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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第21回 電気の安定供給に変革をもたらすレアメタルフリーのナトリウムイオン電池 [東京理科大学]

東京理科大総合研究機構の藪内直明講師、理学部第一応用化学科の駒場慎一准教授らの研究グループは、ナトリウムイオン電池用正極の材料開発でレアメタルフリー化に成功、世界的な注目を集めている。この正極材料を用いた畜電池は、電力のピークシフト用電源として新生面を拓く可能性を秘めている。

リチウムイオン電池に匹敵し得るエネルギー密度の正極

今回の開発について藪内さんは研究の発端を次のように語る。
 「世界の人口は今世紀半ばにも90億人を超えると予測されますが、そうしたとき何もしないで手を拱いていると悲惨なエネルギー欠乏時代が到来します。そうならないよう、持続可能なエネルギー社会をどう実現していくか、エネルギーをいかに効率的に利用していくか、そのための研究が求められていました」
 そうした中、蓄電池の既存技術として存在感を増したのがリチウムイオン電池だ。エネルギー密度が高いため、まず小型の電池が携帯電話に用いられ、やがて電気自動車へと用途を広げていった。
 ただ、リチウムイオン電池ではその主材となるリチウム資源が問題になる。リチウムは地球の地殻にわずか20ppm(0.002%)しか存在せず、おまけにその埋蔵が南米のチリとボリビアに偏在しているため、政情不安など予期せぬ危機が起ころうものなら途端に供給リスクが高まってしまう。
 ならばリチウムのような希少資源ではなく、どこにでもある資源を用いた電極材料をつくれないか。そう考えた駒場准教授らは2005年ころからナトリウムを電気エネルギー貯蔵に用いる基礎研究に着手し、2011年8月にはナトリウムイオン電池の実現性を立証した。そしてこの蓄電池では、正極にナトリウムイオンを出し入れする層状材料、負極には炭素材料を用いた。

ナトリウムイオン電池の動作原理

ナトリウムイオン電池の動作原理

実はナトリウムを蓄電デバイスに用いるという着眼は1980年代からあったが、エネルギー密度があまりにも低かったために見向きもされなかった。しかし、駒場准教授らの研究はそれをブレークスルーした研究成果として世界の注目を集めた。
 藪内講師らの研究はさらに前進させたもので、新たな電極用材料として鉄系層状酸化物の合成に成功した。この鉄系層状酸化物は、地球上のごくありふれた元素である鉄、マンガン、ナトリウムを組み合わせたもので、これによりリチウムイオン電池に比肩し得る高エネルギー密度を実現した。それについて藪内さんは説明する。
 「最初に私たちが研究した正極材料はナトリウム、ニッケル、マンガンでした。ところがニッケルも豊富な元素とは言い難い。もっとありきたりの元素でやれないかと考えた結果、ニッケルを鉄に置き換えてみたら予想以上のエネルギー密度が得られたわけです。リチウムイオン電池に勝つところまではいっていないけれど、十分に匹敵し得るエネルギー密度を実現しています」

リチウムイオン電池(左)と試作のナトリウムイオン電池

リチウムイオン電池(左)と試作のナトリウムイオン電池

電力供給の効率が格段に上がる可能性

リチウム系の材料(リチウムマンガン酸化物、リン酸鉄リチウムなど)のエネルギー密度は500mWh/gだが、それと同程度までの数値を達成しているという。
  正極材料はこのようにありきたりの元素を用い、レアメタルフリーでいける見通しをつけた。現時点での課題は負極である。
 「黒鉛の電気容量が360 mAh/gであるのに対し、私どもの用いているスクロースを焼結した炭素材料(ハードカーボン)では最も性能に優れるものでも300 mAh/gにすぎず、2割程度劣っています」
 300 mAh/g という負極の容量は従来に比べれば1.2倍に向上させているが、実用化のためにはさらに高い放電容量が求められる。これをいかに解決するかは今後の研究課題でもある。
  とはいえ正極にレアメタルを使わずに済むのなら、材料コストの点で圧倒的に優位に立つ。ちなみにリチウム電池の原料に用いられる炭酸リチウムの価格が1トンあたり5000米ドルであるのに対し、炭酸ナトリウムのそれはわずか150米ドル(2012年11月初旬時点)と桁違いに安い。さらにコバルト、ニッケル、銅などを用いるリチウムイオン電池に比べ、それら高価な資材の拘束からも解放される。
 正極材料としての実績はリチウムイオン電池に勝るとも劣らないレベルにあるとはいえ、負極などではやや及ばない。いくら資材コストが安いといっても、少しでも高いエネルギー密度が要求される携帯端末や電気自動車向けにはまだ一歩を譲る。
  ただ、ピークシフト用電源では早期の実用化が期待される。夜間も昼間と同様の高出力で発電し、その余剰電力をこのナトリウムイオン電池に蓄電して昼間の需要時間帯に利用できるようになれば、電力供給の効率が格段に上がる。ゆえに、ナトリウムイオン電池材料の研究は、世界の電気エネルギーの安定供給に決定的変革をもたらすインパクトをもっている。

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掲載日:2012年12月13日

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