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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第16回 太陽熱で冷暖房する「ソーラークーリングシステム」 [東京ガス]

東京ガスは、再生可能エネルギーを活用した空調システム「ソーラークーリングシステム」の普及に力を入れている。2012年7月には大幅なコストダウンに漕ぎつけた新システムを開発、拡販に乗り出した。

東京ガスの「ソーラークーリングシステム」は、太陽熱によって冷水をつくり、その冷水によってオフィスビルなどの建物を空調するシステム。太陽熱集熱器による集熱で得た温水を、このシステムの心臓部である「ナチュラルチラー」(吸収式冷凍機)に送り込み、この「ナチュラルチラー」で冷水を得る。
 既存の吸収式冷凍機が都市ガス、LPガスなどで得た熱源を用いているのに対し、「ソーラークーリングシステム」は都市ガスなどに代わって太陽熱を熱源にしている。ただし、雨や曇りなど満足な日照条件が得られないときは、補助熱源として都市ガスを使う。

 熱から冷水を得る吸収式冷凍技術は古く、イギリスで理論が確立された1777年まで遡る。その後170年ほどの歳月を経てアメリカで「水/臭化リチウム系」の吸収式冷凍機がつくられた。日本では東京ガスが1953年に同方式による家庭用冷蔵庫を販売したのに始まり、以後ビルなどの空調システムとして普及してきた。「ソーラークーリングシステム」はそれがさらに進化したものとして技術史の中に位置づけられる。
 ナチュラルチラーすなわち吸収式冷凍機の原理は、蒸発潜熱の利用にある。打ち水をするとその水が蒸発して涼しくなるのと同じ原理だ。

写真1 太陽熱を利用した冷暖房空調システム「ソーラークーリングシステム」

写真1 太陽熱を利用した冷暖房空調システム「ソーラークーリングシステム」

5℃ほどの低温でも水が蒸発する

ナチュラルチラーは蒸発器と吸収器(再生機、凝縮器)の主要装置からなる。伝熱管に水を通して蒸発器に送り込み、蒸発器の中で伝熱管に水を散布、その水の蒸発によって伝熱管の熱を奪い、伝熱管の中を流れる水を冷やす。
 水の蒸発温度は通常100℃。が、このナチュラルチラーの蒸発器内部は100分の1気圧(7mmHg)の高真空状態に保っているので、5℃くらいの低温でも蒸発する。伝熱管の水は12-15℃でナチュラルチラー内部の蒸発器に送り込まれ、7℃くらいに冷やされて屋内を循環し冷房する。
 一方、蒸発器内部で伝熱管を冷やして蒸発した蒸気は、吸収器に送られる。吸収器は蒸気を吸収する装置。この吸収器では、水分(蒸気)を吸収しやすい「臭化リチウム水溶液」を使っている。臭化リチウム水溶液は塩水によく似た物質で、水分の吸収効率がよい。

蒸気を吸収して薄くなった臭化リチウム水溶液は再生器に送られ、この再生器で太陽熱(もしくはガス)によって臭化リチウムを加熱、濃度を高めて再び吸収器に戻される。臭化リチウム水溶液の加熱によって発生する蒸気は凝縮器に送られて水に戻され、再び蒸発器に送られて潜熱利用に使われる。凝縮器は10分の1気圧(70 mmHg)に保たれている。

写真2 ソーラークーリングシステムの仕組み

写真2 ソーラークーリングシステムの仕組み

太陽熱の利用は太陽光発電より進んでいる

以上がナチュラルチラーの構造だが、そのナチュラルチラーに送り込む温水をつくり出すのは「太陽熱集熱器」。太陽熱のエネルギー変換効率は50%超と、太陽光のそれがせいぜい10-15%にすぎないのと比べ格段に高い。太陽熱利用は欧州や中国で進んでおり、世界的にも太陽光発電より普及している。
 日本での太陽熱利用は、住宅の屋根などに設置する温水器がおなじみだが、この「ソーラークーリングシステム」は、吸収式冷凍機の熱源として必要な80-90℃の温水をそれより格段に高い集熱効率で得られる。その理由は、真空管形集熱器を採用、しかもそれを大きく改良していることにある。
 基本構造は、ガラス管の中に仕込んだ集熱フィンで太陽熱を集熱し、その熱を集熱管の中の水に伝え、それによって得た温水をナチュラルチラーに送り込む。
 東京ガス・エネルギーソリューション本部空調技術グループの梶山啓輔さんはこう説明する。
 「集熱フィンの温度を逃がさないよう、周囲を真空管で覆っています。魔法瓶と同じ原理です。ところが従来の集熱器は、あまり信頼性が高くなかった。真空部分に空気が入りこむことが多く、断熱性能が落ちてしまったのです。それに対し当社が採用している集熱器は、ガラス管と集熱管を接合しておらず、高い真空維持性能を実現しています。しかも集熱器の背面には反射鏡を備え、さまざまな角度から入ってくる光を集めることによってより集熱効率を高めているのです」
 ちなみにこの集熱器は、太陽熱利用が盛んな欧州で真空型集熱器としてシェアトップの製品だ。「集熱管内の水は80-90℃の温水にしてナチュラルチラーの再生器に送りますが、循環させずそのままにしておくと、たちまち300℃くらいまで上がるほどの高い集熱性能を備えています」と、都市エネルギー事業部課長の岡雅博さんは言う。
 ナチュラルチラーと太陽熱集熱器を組み合わせたこの「ソーラークーリングシステム」は、まず同社の中原ビル(川崎市)に実証設備を導入した。同設備でCO2排出量約19%削減、エネルギー消費量約22%削減といった成果を得て、このほかの建物にすでに11件の導入実績を上げている。
 ただ、ごたぶんにもれずこの再生可能エネルギー利用システムも、泣きどころは高コスト。システム個々の設備機器よりも、工事費負担が重く、それが普及の足かせだった。そこで同社は、導入コストを40%引き下げた改良新システムを開発、2012年7月から売り出した。
 新システムは、集熱器の設置に傾斜をつけず、平らにしている。それによって集熱器が受ける風の吹上加重を減らし、75kgだった1m2当たりの基礎重量を10kgに引き下げた。また、ポンプやバルブ類は補機パッケージに収納、配管も大幅に簡素化した。こうして現場の作業量を減らし、工期の短縮を実現して導入コストの低減につなげた。
 この「ソーラークーリングシステム」は経済産業省の再生可能エネルギー熱利用加速化補助金制度の対象になっており、その導入メリットの訴求も併せ売り込みを図っていく方針だ。

掲載日:2012年9月27日

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