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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
設備のオープンソース化へ向けた「OCP」

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは、サーバやストレージなどをはじめデータセンタ設備のハード仕様をオープン化する「OCP(Open Compute Project)」。来たるべきコンピューティング環境をユーザ視点で定義する1つの試みです。巨大データセンタを念頭にした最高効率のハードウェアとはどんなものか、気になりますね!

1.OCPとは

2011年にフェイスブック社の提唱でスタートした、仕様をオープンにしながら高効率で経済性が高く、環境負荷が少ないデータセンタファシリティ設計と提供を目指すプロジェクト。ITインフラ関連エンジニアのためのコミュニティにもなっている。日本でも2013年1月に「Open Compute Japan(オープンコンピュートジャパン/OCPJ)」が発足した。ITユーザの立場からデータセンタファシリティを考え直すオープンソースプロジェクトとして注目されている。

1-1.OCPの背景と目的

Facebookはご存知のとおりグローバルメジャーなSNS。現在では約10億1900万のアクティブユーザが利用し、写真やビデオなどの保管量は100ペタバイト超にも及ぶ超巨大事業だ(2013年9月時点)。しかし巨大な規模のIT機器の調達コストと電力コスト、発電の環境負荷、運用管理負荷は常に同社の課題だった。これがOCP発足の背景にある。

巨大データセンタの環境負荷に対する「Unfriend Coal」キャンペーン

2010年2月にフェイスブック社は米国オレゴン州Prinevilleへの巨大データセンタ建設計画を発表した。これに対し、国際環境NGOであるグリーンピースが抗議の声を上げた。同センタが必要とする巨大な電力を化石燃料による火力発電でまかなうことが環境破壊につながると主張し、「100%の自然エネルギー」を使うよう求める「Unfriend Coal(石炭と友達にならないで)」キャンペーンを開始したのだ。このキャンペーンは2011年4月にFacebook史上最高(当時)の1日あたり8万件のコメント数を記録、キャンペーン参加者は世界で70万人にのぼった。フェイスブック社はこの声に機敏に反応し、同年12月に「自社のすべてのエネルギーを自然エネルギーでまかなうことを目標とする」と発表するに至った。

環境負荷とコストの両面で革新的な設計を施したPrinevilleデータセンタ

このキャンペーンの最中の2011年4月にオープンしたのがPrinevilleのデータセンタ(図1)だ。環境負荷軽減を大きな目標の1つにして、大胆な外気導入システムと徹底的な省電力設計を施した。その結果、データセンタのPUE(エネルギー効率の指標/関連するキーワードの項参照)は当初1.08、現在では1.07という驚異的なものとなった。このデータセンタを外部に積極的に公開したことが、同社の環境対策を世界にアピールすることにつながった。

図1 フェイスブック社の米国オレゴン州Prinevilleデータセンタの外観
図1 フェイスブック社の米国オレゴン州Prinevilleデータセンタの外観

資料提供:OCPJ

これは同社による施設・設備の省エネ設計が、電力コスト抑制にも大きく貢献することも同時に実証した。世界中のデータセンタや大規模ITユーザが悩んでいるのが電力コストの削減だ。ネットワークやサーバ、建物のコストは年々低下しているのに、電力料金だけは増加傾向にある。そのネックを施設・設備の最適設計により解消できる道が示されたことになる。

高効率・低環境負荷・低コストな設計仕様のオープン化

Prinevilleデータセンタのお披露目で耳目を集めてからひと月も経たないうちに、フェイスブック社はさらに画期的な一手を投じた。それが前代未聞の「ハードウェアとデータセンタのオープンソース化」構想だ。
 これは、ソフトウェアの世界にオープンソースコミュニティがあるように、ハードウェアの世界にも国や企業の壁を越えてエンジニアが議論・協働できる場を作り、知的資産を共有しようという提案だった。データセンタの内部はたいてい秘密であり、カスタム仕様を明らかにするケースは極めて稀だ。しかしフェイスブック社はシステムベンダでもデータセンタ事業者でもない。インフラを秘密にしなければならない理由は少ないのだろう、自前の仕様をオープンにし、誰でもがそれをモデルとして利用できるようにした。
 その狙いは2つあるようだ。1つはシステム調達コストのさらなる低減だ。もともと同社は直接台湾などのメーカーにカスタム仕様のシステムを発注し、中間業者をなくしてコスト削減に努めていた。オープン標準に則ることでメーカーの参入機会を増やしてコスト最適化が図れる可能性がある。またもう1つは各機器のファームウェアアップデートなどのメンテナンスを単純化し、運用管理工数の削減をめざすことだ。
 しかし仕様公開による利益を自社で独占するのではなく、世界のITユーザやベンダで共有しようとしたところがポイントだ。同社は高効率なハードウェアやデータセンタのベストプラクティスをオープンコミュニティに提供する代償に、技術改善や追加に世界のエンジニアの知恵を集めて価値を高め、得られる利益も業界で共有したいと考えた。この考えにインテルやラックスペース、HP、デルなどの企業や個人のITインフラエンジニアが賛同し、2011年10月にオープンコミュニティであるOCPが発足することになった。

1-2.OCPによるオープン仕様のイメージ

OCPの発足以来、続々と仕様書やガイドブックが公開されている。以下に設計思想をうかがえるポイントだけ簡単に紹介しよう。

天板やフロントパネルのないサーバシャーシ

図2はPrinevilleデータセンタのサーバラックだ。OCP仕様はこのモデルを踏襲している。ずらりと並んだラックは横幅が21インチ(一般的なEIA規格のラックは19インチ)と少し大きめ。サーバシャーシには天板もフロントパネルもなく、ラックにはレールにはめ込む形で実装されているので、引き出せば中味が剥き出しの状態だ。
 ケーブル類やスイッチなどはすべて前面に配置されており、保守にあたってスタッフはラックの前面だけで作業できる。背面にあるのは冷却ファンのみで、ラックの前面はコールドアイル、背面がホットアイルになるように施設内に配置される。スタッフはホットアイルには足を踏み入れずに、すべての作業が行える。

図2 Prinevilleデータセンタのサーバラックとサーバの外見
図2 Prinevilleデータセンタのサーバラックとサーバの外見

資料提供:OCPJ

大規模データセンタでの運用管理スタッフは、1人で数万台のサーバを管理することもある。メンテナンスを最小限の手間と時間で行えるよう省力設計されているわけだ。

図3 3連構成のサーバラック
図3 3連構成のサーバラック

Server Chassis and Triplet Hardware v1.0

資料提供:OCP

3連サーバラックに90台のサーバを積載

OCPのサーバは現在7種類あり、ラックの仕様(OpenRackと呼ばれる)も一様ではないが、例えば3連ラック(図3)の場合には、42Uの高さがあり、最上段に2つのスイッチを搭載、それぞれに30台のサーバが入る。合計90台のサーバが1セットにできるわけだ。2つの3連ラックの間にはバッテリーバックアップキャビネットが置かれ、停電時にDC電源を供給するようになっている。新しいOpenRack仕様(v2)ではラック内にUPS装置を設けるなど主に電源周りの改良が検討されている。


マザーボードとサーバシャーシ

図4はサーバ用マザーボードとシャーシの例だ。細長いマザーボードを2枚、1つのシャーシにそれぞれ1本のネジで組み込むか、固定用の穴にはめ込む方式なので、簡単に交換可能だ。またHDDは3台が搭載でき、それぞれレール上をスライドさせて適正なドライブベイにはめ込める。冷却ファンや電源装置も同様に簡単に交換できる構造だ。高さはは1.5U程度。
 電源装置は入力は通常は交流277VA、停電時などのUPSからの入力は直流48Vが切り替えられ、出力電力は直流12.5V。95%という電源効率(一般的なサーバでは80%以上が目標にされている)を実現したユニットになっている。

図4 マザーボードのイメージとサーバシャーシの例
図4 マザーボードのイメージとサーバシャーシの例

図左はIntel Server in Open Rack Hardware v0.3、図右はServer Chassis and Triplet Hardware v1.0

資料提供:OCP

図5 Open Vaultストレージユニットの例
図5 Open Vaultストレージユニットの例

Open Vault Storage Specification v0.7

資料提供:OCP

ストレージユニット

またストレージ(Open Vaultと呼ばれる)用にもマザーボードやシャーシ仕様が公表された(図5)。これは1UサイズのHDDトレイを2枚重ねた(合計2U)もので、3.5インチHDDをトレイあたり15個(合計30個)搭載できる。2つのSAS拡張ボードがトレイごとにあり、冗長化した6個の冷却ファンが背面に配置されている。こちらもサーバ同様にOCP仕様のラックに積載してメンテナンスしやすいように配慮されている。なおアーカイブ用のストレージ(コールドストレージ)はこれとは別の仕様で策定される。
 これらのほか、ネットワーク、パワーサプライ、バッテリーキャビネットなどについても高効率なモデル仕様が公開されている。
 また、10万台以上のサーバをスケーラブルな環境で稼働させるには各種機器のファームウェアの効率的な管理が必要だとして、ハードウェアマネジメントについてもオープン標準化を進めている。これはオープンなDCIMへと発展しそうだ。


Prinevilleデータセンタのあらましも明らかに

さらにPrinevilleデータセンタそのものの仕様も公開された。電気面では前述のように高効率の277 V 交流電源と48V直流UPS システムが特徴だ。メカニカル面では気化冷却システムに注目したい。これは外気を取り入れると同時に排熱を水のカーテンをくぐらせて冷やし、データセンタ内部に送りこむという方式。データセンタの立地の季候条件にもよるが、空調に大電力を必要としない仕組みになっている。

図6 気化冷却システムのイメージ
図6 気化冷却システムのイメージ

Data Center v1.0

資料提供:OCP

2.日本でのコミュニティ誕生と今後

2-1.日本のコミュニティ「OCPJ」が発足

Prinevilleデータセンタオープン時に日本から訪れた鵜澤幹夫氏(現OCPJ副座長)は、フェイスブック社の"オープン性"に感服し、その考え方が「データセンタの常識を変えるもの」(鵜澤氏)と感じたという。OCP発足後、協働してドキュメント和訳に努めるうち、OCP側との信頼関係が深まり、2013年に「Open Compute Project Engineering Workshop」が開かれる運びとなり、OCPのCOOであるコール・クロウフォード氏らが来日してミーティングを開く運びになった。これには日本のインフラ系エンジニアなど100人以上が集合した。

 そして2013年1月、OCPの存在と意義を広報し、また日本からOCPへの貢献を行うべく「Open Compute Project Japan(OCPJ)」が設立された。座長には藤田龍太郎氏が就任、合計5人の発起人とともに国内企業や個人に参加を呼びかけ、現在では約50の組織や個人が参加している。現在では台湾や韓国にもOCPのコミュニティが立ち上がっているが、OCPJはこれらの国を含むアジア・パシフィック地域をリードする立場にあるという。

2-2.日本でのOCP仕様データセンタの可能性

ただし藤田氏、鵜澤氏ともに日本でのOCP仕様そのものの導入は「課題が多い」という。数十万台規模でサーバ入れ替えを行うデータセンタは日本には存在しない。またサービス事業者自身が設計や運用を行うよりもSIerが代行するケースがほとんどであり、例えば部品をストックして現場で自社スタッフが交換するようなメンテナンス体制がとれるかどうかも問題だ。大規模導入と自社スタッフによる運用管理及び工数削減があってこそ、コスト削減などの効果を手にすることができる。日本には現時点でそれができる組織は少ないのではないかということだ。
 現実的には利用できるところだけ、効果が期待できる範囲で実装することになるだろう。その際には、適合度合を判定し、「OCPサーティフィケイト」として認証する仕組みが必要になりそうだ。これについて、OCP、OCPJ、OCPTでも検討をしている最中だという。
 これまでデータセンタファシリティはデータセンタ事業者やシステムベンダなどが主導してきた。しかしOCPは利用者の立場からの最適設計を目指すものだ。これは次世代のデータセンタの1つの方向性を示している。IT業界はこれからよりいっそうグローバルな競争にさらされるはずだ。海外の巨大データセンタと国内とのギャップを理解し、競争、あるいは自社事業への利用を考えるために、OCPの設計思想と仕様を理解することには大きな意義がある。今後の必修科目の1つになりそうだ。
 以上、OCPのあらましを紹介したが、興味を持たれたら、OCPJ(http://opencomputejapan.org/)から提供されている和訳ドキュメントに目を通されるとよいだろう。さらに最新の情報やドキュメント(英文)はOCP(http://www.opencompute.org/)から入手できる。

取材協力 : オープンコンピュートプロジェクトジャパン

掲載日:2014年3月12日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2014年1月22日掲載分

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