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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第25回 温度差で発電するチューブ型の熱発電素子 [パナソニック]

工場の排熱や温泉熱などの熱エネルギーを利用して発電する温度差発電。その要となる素子についてパナソニックは、2011年6月、独自構造の熱電変換素子を開発した。
 これまで温度差発電で開発された熱電変換素子の形状は平板が一般的だったが、同社が開発した熱電変換素子は、金属と熱電変換材料が傾斜積層された独自の構造になっており、形状もチューブ型と従来とはまったく異なる素子となっている。この熱電変換素子はチューブの中に湯を通せば発電することから「熱発電チューブ」と呼ばれる。

平板からチューブに形状と構造を変える

温度差発電は、材料の両端に温度差を生じさせ、その際に発生する熱エネルギーを電力に換える。この発電原理は発見者の名前から「ゼーベック効果」と呼ばれる。
 ゼーベック効果を利用した従来の熱電変換素子の基本構造は、2種類(P型、N型)の熱電変換材料を並べて接合した構造で、ギリシャ文字の「π」(パイ)の形状をしていることから「π構造」とも呼ばれる。実際の素子はこのπ型の熱電変換材料を並べて電気的に接合した平板になる。
 ところが、デバイスの作製ではこの平板の熱電変換素子を配管の外側に貼り付けるため、デバイスの配線が複雑になり、また熱電変換素子に熱を取り込む際のロスも大きくなり、さらに大型化や信頼性などでクリアすべき課題がある。

それらの課題を解決するため、パナソニックの先端技術研究所では、熱伝導の大きい金属と熱伝導の小さい熱電変換材料を交互に傾斜積層させ、かつそれをチューブ状にした独自構造の熱電変換素子(熱発電チューブ)を開発した。
 その特徴は以下の2つだ。

  1. 熱の流れにくい(熱伝導が小さい)熱電変換材料と熱の流れやすい(熱伝導が大きい)金属を熱の流れに対して交互に傾斜積層することで、素子内部に周期的な温度分布ができ、熱の流れに対して垂直方向に電気が流れる現象を独自に見出し、その現象を利用する熱電変換素子とした。
  2. 熱電変換材料にビスマステルルを用いるが、この材料は延ばしたり丸めたりする加工が困難なため、あらかじめ熱電変換材料と金属それぞれのカップを成形し、それらを交互に重ね合わせて接合することで、熱電変換材料層と金属層の密着度が高い傾斜積層構造を実現した。
熱発電チューブの構造(熱発電材料と金属が交互に積層された構造で、熱の流れに垂直方向に電流が流れる)

熱発電チューブの構造(熱発電材料と金属が交互に積層された構造で、熱の流れに垂直方向に電流が流れる)

成形精度を上げて発電性能もアップ

同研究所・エコマテリアル研究グループのグループマネージャー・山田由佳さんと主任研究員・菅野勉さんによれば、上述の傾斜積層構造を考え出したのが2007年、それをチューブ構造にしたのが2010年だった。
 「当初のチューブ構造の製法は鋳造でしたが、どうしても形状がまちまちになったり、微小な鋳巣ができるなど、さらに製法を改善する必要がありました」(山田さん)
 そこで2011年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業を受け、大阪大学接合科学研究所と共同で放電プラズマ焼結(SPS)を用いた新しい製造プロセスを考案し、新製法の熱発電チューブを2012年に開発した。
 新製法のフローは以下のようだ。

  1. 急冷凝固によって熱電変換材料(ビスマステルル)と金属(ニッケル)の粉末を作製する
  2. 熱電変換材料の粉末、金属粉末をそれぞれ冷間圧縮によりカップ状に成形する
  3. それぞれのカップを交互に積層する
  4. 3の積層体を放電プラズマ焼結により加熱・圧縮を同時に行う
  5. 4の焼結体(長さ約35mm)を接合して100mmほどのチューブにする
熱電変換材料と金属のカップを積層して加熱・圧縮した熱発電チューブ(左)。断面は傾斜積層構造になっている(右)

熱電変換材料と金属のカップを積層して加熱・圧縮した熱発電チューブ(左)。断面は傾斜積層構造になっている(右)

35mmほどの焼結体を接合した長さ約100mmの熱発電チューブ

35mmほどの焼結体を接合した長さ約100mmの熱発電チューブ


「放電プラズマ焼結を主体とする製法に替えたことで、チューブの成形精度が確実に上がりました」(菅野さん)
 その結果、従来の製法(鋳造)に比べて発電性能が2倍に上がった。例えば、95℃の温水と10℃の冷水による温度差熱を用いた発電では、従来の最大電力が1.3Wから2.5Wへと向上した。

 

熱発電チューブはそれ自体が発電機能をもち、熱の取込みロスを減らせるうえ複雑な配線も不要にできることから、応用できる範囲は広いと考えられる。例えば工場の排熱や地熱、温泉熱などこれまで利用されなかった熱エネルギーを電気に換える温度差発電に用いれば、用途はかなり多い。
 「ただし、発電効率を考えるとタービン系には劣りますので小型システムでの用途が有利だと思います」(山田さん) 独自構造の熱発電チューブだが、開発者たちはパナソニック創業100周年の2018年に向けた実用化へと奮闘している。

掲載日:2013年1月17日

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