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エネルギー新時代


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第10回 わずかな水量で発電するマイクロ水力発電機 [角野製作所]

小水力発電機が注目されている。特に昨年の東日本大震災を機に国内の豊富な水資源を有効活用しようという機運が高まっている。
 明確に定義はされていないが、出力1000kW以下の水力発電をミニ水力発電もしくはマイクロ水力発電という。角野製作所が2010年末に開発したらせん式ピコ水力発電装置「ピコピカ」も毎秒10l(リットル)のわずかな水量で発電するマイクロ水力発電機だ。

伝統ある構造の水車

同社がマイクロ水力発電機の開発を始めたのは2009年秋だった。同社の主体事業はチタン、インコネルなど難削材を用いた自動車部品の量産加工だが、「地球温暖化や二酸化炭素の排出問題など環境問題を以前から意識していた」(角野秀哉代表取締役社長)ことからマイクロ水力発電機の開発を思い立った。
 さっそく2009年度の経済産業省「ものづくり中小企業製品開発支援補助金(試作開発等支援事業)」に応募し、採択された。
 「量産用では最小のマイクロ水力発電機を目標にして開発を始めました」(角野社長)

同社が開発したマイクロ水力発電機は、「らせん式」と呼ばれる伝統ある構造の水力発電機で、らせん状の羽根を有する水車で水流をとらえる。この構造の水力発電機は大正時代に富山県を中心に広く普及していた。持ち運びができる小型の水力発電機で、落差のあまりない水路でも回転するため主に農作業で用いられていた。
 その伝統的な構造をもつピコピカは、幅30cm以上の水路(水量10l/秒以上)があればどこでも発電できる。

角野製作所のらせん式ピコ水力発電装置「ピコピカ」は、水車の羽根がらせん形状。

角野製作所のらせん式ピコ水力発電装置「ピコピカ」は、水車の羽根がらせん形状。

開発当初はらせん状の水車の羽根をアルミ製にしようと考えていたが、コストが高くなることなどから断念した。
 「コストの問題だけでなく、技術開発で支援していただいたNPO法人のアドバイスを参考にしました」(角野社長)
 同社は難削材の加工を通して高度な切削技術と加工ノウハウを蓄積しているが、水車の羽根をつくるのには流体力学など専門知識がなければ対応できない。その技術支援を取引銀行を介して特定非営利活動法人・地域再生機構から得た。そして地域再生機構から、水車や筐体の原料を廃ペットボトルにすればリサイクルに貢献でき、また地域の学校の児童・生徒が集めるペットボトルのキャップを活用すれば地域活性にもつながるとアドバイスを受け、ピコピカの主な原料をアルミから樹脂に変更した。

開発から1年後の2010年末、らせん式ピコ水力発電装置・ピコピカが完成した(特許、意匠登録出願中)。ピコピカの寸法は長さ約1m、タテ・ヨコ28cm。重量は18.5kgで1人でも持ち運べる。水車の長さは70cmで、直径20cmの羽根が24枚組み込まれている(4枚1組の羽根を6組で構成)。
 ピコピカのフレームは鋼製だが、それ以外の羽根や透明カバーなどは廃棄されたペットボトルとキャップ(480個で羽根を加工)を原料とする。発電機は市販の自転車用ハブ・ダイナモを使用し、水量が毎秒10lで2.4wの電力を発電する。

水流をうまく捉えて効率的に発電するためには、流体力学に基づく最適な羽根の設計・加工がポイントだ。同社では得意の5軸MC(マシニングセンタ)加工を駆使し、アルミ合金を用いて羽根の厚み、形状、ねじれ、接続方法など数10個の試作を繰り返し、それをベースに樹脂製の水車を完成させた。

毎秒10リットル以上のわずかな水量で発電する

毎秒10リットル以上のわずかな水量で発電する


大震災を機に急きょ発売に

2011年1月から恵那市内など複数の水路でピコピカの実証試験を実施し、性能・品質・耐久性などの最終確認を始めた。その矢先に東日本大震災に見舞われ、被災地の宮城県石巻市にも10台のピコピカを寄贈した。
 「2011年3月の東日本大震災を機にピコピカへの注目度がガラリと変わりました」(角野社長)
 実証試験は1年間のデータ取得を目的にスタートさせたのだが、2カ月後の大震災によって全国からの問い合わせが殺到したため、実証データの取得も半ばに同年8月急きょ発売することに決まった。
 「実証試験中のピコピカから不具合などの情報は届いていませんので、すべて順調に稼働しているようです」(角野社長)
 現在、累積で130台超のピコピカを出荷している。ピコピカは、農業用水路(U字溝)のようなわずかな水流でも置くだけ発電できるため、地域の街灯や農業の獣害防止用電柵などの電源には最適と考えられる。
さらに日本のみならず東南アジアからの引き合いも多く舞い込んでいる。インドネシア、フィリピン、タイなど水力の豊富な諸外国でもマイクロ水力発電の潜在需要は大きいようだ。小さな水力発電機のポテンシャルが国内、海外ともに大きいことは間違いない。

掲載日:2012年7月12日

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