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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
国際標準を目指す広域SDN「O3プロジェクト」

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは、利用回線やネットワーク機器設定のことなど何も考えなくても、欲しいネットワークをオーダーすれば、ソフトウェアが世界のネットワークから最適回線と経路をすぐさま用意してくれる「広域SDN(Software-Defined Networking)」。実現に向け活動中の「O3プロジェクト」はスタートから1年、どんな成果を上げているのでしょうか?

「O3プロジェクト」とは?

ネットワークの専門知識がなくても、帯域や遅延の度合い、セキュリティレベルや冗長性、価格などの条件を指定すれば、遠隔地間で最適なネットワークがわずか数分で構築でき、運用管理・制御、変更などがソフトウェア上で簡単に行えるような、新しい「広域SDN」の基本技術研究開発を行う、国内大手ICT企業5社による世界初の共同プロジェクト。従来はデータセンタや企業内で閉じていたSDNを拡張し、複数のデータセンタ間でも単一のソフトウェアで管理・制御可能なインフラ実現を目指している。図1に、広域SDNが目指すサービスの特徴を示す。

図1 O3プロジェクトが目指す広域SDNサービス
図1 O3プロジェクトが目指す広域SDNサービス

資料提供:O3プロジェクト

1-1.従来の広域ネットワークの課題とは

O3プロジェクトは昨年6月、日本電気株式会社(代表研究機関)、日本電信電話株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、富士通株式会社、株式会社日立製作所の共同で、2015年までの3年間で60億円規模の投資を行う一大プロジェクトだ。その仕事を理解するために、まずSDNの意義から考えてみよう。

ハードウェアを意識せずにネットワーク設計・構築・運用管理が行えるのがSDN

PCを利用するとき、CPUやメモリ、HDDなどのハードウェアを自分で直接管理・制御しようとは誰も思わない。それらの仕事はOSなどのソフトウェアが行ってくれるからだ。そのおかげで人間はハードウェア構造を知らなくても、処理に応じたリソース割当を行い、回路上のデータの行き来を制御して、高度な業務処理を行うことができている。しかしコンピュータの外のネットワークではこうはいかない。
 ネットワーク構築の際には、人間が構成図を描き、利用できる通信業者の回線を選び、現地でネットワーク機器を設置し、個別に設定を行い、テストをして、初めて運用開始に至る。これに要する時間は、単一業者があらかじめ用意したメニューを選ぶ場合でも最低数時間、複数業者のネットワークを経由する場合は数日~数週間、海外とのネットワークなら数ヵ月かかることもある。今後、クラウドサービスがますます普及し、モバイルコンピューティングが急速に拡大していくことを見越すと、これでは将来のニーズが満たせないことが明らかだ。
 そこで、あたかもPCがOSによってハードウェアレイヤを管理・制御するように、ネットワーク回線や機器を意識せずにソフトウェアで設計・制御・管理しようというのがSDNの考え方だ。SDNソフトウェアとそれに対応する(例えばOpenflow対応の)ネットワーク機器を利用すれば、物理的な機器設置状況や接続状態を人間が意識する必要がなくなり、障害や負荷状況に応じて柔軟に構成を変化させてサービスの品質を落とさない仕組みが出来上がる。その仕組みはすでに実用段階にあり、国内では日本通運のプライベートクラウドや金沢大学付属病院の院内ネットワークなどで大幅な運用管理コスト削減効果が見え始めている。グローバルな商用SDNサービスも世界に先んじて提供を始めた業者もある。学術ネットワークや大手データセンタを中心に海外でも適用事例が続々出てきている状況だ。
 しかし問題は、今のところSDNがデータセンタや企業内で閉じていること。様々なネットワーク、例えば無線や光ネットワークを含むネットワークや複数の事業者にわたるネットワークが介在する広域ネットワークを想定すると、利用する装置がそれぞれのネットワークで異なり、またネットワークの各レイヤで個別の運用管理システムが存在するため、設計・構築・運用のどのフェーズでも人手をかけて機器設置と設定を行わなければならず、回線・機器障害やサービスレベルの低下、サービスそのものの変更時などには技術者が個別に対応する必要がある。
 データセンタ内がいくら効率化しても、データセンタがそれぞれ個別の管理・運用を行っている限り、広域ネットワークの合理化・効率化は限定的だ。これを根本から変革するのがO3プロジェクトが開発する広域SDNだ。

1-2.O3プロジェクトが開発中の3つの基本技術

広域SDN実現のために同プロジェクトが開発しているのが次の3つの領域の基本技術だ。スタートから1年、各領域で成果が目に見えるものになってきている。

(1)ネットワーク管理制御プラットフォーム技術

広域SDN内のネットワークは異種ネットワークの存在を前提にしなければならない。SDN化されたデータセンタであっても方式はひと通りではないし、MPLSやGMPLSなどのルーティング技術を使うパケットトランスポートネットワークや、光コアネットワーク、無線ネットワークといったさまざまなネットワークで適切な情報収集と管理・制御を統一的に行う必要がある。
 そこで同プロジェクトでは、ネットワーク管理制御の中核として「ネットワークデータベース」を開発した。これは、広域SDNに参加するネットワークの全リソースを統一的なモデルで記述(仮想化/抽象化)してプールし、要求に応じて最適な組み合わせを導き出して割り当てることを目指すものだ。

図2 統一的ネットワーク情報データベース技術とリソース割当技術
図2 統一的ネットワーク情報データベース技術とリソース割当技術

資料提供:O3プロジェクト


図3 状況モニタの画面例
図3 状況モニタの画面例

資料提供:O3プロジェクト

このデータベースには、物理ネットワークの構成変更はもちろんのこと、機器障害や帯域の使用率、輻輳、遅延の程度などの物理現象のすべてがほぼリアルタイムに反映される。図3に状況モニタの一例を示すが、このように複数ネットワーク・複数レイヤにまたがる問題が簡単に特定できるところまで、今のところ開発が進んでいる。次年度以降はデータベースへの操作により物理状態を変更していく技術開発が行われる予定で、実現すれば複数ネットワークの自動構成や障害個所の自動迂回などが現実のものになりそうだ。
 なお、データベースにはGraphDBが使われており、それ自体は特殊なものではない。O3プロジェクトではさまざまなアイディアを取り込み、かつ技術をより広汎に利用できるようにするため、この領域の技術のオープンソース化を目指している。

(2)ネットワーク共通制御/管理技術

ネットワークデータベースがネットワークのいわば「OS」にあたるものとすれば、ネットワーク共通制御/管理技術は「ツール」にあたる。ネットワーク設計、構築、運用管理を簡単に行うためのソフトウェアモジュールだ。現在のところ、パケットトランスポートネットワークと光コアネットワークといった複数レイヤを連携させるモジュールと、例えばBGPによるルーティングが必須の既存ネットワークをうまく広域SDNに組み込むような、複数ネットワークの違いを吸収して連携させるモジュール、既存ネットワークを徐々にSDN化していく移行をサポートするための移行管理モジュールの3種が開発されている(図4)。この領域には今後も各社の強みを生かしたモジュールが取り揃えられていきそうだ。

図4 ネットワーク共通制御/管理技術のイメージ
図4 ネットワーク共通制御/管理技術のイメージ

資料提供:O3プロジェクト

(3)仮想化対応ネットワーク装置技術

以上の2つの技術で制御でき、しかも高い性能と品質を担保できるネットワーク装置の開発も同プロジェクトのカバーエリアだ。既存装置の改良や機能追加に加え、汎用的なサーバで基幹ネットワーク系にも対応できるレベルの性能を実現するソフトウェアスイッチやルータの開発が進められている。
 現在までに、10Gbpsフルサポート可能なソフトウェアスイッチ(SDNソフトウェア転送ノード)の実現(昨年NTTが発表済)、光コアノードのSDN化、10種類以上のサービス品質要求に応じたパケットトランスポートの提供を迅速化する制御技術とドライバ技術、オーバレイ方式のSDNのエッジスイッチのソフトウェア化が実現している。
 来年度にはLTEや5Gも視野に入れた無線ネットワークの仮想化対応も進められる予定だ。

O3プロジェクトの今後の展開と展望

同プロジェクトは今後の具体的な展開として「オープン化とグローバルなコミュニティ形成」「成果の国際デファクト標準化、グローバル展開」「実用化・製品化の推進」を挙げている。これらはすべて、日本製SDNソフトウェアの世界への波及を目指すものと言えるだろう。
 これまで日本発のソフトウェアが世界で受け入れられる事例はなかなかなかったが、この領域だけは別物。SDN実用化に一歩先んじているメリットを生かし、かつ日本独特のきめ細かさを盛り込んだ管理制御プラットフォームがオープン化されれば、国内はもちろん諸外国でも専用機器の購入やネットワークの大幅変更の必要なくSDN化が図れるようになる。専用ハードウェアではなく、簡単にコピー可能なソフトウェアなので、導入が簡単でカスタマイズも可能だ。
 ネットワークの管理・制御技術はいわばノウハウの塊。それが統一プラットフォームで共有されるようになれば、世界のネットワークのナレッジが集約できることにもなりそうだ。広域SDNにより、企業のネットワーク専門技術者に新しいスキルや技術が要求される時代が到来しそうだ。ネットワーク技術者の未来を創るか奪うか、大きな仕掛けとなるだろう。

取材協力 : 日本電気株式会社

取材協力 : NTT先端技術総合研究所

掲載日:2014年6月25日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2014年4月2日掲載分

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