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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第13回 紙ごみから発電するバイオ電池 [ソニー]

地球上の生物が行うエネルギー変換には2つある。1つは植物の光合成だ。太陽光のエネルギーを用い、空気中の二酸化炭素と水から酸素と炭水化物(ぶどう糖など)をつくる。もう1つは動物の呼吸であり、空気中から取り込んだ酸素と体内の炭水化物(ぶどう糖など)を活動エネルギーに変換し、二酸化炭素と水にして体外に排出する(人工系呼吸システム)。

ぶどう糖を燃料に発電する

ソニーでは、後者のシステムを利用したバイオ電池の開発を進めている。これは、植物に含まれる炭水化物(ぶどう糖など)を酵素で酸化分解して発電する燃料電池の一種であり、植物由来なので安全性が高く、クリーンなエネルギー源として注目されている。

それについて、ソニーの先端マテリアル研究所でバイオ電池の開発に携わる酒井秀樹さん(バイオ電池テーマリーダー)は次のように語る。

「石油などの化石燃料は採掘を続ければ枯渇します。そこで今後、地球の表面で行われている光合成と呼吸による炭素循環の再生可能エネルギーを利用する必要があります。このエネルギーは環境負荷が小さく、持続可能な社会に貢献できます」

ソニーの試算によると、1年間に世界中でつくりだされる炭水化物は、全世界の消費エネルギーの10倍もある。葉や樹木にため込まれたその炭水化物の一部をエネルギーとして有効利用できないかという発想に基づくアプリケーションの1つがバイオ電池だ。

学術ベースで酵素から電圧が得られることが実証されたのは1990年代初頭。やがて好適な酵素が得られ、それを電極に固定化できるようになってきたため、ソニーとしてもこの発電システムに着目、2001年に研究を開始した。とりわけソニーは、発電の高出力化に注力して開発を進めた。2007年にはその成果をプレス発表できるところまでこぎつけ、その後もたゆまず実用化に向けた開発を進めている。

紙や木材に含まれるセルロースを分解して抽出したぶどう糖で発電するソニーのバイオ電池

紙や木材に含まれるセルロースを分解して抽出したぶどう糖で発電するソニーのバイオ電池

出力アップの秘密

バイオ電池の構造は図1のように、燃料電池と同様に負極、正極、電解質、セパレーターからなる。その特徴は、負極と正極の触媒には生体触媒の酵素を用い、それを両電極に固定していること、および酵素間あるいは酵素と電極間の電子の受け渡しを行うために電子伝達物質を固定化していることだ。

バイオ電池の構造と発電の仕組み

バイオ電池の構造と発電の仕組み


発電の仕組みは、燃料のぶどう糖を負極で酸化反応させ、もう一方の正極で酸素の還元反応を起こし、そのカップリング反応によって電気エネルギーを取り出す。つまり、負極の酵素でぶどう糖を酸化分解して電子と水素イオンを取り出して正極に送り、一方の正極では空気中の酸素を取り込んで水素イオン(セパレーターを介して負極から移動)と電子(外部回路を経て負極から移動する)による還元反応によって水を生成するが、この一連の電気化学反応を通じ、電子が外部回路を移動する際に電気エネルギーを取り出すのだ。

一般的にバイオ電池の理論電圧は1.25Vが上限とされる。

「ソニーのバイオ電池は、2007年当時の最高出力密度が電圧0.3Vで1.5mW/cm2でした。その後、負極の電子伝達物質や正極の構造などを改良することで、2008年には電圧0.5 Vで5mW/cm2、2010年には同様に10mW/cm2まで上がってきています。バイオ電池は燃料電池の一種と位置づけられますが、従来の燃料電池には及ばないものの、この10mW/cm2という数値はバイオ電池として世界最高の出力密度です」(酒井さん)

着実に出力アップを図る一方で耐久性の改善も進めている。バイオ電池では燃料を繰り返して交換すると、電子伝達物質のうち低分子の物質が溶出してしまい、それによって発電効率が下がっていた。そこでソニーは独自開発したメソポーラス炭素粒子を用いることで溶出を防ぎ、繰り返して燃料を交換して発電する際の耐久性を向上させた。

また、電極に用いる酵素は耐熱性にも課題があるが、遺伝子改変技術による高耐熱性の人工酵素の開発や添加剤(糖類)の追加により耐熱性を高めている。さらに、電池容量については複合酵素を検討することで2倍の容量が取れる見込みがついた。

紙ごみや廃材でも発電できる

バイオ電池の当面の「燃料」はぶどう糖だが、バイオ電池が世界中に普及するようになると、食糧との鬩ぎ合いが起きる可能性がある。食糧の安定供給を脅かすのは回避しなければならないとの思いから、将来的な課題として非食糧バイマスの1つであるセルロースを燃料として使う技術の開発も進めている。

廃材あるいは段ボールや古新聞などの紙類にはセルロースが含まれている。そのセルロースをセルラーゼという酵素が分解してぶどう糖をつくり出す。セルラーゼは草食動物やシロアリなどの体内に棲息する腸内細菌が保有しているので、それらの動物から取り出したセルラーゼでセルロースを分解してぶどう糖を得ることを考えている。

実際、2011年には段ボールに含まれるセルロースから得たぶどう糖を燃料にバイオ電池で発電させる子ども向けワークショップを催した。

製品化までにはいましばらく時間を要するが、将来のエネルギー事情を見すえて着々と研究開発が進められている。

<関連リンク>

掲載日:2012年8月 9日

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