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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
1枚300GBへ!ブルーレイの後継規格「Archival Disc」

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは、従来のレーザ読み書きヘッドの仕様をそのままに、1枚の12cmディスクで1TB記録を視野に入れる新規格「Archival Disc(アーカイバル・ディスク)」。今年3月にソニーとパナソニックが共同で策定したこの業務用光ディスク規格にはどんな技術が使われているのでしょうか?

1.「Archival Disc」とは

2014年3月に公表された、ソニーとパナソニックが共同で策定する、データアーカイブ用大容量光ディスク規格。現在1枚あたり300GBの仕様が策定されており、第2世代で500GB、第3世代で1TBへの拡張が予定されている。ブルーレイディスク技術がベースになっており、従来から使われてきたレーザの波長や開口率を変えずに大容量化を達成していることがポイントだ。例えば「Optical Disc Archive(オプティカル・ディスク・アーカイブ)」として既に商品化されている12枚装填可能な光ディスクカートリッジ(図2)を使えば、タワー型PCの5インチベイにもマウントできるサイズで300GB(両面記録による1ディスクあたりの記憶容量)×12枚=3.6TBの大容量ストレージが実現できる。1TBのArchival Discが実現すればゆくゆく12TBがまかなえるわけだ。

図1 Archival Disc規格のロゴ
図1 Archival Disc規格のロゴ
図2 12枚格納光ディスクカートリッジ
図2 12枚格納光ディスクカートリッジ

Archival Discが装填可能な12枚格納Disc Archiveカートリッジ

資料提供:産総研


1-1.なぜ「光ディスク」に新規格が必要なの?

アーカイブ用途に課題をもつHDDや磁気テープ

長期保管が必要なデータの記録媒体として主に用いられているのはHDD、磁気テープ、光ディスクの3種類だ。HDDは容量としては申し分なく、価格もかなり下がってきた。しかし問題は寿命。ご存知のとおり3~4年が限界なので長期保管には定期的に新しいディスクへのデータ移し替えを行わなければならず、保管中も常時通電が必要なのでコストがかかってしまう。
 昔からアーカイブに使われてきたのが磁気テープ。現在は1カートリッジ当たり最大2.5TB(LTO-6非圧縮の場合)に達していて、容量当たりコストは他のどの記録メディアよりも安いのが特長だ。ただしランダムアクセスに時間がかかる点と現実的な寿命に問題がある。テープ寿命は一部メーカーでは30年程度としているものの、テープ仕様の世代がほぼ2年で変わる状況が続いており、2世代よりも前の世代のテープは最新ドライブで読めなくなるのが現実。テープベンダ自身が「10年経ったら新媒体にデータを移行」することを薦めている状況だ。また保管環境により劣化が進むため、環境温度と湿度を指定された範囲に保つ必要があり、こちらも保管のための空調コストがかかってしまう。

寿命と保管コストの問題は光ディスクが解消。課題は大容量化

寿命と保管コストの問題を解決するのが光ディスクだ。光ディスクの寿命は一説に100年と言われるが、ISO標準に基づいた加速エージング試験の結果から、ソニーでは従来の光ディスクで「50年以上」の寿命を検証している。また容量当たりコストに関してもHDDよりまだまだ安い。温度や湿度などの保管環境についても-10~55℃、湿度3~90%の環境でも短期間なら劣化しない(長期間の保管には10~30℃、湿度30~70%環境が推奨されるが)ため、空調コストもあまり問題にならない。例えば光ディスク利用の動画撮影カメラは南極や砂漠地帯での実績を積んでおり、環境変化や塵埃に強いことが実証済みだ。
 ただし光ディスクの弱点は、媒体当たりの容量がHDDやテープに比べて見劣りすることだ。これまでのところブルーレイディスク(BDXL規格)での片面128GBが最大だ。この弱点を克服できれば、アーカイブ媒体として最適なものになるのではないか。こうした考えから、大容量光ディスクの新規格が期待されていた。

1-2.大容量化に使われた技術は?

現在ブルーレイディスク規格の最大容量を超えた大容量の実現のための研究開発は、(1)記録面を多層化する、(2)記録面の記録密度を上げる--のどちらかの方向性を持っている。
 (1)の方向で、現在実用まで行き着いているのは片面4層記録方式までだが、例えば富士フイルムが2012年に20層(将来的には100層を見込む)の多層化技術を開発したように、さらなる多層化に向けた研究開発が進んでいる。
 今回のArchival Disc規格は、(2)の方向で研究を進めた1成果だ。中でも「世代互換性」を強く意識し、既存光ディスクドライブのレーザモジュールを利用できるように開発されているのが大きな特長になっている。図3は、その記録方式の模式図だ。

図3 Archival Discの信号記録方式のイメージ
図3 Archival Discの信号記録方式のイメージ

資料提供:ソニー

両面記録で容量は倍に

大容量化のための第一の仕様は両面記録方式とすることだ。取り扱いは不便にはなるが、カートリッジに入れた状態での移動やセットを前提にすれば問題はない。両面構造にすることで容量は2倍になる。

トラックピッチをグッと縮めて高密度に記録

従来は記録面にトラック(凹凸形状)を形成し、その凸部分(Groove)にレーザで小さなスポットの相変化(結晶構造の変化)を起こすことでビットを記録する方法をとっていたが、Archival Discでは、図2右側のように凹部分(Land)にもビットが記録できるようにした。もともとのトラック間ピッチはGrooveとLandの間隔と同じ0.32μmだったのが、Landに新しいトラックができることになり、トラック間ピッチは0.225μmと約2/3に縮めることができた。それだけ記録密度が増すことになる。

ノイズとなる隣接トラックのデータを拾わない技術

また図2からおわかりのように、従来のレーザスポットの大きさでは隣のトラックのビットまで入ってしまうため、読み出し時に隣のトラックの信号を拾ってしまい、それがノイズになりエラーにつながる可能性がある(クロストーク)。だからこそ元々Gooveだけにデータを記録していたのだ。しかしArchival Discでは世代互換性を保つため、レーザのほうではなく、信号処理の仕方のほうを変えた。狭トラックピッチに対応するクロストークキャンセル技術が開発され、新規格に盛り込まれることになった。
 さらに再生光スポットの分解能を補正する信号処理技術も加え、大容量化しながら高い再生信号品質を確保している。主な仕様をまとめると次のとおりだ。

表1 Archival Discの主な仕様
表1 Archival Discの主な仕様
Archival Discのロードマップ

この仕様が第1世代となり、2015年夏以降に各社から順次製品が登場する予定になっている。さらに第2世代、第3世代の仕様目標も次のように定められている。第2世代ではさらにノイズキャンセルの性能を高め、トラックの記録密度をさらに上げる技術が盛り込まれて500GB容量を実現、続いて、相変化の有無だけでなく変化の状態を細かく制御/検知して1つの記録箇所に多値を記録する技術を使い、1TB容量にまで発展させる青写真が描かれている。

図4 Archival Discのロードマップ
図4 Archival Discのロードマップ

資料提供:ソニー

2.Archival Discはどう使えるのか

2-1.転送速度をカバーするドライブ技術

Archival Discは従来のレーザモジュールがそのまま使えるので、既存光ディスクドライブ技術との相性はよい。上述したような複数枚が装填できるドライブなら簡単に大容量が実現できる。ただし転送速度はテープ(LTO-6)の場合で160MMB/s=1.28Gbps(非圧縮時)にのぼるのに対し、ブルーレイディスクは36Mbps×倍速、放送業界で利用されている業務用の光ディスク(プロフェッショナルディスク)でもリード最大330Mbps、ライト最大130Mbpsなので見劣りすることは否めない。
 これをカバーするのがドライブのほうの技術だ。既にソニーでは上述のように12枚の光ディスクを装填できるOptical Disc Archiveカートリッジを販売しており、これに対応するドライブ装置にはレーザヘッドを2個搭載したアセンブリ(図5)を2セット搭載している。ヘッドは合計4個になり、独立してリード/ライトできるようにして速度を向上させた。この現行Optical Disc Archive(第一世代)は従来のブルーレイディスク規格を採用しており、片面のみを利用する構造だが、第2世代以降のOptical Disc Archiveはディスク両面を利用するArchival Disc規格が新たに採用されるので、ヘッドはさらにディスクの上下に設けられることになる。合計8個のヘッドでリード/ライトが可能になるため、いっそうの速度向上が実現する(図6)。

図5 レーザヘッドを2個(2チャネル)搭載したドライブ内部アセンブリ
図5 レーザヘッドを2個(2チャネル)搭載したドライブ内部アセンブリ

資料提供:ソニー

図6 ヘッドアセンブリをドライブ内に2個搭載し、さらに両面対応してヘッドは合計8個
図6 ヘッドアセンブリをドライブ内に2個搭載し、さらに両面対応してヘッドは合計8個

資料提供:ソニー

現行および、上述の仕組みで達成される第2、第3世代のドライブの容量と転送速度は図7のとおり。特に第2世代以降はテープに比較しても遜色のない容量と転送速度が実現しそうだ。

図7 「Oprical Disc Archive」の製品ロードマップ
図7 「Oprical Disc Archive」の製品ロードマップ

資料提供:ソニー

なお、この製品の場合は1ドライブでの大容量化と転送速度向上を図っているが、複数ドライブを並列運用すればトータルの大容量化と転送速度向上は可能で、従来のPC用光ディスクドライブを並列運用するアプローチもある。しかしながら、1ドライブでの大容量化と転送速度向上は、複数並列運用すれば台数に比例してさらなる大容量化と転送速度が向上することを意味する。

2-2.Archival Discの応用領域は?

4Kあるいは8K映像データが増える映像業界での映像データのアーカイブ用途、データセンタ業者や企業情報システムのアーカイブ、映像コンテンツ制作業者やSOHO、個人事業者などの作品アーカイブ、大学など研究機関の研究データの保管など、Archival Discは巨大なデータを長期保管するニーズにはどこにでも適用できそうだ。
 ひたすら長期保管を旨とすることが多いテープとは違い、ランダムアクセス性能を生かした「アクティブアーカイブ」として、長期保管しながら業務利用するのに好適だろう。また、特に今後ビッグデータの利用技術が進むことを考えると、現在は捨てているデータが数年後には思ってもみなかった価値を生むことがないとはいえない。保管にコストや気を使わなくて済む光ディスクは、将来に備えた情報資源の「備蓄」目的にも答えてくれるかもしれない。
 なお気になる容量当たりコストは、まだはっきりとはしないものの、テープと競合できるコストを目指しているようだ。テープのコストは1GBあたり数円程度なので、現時点では光ディスクのほうがやや高いものの、やがて世代が変わるにつれて容量あたりコストは低下していく。ランダムアクセスは段違いに高速な点を加味すると、次世代のアーカイブメディアとして有望な選択肢であることは間違いない。

取材協力 : ソニー株式会社

掲載日:2014年7月 9日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2014年5月7日掲載分

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