設]

水深の浅い海域が少ない日本では、深い海域(50m以深)に適用できる浮体式風力発電に大きな期待がもてる。そこで環境省は浮体式風力発電の実用化をめざし、2010年度から2015年度までの6カ年度の実証事業を始めた。

それを受託した戸田建設などの受託者グループは2012年6月、長崎県五島市椛島の周辺海域に最大出力100Kwの浮体式洋上風力発電設備(小規模試験機)を設置、8月末から発電を開始した。系統連結する浮体式洋上風力発電施設としては国内初の試みで、2013年夏には同海域に2MW(2000kW)の実証機を設置すべく準備を進めている。

長崎県五島市椛島の周辺海域に最大出力100Kwの浮体式洋上風力発電設備(小規模試験機)

長崎県五島市椛島の周辺海域に最大出力100Kwの浮体式洋上風力発電設備(小規模試験機)

長大・重量な構造物が浮く原理

戸田建設は、2007年から京都大学と共同で浮体式洋上発電設備の開発に取り組んできた。そして2011年に環境省の実証事業として受託し、同社を代表に富士重工業、芙蓉海洋開発、京大、独立行政法人海上技術安全研究所と受託者グループを結成して開発を進めている。
 2013年夏に実証機を設置した後、2013年度から2014年度かけ実証運転して各種データを収集、2015年度に事業性を評価する運びになっている。
 2012年8月から発電を開始した小規模試験機は実証機の1/2の大きさ。形状は細長い円筒形(ハイブリッドスパー型)で、小規模試験機でもその長さは基底から風車の先端まで71.3mと長大。どうしてこんな長大な構造物が洋上に浮くのか不思議な気がするが、それはまさにアルキメデスの原理。排水重量より全体重量のほうが小さければ浮くわけで、浮きの下端に重りをつけて水中に投じると垂直に浮く浮桿とおなじ仕組みだ。

小規模試験機下部の浮体は直径3.8m。浮体上部の材質はスチールだが、下部の20mは少しでも材料コストを抑えるためコンクリートにした。このコンクリートが前述の浮きの重りの役割をしている。スチールよりも純国産資源のコンクリートのほうが価格も廉価で安定しており、当然ながら水圧に強く錆びの心配もない。また、水中で藻や貝殻などが付着してもちゃんと重量バランスを保てるよう、浮体の下部にはバラスト水も入れている。
 浮体部の基底から37mまでは水中に没しており、水上に姿をあらわしている風車のハブまでは23mほど。水上部分はさほど大きく見えなくても、その1.5倍以上もの大きさの浮体部が水中で支えているという巨大な構造物なのだ。
 小規模試験機を設置した海域の水深は約100m。言うまでもないが、海底に沈めたシンカーやアンカーと繋留しており、設備が海流に流されてしまうようなことはない。
 風力発電設備は陸上より洋上に設けるほうが有利な点は、騒音・低周波音や景観阻害などの問題がほとんどないことはもちろん、なんといっても安定した風向きの風が得られることにある。陸上だと地形の影響でいきなり風向きや風速が変わったりすることがあるが、洋上の風はほぼ一定している。風力発電で先行するヨーロッパ各国も、近年は洋上志向を強めている。

浮体式洋上風力発電設備(最大出力100Kw)の概要

浮体式洋上風力発電設備(最大出力100Kw)の概要

超大型台風にもびくともしない

風車(3枚羽根)やハブ、ナセルなどの発電システムは洋上も陸上も同じ。小規模試験機を設けた長崎県五島市椛島周辺海域の年平均風速は約7.5mとほぼ安定している。波高も通常は1m以内と小さい。安定した風速が比較的大きく、しかも波が穏やかで、洋上風力発電にはほぼ理想的な海域といえる。この試験機から陸上までは海底に敷設したケーブルで送電している。
 ちなみに、2012年秋には超大型の台風15、16号の来襲に見舞われたが、この出来事は実証を進めるうえでむしろプラスに作用した。というのも、自前の電源用に設けている太陽光発電パネルが破損したが、それ以外は洋上風力発電設備として構造性能や災害対応性に極めて優れていることが検証できたという。
 2013年夏にはいよいよ実証機の設置が始まるが、そのサイズは巨大。小規模試験機のブレード(風車)の直径が22mなのに対し、実証機のそれは80m。設備基底から風車先端までの全長は170m(海面からの高さは94m)にもなる。
 これだけの巨大構造物を設置するのは容易ではなく、小規模試験機でも設置に3時間ほど要した。「もちろん実証機はもっと大変ですが、小規模試験機の経験が活きます。この設置工事こそ戸田建設の知見とノウハウが活きるところ」(土木本部アーバンルネッサンス部長・浅野均さん)とその準備に余念がない。
 また環境省も「今回の実証事業(2010年度-2015年度)により必要な知見を得て、2015年度以降のなるべく早い時期にビジネスになれば」(地球環境局地球温暖化対策課係長兼課長補佐、吉田諭史さん)と実用化へ大きく期待を膨らませる。

掲載日:2013年3月 7日

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