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エネルギー新時代


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第11回 独自の技術によるインライン型のマイクロ水力発電 [田中水力]

大規模な水力発電で真っ先に思い浮ぶのがダム式水力発電だろう。巨大な貯水池から落下する大水流を利用して発電する。この水力発電機の水車に用いられる主流が「フランシス水車」(米国人技術者のジェームズ・B・フランシスが開発)だ。フランシス水車は、ケーシング(流路)、ガイドベーン(案内羽根)ランナ(水車羽根)などで構成され、発電効率が高く、適用条件(落差20-200m、水量0.15-10 m3/秒)も広範囲で設置の自由度が高いことからもっとも普及している。
 フランシス水車の特徴は、大量に流れ込む水流をガイドベーン(案内羽根)の開閉で適切な水流に制御してランナを回転(発電)させられることだ。ガイドベーンが水流調整機能をもつがゆえに広範囲な適用条件でも稼動できる。

フランシス水車の短所を克服した独自機構

一般的にフランシス水車は、水流を調整する機能のガイドベーン(案内羽根)の動作がリンク機構で制御されているため、製造コストが高くメンテナンスも煩雑になる

一般的にフランシス水車は、水流を調整する機能のガイドベーン(案内羽根)の動作がリンク機構で制御されているため、製造コストが高くメンテナンスも煩雑になる

ところで、一般的にフランシス水車のガイドベーンはリンク機構で作動するが、これには一長一短がある。リンク機構とはメカニズムを連結する機構の一種、精密に作動するという長所の反面、複雑な構造のためコストが高くなるという短所がある。また、水車には水流と一緒に土砂が流れこんでランナ(水車羽根)に激突するため、リンク機構を正確に作動させるうえで定期的なメンテナンスが不可欠だ。そのメンテナンスも複雑なリンク機構を分解・点検するため作業が煩雑でコストも高くなってしまう。

リンクレス・ハイドロパワーは、ガイドベーンの動作をリンク機構ではくギヤで駆動する

リンクレス・ハイドロパワーは、ガイドベーンの動作をリンク機構ではくギヤで駆動する

そのような短所もあることから、広範な適用条件に対応できるにもかかわらず、フランシス水車は水車全体が大きすぎるため上下水道など小スペースのインライン(既設の配管)設置には向かないとされてきた。インラインとは、上水道の浄水パイプや工場の循環パイプなど既設の配管に発電システムを設置し、パイプ内の水流で発電しようというものだが、どうしても設置スペースが小さいため発電(マイクロ水力発電)にはコンパクトな円筒型ケーシングの軸流プロペラ水車が用いられてきた。しかし、軸流プロペラ水車に高水圧に耐えられない、それを補うために直列接続して設備の価格及び設備の全長が長くなってしまうという短所があった。

そこでインラインで使えるマイクロ水力発電機を開発するため、田中水力は軸流プロペラ水車の長所を取り入れた改良型フランシス水車のマイクロ発電機「リンクレス・ハイドロパワー」を2009年に完成させた。リンクレス・ハイドロパワーのケーシングは軸流水車と同じ円筒型でありながら、フランシス水車と同じくガイドベーンやランナなどから構成される。

リンクレス・ハイドロパワーは、上水道の浄水パイプなど既設の配管に設置して発電する

リンクレス・ハイドロパワーは、上水道の浄水パイプなど既設の配管に設置して発電する

ただし、ガイドベーンの構造が従来のフランシス水車とは異なり、リンク機構ではなくギヤで駆動する。これがリンクレス・ハイドロパワーの最大の特徴だ。従来のフランシス水車のガイドベーンはリンク機構のために構造が複雑になるが、それをギヤ式駆動に替えたことでシンプルな構造にできた。そのためフランシス水車に比べてリンクレス・ハイドロパワーは部品点数を1/2、コストを30%削減でき、さらにメンテナンスも容易にできた。


さらにコンパクトなマイクロ水力発電システムを完成

「上下水道や送水管、工場の循環システムなどインラインに水車発電機を設置する場合、どうしてもスペースに限りがあるためコンパクトな発電システムが求められます」(田中幸太社長)
 発電出力は落差と流量で決まるが、リンクレス・ハイドロパワーは、落差10-80m、水量0.15-1m3/秒で最大500kWを発電する。現在、累積で15台を出荷し、約半数が水道局の浄水場で稼動している。

同社は今年秋からさらにコンパクトなマイクロ発電システムを発売する。これは九州工業大学と共同開発した「エコ・ハイドロユニット」で、ランナ(羽根)、発電機(コアレスモータ駆動)、パワーコンディショナなどで構成される。コアレスモータは従来の銅線を巻く方式でなく高精度加工の銅シート材で形成されたステータになっているため、軽量で高密度・高出力、高剛性、放熱性に優れ、コギングがなく滑らかに回転する。
 エコ・ハイドロユニットの最大出力は5kW(落差5-40m、水量5-22リットル/秒)。コンパクトかつ軽量で人力でも運べるため設置場所を選ばない。そのため山小屋から農業用水、工業用水、高層ビルなど広い範囲での活用が見込める。水力発電機のスペシャリストがまた1つ新しい独自技術を世に問いかける。

掲載日:2012年7月19日

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