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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第20回 大幅な性能向上の可能性を秘める太陽電池用シリコンナノワイヤ [独立行政法人物質・材料研究機構]

独立行政法人物質・材料研究機構は、機能性シリコン複合材料を利用した次世代型の高効率太陽電池の開発を進めている。この研究開発では、単結晶のシリコン基板に微細な突起状のナノワイヤ(Siナノワイヤ)を成長させて半導体の表面積を増やし、シリコン材料の削減による低コスト化と変換効率の向上を狙っている。

研究開発に取り組むのは、同研究機構の国際ナノアーキテクトニクス(MANA)研究拠点グループリーダーの深田直樹さん(工学博士)。トランジスタの集積度を上げる研究がその発端だった。
 「トランジスタは過去30年ほどでどんどん小さくなり、集積度が急速に上がってきました。その結果、従来の平面型でこれ以上集積度を上げるのは厳しい状況になり、タテ方向へ集積のスペースを求める発想が生まれました。それに着目して私もSiナノワイヤへ不純物をドーピングする研究を進め、その延長として太陽電池への応用に至りました。ナノ構造の中でも電子の状態をきちんと調べられる手法を確立していたので、太陽電池に進むのは比較的簡単でした」
 深田さんが半導体でSiナノワイヤの研究に着手したのは2002年ごろ、わが国でも先駆者的な立場にいる。その後研究開発を着実に前進させ、太陽電池に利用できるSiナノ結晶とSiナノワイヤの成長制御技術を確立した。

Siナノワイヤ

Siナノワイヤ

太陽電池は、p型半導体とn型半導体を接合させた構造が基本だが、深田さんのSiナノワイヤは、p型シリコン基板の表面に微細なp型ナノワイヤを成長させ、その表面にn型シリコンを皮膜させる(図1)。あるいは、p型とn型の配置が逆転した構造をとる。こうしたナノワイヤ内部にpn接合を持つコアシェル構造を形成することにより、pn接合の面積を従来の平面型に比べて100倍にする可能性を見出した。
 「1つひとつのSiナノワイヤがナノスケールの太陽電池構造を有しています。つまり、基板の上に無数のSiナノワイヤがびっしり敷き詰められた太陽電池ということです。よって、太陽光を一点に集める集光型の太陽電池にすれば、pn接合面積が従来の100倍アップも可能なわけですから、当然、エネルギーの効率的な利用につながるわけです」

図1 Siナノワイヤの構造

図1 Siナノワイヤの構造


2種類のSiナノワイヤ

深田さんの開発したSiナノワイヤには、ストレート型とテーパ型の2種類がある。前者は直径10nmの円筒形で、後者は傾斜をもつ円錐形だ。スレート型の理想バンドギャップが1.3-1.4eV付近(シリコン単結晶のバンドギャップは約1.1 eV)、テーパ型のそれは一津ではなく変調されている。つまり、テーパの部位によって光を吸収する波長感度が自己変調されている。
 ストレート型、テーパ型ともにSiナノワイヤの高さは1μmに満たず、しかも各Siナノワイヤの高さは不均一。高さや大きさをそろえても、変換効率に大差がないからだ。トランジスタの場合はSiナノワイヤの形状を均一にするほどの成形精度が求められるが、太陽電池の場合はそこまでの精度は求められない。むしろ、均一なSiナノワイヤを成形する手間よりも、ランダムに成形しても実用化に向けて簡単かつ低コストに製造できるメリットを優先すべきと深田さんは判断している。
 従来の太陽電池は、表面が凹凸のテクスチャー構造にすることで入射光の反射を抑えるよう工夫しているが、Siナノワイヤはそれ自体が突起物の林立したようなテクスチャー構造になっているため、入射光を閉じ込めて反射を抑える機能も兼ねている。
ちなみに、Siナノワイヤの太陽電池はセルの表面が黒色だ。一般的な太陽電池とは異なり、入射光を反射せずにほとんど吸収してしまうからだ。

リチウムイオン電池の負極への応用

Siナノワイヤの成形法として基板上に突起物を成長させる手法とエッチングの2つが考えられており、深田さんはそれぞれの方法で研究を進めている。どちらの方法も触媒を用いるが、前者ではニッケルあるいは金、後者では銀あるいはアルミニウムを使用する。いずれにしても金属触媒を用いる場合、太陽電池の特性を低下させるコンタミネーションが課題であり、そのためにも限りなく不純物の影響を減らす方法の追究を続けている。
 深田さんのSiナノワイヤはトランジスタの集積度を上げる研究の延長で生まれたことは前述したが、現在、リチウムイオン電池の負極への応用研究も進めている。同電池の負極にSiナノワイヤから派生した特殊なSiナノ構造を活用するものだ。
 現在、カーボン系負極の充放電容量は370mAh/g。それに対してシリコンは4200 mAh/gとなんと10倍以上の充放電容量になるという。
 「ただ、10倍以上になっても10サイクルくらいで充放電容量が極端に落ちてしまうので、現在は2-3倍くらいの充放電容量をターゲットに研究を進めています。これでもかなりセンセーショナルだと思います」
 太陽電池からリチウムイオン電池へとSiナノワイヤはその用途に広がりをみせるが、今後の未知なる可能性はまだまだ大きいようだ。

掲載日:2012年11月29日

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