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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第27回 太陽電池で駆動する独自な仕組みの水質浄化装置 [マサキ・エンヴェック]

船のスクリュープロペラにおける流体力学の研究を活用し、ソーラーパネルで得たエネルギーでプロペラを高効率に回転させて淀んだ水をきれいにする装置がある。その名も「水すまし」。開発したのがベンチャー企業のマサキ・エンヴェック(東京・中央区)だ。

船のスクリュープロペラの原理を応用し、少ないエネルギーで水質浄化する「水すまし」

船のスクリュープロペラの原理を応用し、少ないエネルギーで水質浄化する「水すまし」

社長の眞崎理恵さんはこう説明する。
 「先代の故眞崎建次社長が長崎県で環境ベンチャーのマサキ・エンヴェックを起業したのが2000年でした。会社の事業の2本柱が水質改善と屋上緑化で、水質改善の柱が2000年に発売した『水すまし』です」
 造船の町、長崎には船舶の流体力学について知見や技術が集積されている。先代社長の建次さんはその技術を環境に応用できないかと考えた。
 私たちが日頃目にする水の浄化装置として、金魚や熱帯魚などの水槽に用いられるエアレーションがある。空気を水中に送り込む電動装置だ。家庭用の水槽のみならずダム湖や公園の池などの浄化に使われる装置(エアリフター方式、ポンプ方式)も、エアレーションのように空気を水中に送り込む単純な駆動方式が主流だが、最大の課題が電気代がバカにならないことだ。
 そこで先代社長は、船舶のスクリュープロペラの原理を水質浄化装置に応用すれば効率的に水流を発生させられるため、同じ流量を得るにも従来の装置よりはるかに小さなエネルギーに抑えられ、それによって駆動エネルギーの小さい太陽電池でも稼働させられると発想した。いまから10年以上前、太陽光発電に対する関心など皆無に近い時代だったが、そのエネルギーでスクリュープロペラを動かし、それによって水を循環させようと考えた。

水を循環させて浄化する仕組み

太陽光で得た電気エネルギーをモーターに伝え、そのモーターがスクリュープロペラを回転させる。その回転によって水底から低酸素状態の水を水面近くに移動させ、水面近傍で空気中の酸素を取り込んだ水を再び水底へと戻して循環させる。この循環により水中に酸素がたっぷりと送り込まれるため、酸素を好む微生物が活性化し、それによって各種の汚濁原因物質が分解され、水質が浄化される。それが水すましの仕組みだ。

水底から水面へと水を移動させ、大気中の酸素を取り込んだ水を水底へと循環させる

水底から水面へと水を移動させ、大気中の酸素を取り込んだ水を水底へと循環させる

この技術の要諦はゆっくり効率的に水を循環させることにある。流体力学に基づいてスクリュープロペラをいかに効果的に回転させるかに工夫を凝らし、最高効率の上昇流(湧昇流)を生み出した。少ない水量を高速に動かす従来方法(エアー式やポンプ式)より水流攪拌効率が高く消費電力も少ない。しかもその動力源として太陽エネルギーを利用するためランニングコストを大幅に抑えられる。
 水すましの開発は産学官連携のプロジェクトで進められた。先代社長の依頼を受け、西日本流体技研のグループ会社、海洋開発技術研究所が流体力学に基づく装置の開発に取り組んだ。長崎大と長崎総合科学大はシミュレーションや装置設置後のデータ収集・分析などを担当し、長崎県と長崎市はダム湖や貯水池などを提供した。
 水に浮かべた姿と水質浄化の働きから装置の愛称を「水すまし」とした。開発してほどなく、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)から2000年度「新エネ大賞」を受賞、複数のメディアにも採り上げられて順調な出足をきった。そして、そのまま順風満帆に普及する予想だった…。

海外展開にも積極的

ところが、ビジネスはそう甘くない。いくら優れた発明でも、それをビジネスにつなげるとき思わぬ陥穽が待ち受けていることがある。水すましの場合、はまった陥穽が装置の不具合だった。
 「地元の中小企業で装置を委託生産していたのですが、技術が十分でなかったため、FRP製の筐体のパーツを組み合わせる際にシーリングが甘く、水が装置の内部に入り込んでしまって装置自体が水没してしまったこともありました。すぐ技術の改良をほどこし、装置の製造も技術力の高い大手メーカーに依頼し、ようやく製造態勢を立て直せました」
 同社は2000年に水すましを発売すると、2004年には小型の水質浄化装置「水すましミニ」を開発・発売。2006年には新連携事業にも採択され、複数の企業とタッグを組んで水すましの事業展開を図った。また、2009年にはサイズは小型で浄化能力が従来の3倍の「水すましネオ」を開発した。
 水すましシリーズの主な顧客は、ダム湖、河川、公園などを所有している自治体や池を内包するゴルフ場、リゾート地。
 「ところが先の東日本大震災によって自治体では防災対策が優先されるようになり、水質浄化は後回しにならざるを得なかったようで、一時販売の勢いも弱くなってしまいました。ただ、最近はまた少しずつ水すましに注文をいただけるようになってきましたし、海外からの関心も高くなっています」
 現在、同社では水すましを中心に4種類の水質浄化装置をラインナップし、対象となる貯水池などの水量に応じて「水すましミニ」「水すまし」「水すましネオ」「アクアファイン」を販売している。価格は、水すましミニが120万円、水すましネオが210万円。
 国内の設置先のほとんどがダム湖や池、河川であり、最近は海外からの引き合いも活発で、中国、韓国、アラブ首長国連邦、ブラジルなどへはすでに輸出実績がある。
 さらに水質浄化の需要の大きいアフリカやアジア、南米などに対しては、将来、水すましの市場が広がる可能性は十分にある。そう眞崎さんは夢を広げている。

掲載日:2013年1月31日

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