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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
無尽蔵に存在する海のうねりが電力を生む!驚きの“海流発電”

5分で最新キーワードを学ぶこのコーナー、今回は世界有数の巨大海流・黒潮を利用して発電する「海流発電」です。太陽(熱と光)、風(風力)などのソフトエネルギー開発が続く中、日本の領海内に無尽蔵に存在している海流の力を電気に換えようという試みが、実用化への新しいステップを踏み出しました!安定供給でき、しかも設備利用率は70%も期待できる新しいベースライン電力への期待が膨らみます。

「海流発電」って何?

1-1.世界有数の巨大海流「黒潮」が電力源に

図1 浮体式海流発電ファームの予想図
図1 浮体式海流発電ファームの予想図

海中に設置した際の予想図

資料提供:IHI

「海流」とは海の中を水平方向に移動する海水の流れのこと。日本では黒潮、親潮、対馬海流が代表的なもので、特に黒潮はメキシコ湾流と並び世界2大海流とも称される巨大海流だ。その幅は約100km、流速はおよそ3ノット(約5.6km/h)、最大では4ノット(約7.4km/h)にも及ぶ。しかも海の中を進む海流は風雨や潮汐にほとんど影響されず、年間を通じてほぼ安定した速さで流れている。

沖縄の西側を北上して九州の南を通り、四国から紀伊半島沖で最大の流速となって、更に本州に沿って北上して房総半島沖で東に進む。このような巨大海流を領海内で利用できる国は限られており、日本は世界的に見ても海流発電に最適な条件に恵まれている。どうにかこの巨大エネルギーを有効に利用する術はないものか。長年夢想されてきたその技術がようやく今、現実のものになろうとしている。図1に見るような、巨大海流発電ファーム(予想図)の実現に手がとどきそうな基礎技術が、官民学一体の国家プロジェクトとして実を結びつつあるのだ。

1-2.官民学一体の開発プロジェクト

これまで海流発電には古くから様々な方式が考えられてきた。その基本はどれも、海流をプロペラや水車で受け止め、回転させて電力を得るというシンプルなもの。海水は空気の約800倍の密度があるため、海流のエネルギーは非常に大きい。しかし、風力に比べ海流の速度はかなり遅い。風力発電設備の場合は年平均風速が6m/秒以上が必要とされ、12m/秒以上の風速で2MWクラスの発電が可能と言われているのに対し、海流のほうは黒潮の場合でも流速は平均して3ノット(1.5m/秒)程度なので、同等の電力を生むためには直径の大きな海中用タービンがいる。タービンが大きくなると発電装置のサイズも大きくなり、コストの問題、強度の問題、メンテナンス性の問題など、様々な課題がたちはだかる。民間企業の力だけでその解決を図るのは難しく、これまで技術開発が積極的には行われてこなかった。
 転機が訪れたのは2011年のこと。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「風力等自然エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー技術研究開発/次世代海洋エネルギー発電技術研究開発」事業のスタートだ。この事業は国家的なエネルギー安全保障やCO2排出量削減という目的のほか、海洋エネルギー利用技術開発で先行する海外諸国とのギャップを埋め、国際競争力を持つ事業化を明確に目標に掲げて、中・長期的な海洋エネルギー利用技術開発と実証研究を進めるものだ。この事業で次世代海洋エネルギー利用発電は、事業化時に1kWh当たりの発電コスト20円程度にするという高い目標が掲げられた。
 海流発電によってこの目標にチャレンジしようと手を上げたのが株式会社東芝、東京大学大学院新領域創成科学研究科、株式会社三井物産戦略研究所、株式会社IHIによる共同研究コンソーシアムだった。スタートから4年、コストを抑えて発電効果を上げる、これまでにない海流発電の要素技術が次々に開発されている。

1-3.海流発電システムのあらまし

メンテナンスしやすい「水中浮遊式」構造

海流発電システムの原理は、風力発電をそのまま海の中に移したものをイメージすればよい。巨大なプロペラを風ならぬ海流の力で回して発電機を動かして電力を得る。かつては巨大な扇風機型の装置を海底に設置する方式や海面に浮かべた構造物に設置する方式が考えられたことがあったが、長期間の運用を考えると暴風波浪などの自然条件への備えや、定期的あるいは臨時のメンテナンスは不可避。その効率を考えると、発電時は海中にあり、必要に応じて海面で手入れを行う方式が合理的。そこで現在研究されているのが「水中浮遊式」構造だ。
 図2に見るように、海底に設置するのは係留索を固定するためのアンカーのみとし、発電装置は係留索に繋がれ、まるで凧のように海中を漂うようにする。浮力を調整することにより、平常時は発電効力のよい水深で稼働させ、メンテナンス時には海面に浮上させて作業を行うことができる。

図2 水中浮遊式海流発電システムのイメージ
図2 水中浮遊式海流発電システムのイメージ

資料提供:IHI

発電効率に優れるタービン翼
図3 タービン翼性能試験の様子
図3 タービン翼性能試験の様子

試験水槽内にて

資料提供:IHI

プロペラ(水平軸揚力型タービン翼)による発電システムの出力は、流速の3乗とタービン翼の掃過面積に比例して変化するので、プロペラサイズは大きければ大きいほど大電力が生み出せる。

しかし、プロペラ直径を大きくするほど回転数が遅くなり、発電効率低下、駆動軸トルクの増大、重量増加を引き起こしてしまう。このジレンマ解消のため、IHIでは数値流体力学解析(図4)と1/30スケールの模型翼を用いた水槽試験(図3)によって最適なプロペラサイズ/形状と出力の関係を割り出した。その結果、定格流速1.5m/秒の条件で1基1MWの発電を行うことを想定すると、プロペラ直径は約40mになることが分かった。また低流速でも高速に回転して高出力が得られる よう、風力発電用のプロペラをベースにした形状から新形状に変えることにした。

図4 数値流体力学解析の様子
図4 数値流体力学解析の様子

左:タービンの回転を再現した解析例、右:タービン翼に作用する加重分布の解析例

資料提供:IHI

海中での姿勢を安定させるダブルプロペラ構造
図5 模型水槽試験
図5 模型水槽試験

タービン2基を連結して安定性を確保する

資料提供:東京大学大学院新領域創成科学研究科
高木研究室

海流は一定で安定しているとはいえ、微妙に速度も方向も変化する。1点で係留する水中浮遊式では、流れ方向の変化に吹流し効果で追随して発電ユニットが位置を変えることができる。しかし、海中に浮遊した状態でタービンを回転させると、タービンの回転トルクで発電ユニット自体が回転してしまい、係留索が捻じれてしまう。そこで発電装置は2基を連結して1組とし、プロペラは互いに逆回転するようにした(図5)。こうすることにより、タービンの回転トルクも相殺し、安定した姿勢を保つことができる。これらの構成によって効率的に発電できるようになった。

水圧や荷重に耐える強靭な構造

想定される設置水深は水面下約50mなので、その水圧に耐えながら海流を受け続けるためにはプロペラも発電機も堅牢・強靭な材質・構造でなければならない。発電機の容器には鉄製の圧力容器が用いられ、プロペラにはFRP(繊維強化プラスチック)などの丈夫な材質が使われる。東芝やIHIは原子炉開発にも携わっており、風力発電にも造詣が深いので、ノウハウが十分に活用されそうだ。

腐食や海中生物の問題

海中で長期間稼働するためには、まずは腐食を防がなければならない。これには耐腐食性の高い塗料を用いた上、電気防食技術を利用することが考えられている。船舶、メガフロートや洋上石油貯蔵・積載設備などに経験を積むIHIの技術が生かされよう。なお、フジツボなどの付着や、魚などの海中生物の衝突なども想定する必要がある。実証実験が実施されて後、必要があれば対策が研究されることになりそうだ。

海底へのアンカー固定と係留索

強い海流の中でも発電機をつなぎとめるアンカーは、海底油田の採掘設備に利用されている設置技術などが流用できるほか、メンテナンスには海中で観察及び作業ができる海中ロボットの利用も想定されている。また、係留索には、水に浮くほどの軽量で強度の高い高分子(樹脂)材料のロープが使われる。

送電線と集中制御システム

送電線は、制御用の通信回線とともに海底に埋め込まれることになる。まだ設置する海域の候補は決まっていないが、大規模発電ファームは海岸から数十kmのところに設置することになりそうだ。ケーブルの敷設には海底光ケーブル敷設などで使われている技術がそのまま利用できる見込みだ。発電システムはすべてセンターで集中監視・制御可能にする一方、各装置が自律的に姿勢制御などを行えるよう、個別に自動制御システムを備えることになる。

2.海流発電の可能性

2015年には以上のような要素技術開発がひとまず終了する予定だが、IHIではNEDOプロジェクト以降の実用化の青写真も持っている。まずはその後数年をかけて、タービン2基を連結して合わせて定格出力2MW、耐用年数20年を想定する海流発電システムのプロトタイプ(実証モデル)による発電実証実験を行う。更にその後は、実証プラントで実際の稼働状況を見ながら改善しつつ実績を積み、2020年には実用化、2030年には多くの発電機を集めた数百MWクラスの発電ファーム実現を目論んでいる。
 なお、ソフトエネルギーの設備利用率は、例えば太陽光の場合で10%超、陸上風力の場合で20%超、洋上風力発電で30~40%程度と言われているのに対し、海流発電はなんと60~70%と試算されており、1年を通して安定した発電量が期待できるので、ベースライン電力としての役割が果たせると考えられる。原子力発電の未来が不透明な中で、新しいソフトエネルギーの実用化は心強い。NEDOのプロジェクトではそのほかの海洋エネルギーの実証研究や技術開発が並行して進んでおり、実施期限は来年度まで。おそらく今年から来年にかけて続々と公表されていくであろう成果に注目したい。

掲載日:2014年7月16日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2014年5月21日掲載分

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