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エネルギー新時代


新エネルギーに挑む企業・研究機関

第9回 廃シロップ液を利用したバイオガス発電 [山梨罐詰]

静岡県の缶詰メーカー・山梨罐詰は、フルーツ缶詰やフルーツゼリーの製造工程で廃棄されるシロップ液を利用したバイオガス発電に取り組んでいる。

現在、国内で流通するフルーツ缶詰およびフルーツゼリーの原料(果実)のほとんどが海外から輸入されるフルーツ缶詰だ。ただし、輸入されたフルーツ缶詰はそのままでは市場に流通されない。国内の缶詰工場でシロップ液と果実に分離され、新しい缶に果実と新しいシロップ液が充填されて流通に乗せられる。輸入缶詰のシロップ液には缶の金属臭が移っているため、缶詰メーカーで国内の消費者向けに調整された新しいシロップ液に替えられるのだ。

それにより同社では輸入缶詰のシロップ液は廃棄処理しなければならず、従来は排水処理をしていた。しかし、この排水処理法では汚泥処理代、薬品代、電気代などの費用がかさ張り、同社では1年間(2008年度)で排水処理費用に1,500万円以上を費やしていた。
 そこで「その処理費用の削減と捨てていたシロップ液を再利用するため」(取締役研究開発部長・望月光明さん)、2006年に静岡県工業技術研究所と共同で廃シロップ液の再利用の研究を始め、同研究所・上席研究員の酒井奨さんの提案でバイオガス発電の研究・開発に着手した。さらに2009年度には環境省の補助事業(地球温暖化対策技術開発事業、3カ年事業)に採択され(総事業費1億円)、東京工業大学、静岡県環境資源協会をも加えた産学官の体制でバイオガス発電の開発を進めた。

バイオガス発電で熱電併給

その結果、2010年から同社ではバイオガス発電システムを稼働させ、廃シロップ液を利用して発生させたメタンガスでガスエンジンを動かして発電している。そのシステムフローは以下のようだ。

廃シロップ液を利用したバイオガス発電のシステムフロー

廃シロップ液を利用したバイオガス発電のシステムフロー

まず、約2500L/日の廃シロップ液を原料調整槽に投入してpH、温度、成分を調整する。その後、メタン発酵槽に廃シロップ液を移してメタン菌と混合・撹拌して20日間発酵させることで約188m3/日のメタンガスを得る。ただし、廃シロップ液の主成分は砂糖と水なためメタン菌の発酵に必要な栄養素が少ない。そこで、原料調整槽にチッ素やリンを適量添加し、メタン発酵槽に投入する原料の成分を調整することでメタン菌の発酵を促す。現時点では廃シロップ液中の炭素とチッ素の混合比を15:1、発酵槽内の pHを7.5-8.0に調整することがメタンガス生成の最適な条件になっている。

メタン発酵槽で生成したメタンガス(ガスの成分はメタン60%、二酸化炭素40%)は脱硫などにより不純物を除去し、ガスエンジン(25kW級)に供給して発電と熱(温水)回収をする。発電は1日に360kWh、温水(熱)は1日に2.1GJが得られ、電力と温水は工場設備のエネルギー源として使われる。
 廃シロップ液を再利用したバイオガス発電により、同社は排水処理費用の削減と電力・熱の生成による省エネで年間956万円のコストメリットを試算している。

バイオガス発電システムの外観

バイオガス発電システムの外観

新たな栄養源を探索する

「微生物が産出するエネルギーはコントロールがむずかしく、そのため国内ではバイオガス発電に対する認知度がまだ低いのです」(静岡県工業技術研究所・酒井さん)
 廃シロップ液を利用したメタンガス生成の制御もやはりむずかしい。効率よくメタンガスを生成させるためには、メタン発酵槽へ投入する廃シロップ液の量を適切に制御しなければならない。廃シロップ液の投入量が多ければ多量のメタンガスを得られるわけではなく、逆に発酵が低下してメタンガスの生成量が減少してしまう。それほどメタン菌の活性制御(発酵制御)はむずかしく、ゆえに神経を使いながら知見を蓄積しなければならない技術なのだ。

そこで2012年度から山梨罐詰と静岡県工業技術研究所は、メタン発酵を促すための要素として廃シロップ液以外の栄養源を検索・実証している。その栄養源の候補としてツナ缶の製造工程で廃棄される煮汁や汚泥に焦点をあて、そこからチッ素を回収しようと試みている。
 同社の主力製品はツナ缶であり、その煮汁を熱アルカリ処理(加熱してアルカリで溶解)してチッ素を回収する。また、汚泥や生ごみからもチッ素やミネラルなどを回収する。これにより従来はただ廃棄していただけの汚泥や煮汁からメタン発酵の栄養源を回収でき、かつ汚泥、煮汁の処理費用の削減もできる。まさに一石二鳥の試みだ。
 既述のようにメタン菌の活性制御はむずかしい。例えれば日本酒の仕込みと同じように、菌と栄養源および温度などの環境との相互作用によって発酵がいかようにも変化する。ゆえにメタン菌の発酵効率を高めるための制御について多くの知見を蓄積してノウハウとすることが重要だ。それにより、フルーツ缶詰のシロップ液以外の食品廃棄物を再利用したバイオガス発電につなげていける。バイオガス発電の認知度を高める可能性が秘められているようだ。

<関連リンク>

掲載日:2012年7月 5日

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