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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
足跡も監視対象に「プレゼンスセンシング」

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは、床を歩く人数や方向、車椅子や動物までも見分けるシート型センサを利用した「プレゼンスセンシング」システム。電波を漏らさず、干渉も起こさず、広い範囲で柔軟なセンシングを従来の数十分の1以下のコストで実現(足圧センサとの比較)できると期待されます!

1.「プレゼンスセンシング」システムとは?

「誰かがそこにいる」「何かがある」ことを自動検知するのが「プレゼンスセンシング」技術。ユビキタスネットワークの一部としてセンサネットワークの発展が期待されているが、中でも防犯セキュリティや異常行動監視、障害者や高齢者へのサポートサービスなどの目的で、「怪しい誰かがそこにいる」「援助・介助が必要な誰かがそこにいる」といった情報を迅速に知らせてくれるプレゼンスセンシングは社会生活面での安全性や利便性に大きな貢献を果たすものと考えられる。
 これまで、プレゼンスセンシングには主に可視光/赤外線カメラや人感センサなどが用いられてきた。しかしそれぞれ課題がある。カメラでは顔をはじめプライバシーにかかわる情報まで記録されてしまうこと、人感センサでは「人がいる」ことは分かるが「何をしているか」までは捉えきれないことなどだ。特定の場所で「誰かが◯◯をしている」ことを、個人を特定する情報をなるべく取得せずに感知し、記録することは、従来の技術や製品では難しかった。 この課題に対する1つの解答として、「人の出入りを足跡検知で捕捉し、その形状やパターンで状態や行動を推測できる」センシング技術が生まれた。それが、2013年11月に日本電気が発表した「弱い電波」を利用した独自のセンサシートを使ったプレゼンスセンシングシステムだ。今回はこれについて紹介しよう。

1-1.プレゼンスセンシングシステムの仕組み

シートの上を人が歩けば、その右足・左足の足跡形状と位置がリアルタイムにモニタで画像表示され、しかも足の向きや大きさまでも特定できるという新しいセンシング技術が今回紹介するシステムだ。人間に限らず、犬・猫などの動物や、車椅子や杖などの物体、あるいは「車いすとそれを押す人」「右に行く人、左に行く人」というように、複数の人や物体、移動方向などを見分けることができる。カメラでもなく、赤外線センサでもなく、床に敷いたシートが上に触れるモノを検出・認識できるところが新しい。その仕組みは図1に見るとおりで、新開発のセンサシートを床の上(床の中でもよい)に敷き、ごく近距離だけ届く電波でシート上面を覆うようにして、モノの位置や形状による電波の乱れを感知、PC側の解析ソフトでセンシング状況を誰にでも分かる映像にしてリアルタイムにモニタできる。

図1 プレゼンスセンシングシステムのイメージ
図1 プレゼンスセンシングシステムのイメージ

資料提供:日本電気

2013年12月に行われたデモでは、2平方メートルのセンサシートの上を紙で覆い、その上をプラスチック板でカバーした状態で行われた。図2に見るように、人がシート上(机の前の白く見えている部分)を歩くと、その位置と形状が監視用モニタに映像化される。図2右側は、シート上で2人の人間が向い合って立っている状態を示している。画面のセピアで描画されているのが足裏の画像で、その上に乗っている青い四角は、その画像を「足」として認識したことを示している。

図2 センシングシート上を歩くとリアルタイムで映像化して何なのかを認識
図2 センシングシート上を歩くとリアルタイムで映像化して何なのかを認識

資料提供:日本電気

また図3は車椅子の人がシートに乗った場合の例だ。車椅子と介助者のプレゼンスがそれぞれ分かる。しかも車椅子であれば「車椅子の方がいらっしゃいます」、杖をついた人であれば「杖をついた方がいらっしゃいます」というように、状況を自動判断して表示やアラート、通知が可能だ。これにより、車椅子の人が介助者なしで施設内を通行している場合に施設スタッフに通知して、サポートや見守りを行うといった施設サービス改善につなげることができる。同じように、図4のように盲導犬を連れた人についても、人物と犬のプレゼンスと距離を判別し、「犬を連れた人」として認識することが可能だ。

図3 車椅子での通行の状況を認識
図3 車椅子での通行の状況を認識

資料提供:日本電気

図4 盲導犬を連れた人と犬のそれぞれの足裏を認識
図4 盲導犬を連れた人と犬のそれぞれの足裏を認識

資料提供:日本電気

検知できるのはシートの上に乗るモノ全般なので、図5のようにシート上に倒れこんだ人がいれば、床に触れている形状が分かり、その体勢も含めて状況が推測できる。もしも何か荷物を持ち込み、シートの上に置いたとすれば、その底面形状が分かるので、判断基準と通報機能をソフトウェアで作りこめば、「不審物あり」などといったアラート発報も可能になろう。

図5 倒れこんだ人の状態も認識
図5 倒れこんだ人の状態も認識

資料提供:日本電気

1-2.プレゼンスセンシング技術の利点は?

この新しいプレゼンスセンシング技術は、これまでのカメラや人感センサによる方法の課題をクリアし、また常時運用でのランニングコストの問題も解決してくれそうだ。
 特に足裏形状以外に人物を特定する機能はなく、プライバシー保護のための手続きなしに利用できる情報だけを取り扱えるところがポイントだ。また、床シートは極めて自然な通路として見せかけられるので、監視設備の存在に気づかれることなく自然にモニタできるところも、他の監視システムとは違う。例えば、シートセンサで人の侵入などを検知したら、それをトリガーにカメラや人感センサなどのセキュリティ設備をONにするといった合わせ技を使えば、プライバシーに関連する情報を常時記録することなく、リスクが大きいと思われる行動の場合だけ、人物特定も可能なカメラなどの監視システムをONにするといった、ランニングコストを抑えたセキュリティ強化に活かせそうだ。

広い範囲をカバーし、低コストなのが最大の利点

ここまでで医療用などに使われている「足の裏の圧力分布」測定システムを連想した方も多いと思う。非常に精密な足圧計測ができる圧力センサが市販されているので、それを敷き詰めればもっと精密なセンシングができるのではないか? それはそのとおりだ。ただしコストがまったく違う。デモで使っているセンサシートは、2平方メートルで10万円以下で市販される予定(2015年を予定)だ。これは、これまでの足圧センシングシステムに較べてコスト面では数十分の1、医療用足圧計測システムのセンサ部分と比較すれば少なくとも百分の1の価格になると開発者は言う。「素晴らしいセンサを何万円かで作ることはできますが、それではビッグデータの取り込みができる“ユビキタスセンシング”(センサネットワーク)など実現できません。1個1円といった値段でなければ無理なんです。しかしそこまで低価格なものは今すぐできないので、センサそのものでなく、システムとしてリーズナブルな価格で役に立つものを開発したいと考えました」(開発者・談)。そう思い立ってから3年前、ようやく研究開発が成功した。

2.プレゼンスセンシングシステムの技術と今後

このシステムの技術上のポイントは2つだ。1つは、電波によって人やモノのプレゼンスと形状を検知する技術。もう1つは、得られたデータを解析して「人間の足」「動物などの足」「車椅子の車輪」「杖」「倒れている人」などと判別する認識技術だ。

2-1.プレゼンスと形状の検知技術

まず検知技術で特筆すべき点が2つある。1つは検知に「弱い電波」を使うところ。図1のPCとセンサシートとの間に高周波発生装置を備え、発生させた高周波によりセンサシート上に設けられたセンシングポイント(2平方メートル中に数百ポイント存在)から常時シートの上面数ミリのところまでを覆うように電波を放出する。電波でありながら設定された距離以上には飛ばないようにコントロールして、他の機器との相互間での電波干渉などを起こさない仕組みになっている。このシート全体を覆っている電波は、その上を通行する人やモノによって乱れる。その乱れ方を検知し、データとしてPCの解析プログラムにリアルタイムに渡す。
 もう1つのポイントは、センシングポイントの配置パターンや密度が簡単なハードウェア操作で変えられることだ。例えば入口や出口周辺は密度を高くして鮮明なデータが得られるようにし、その部分以外はセンシングポイントをまばらに配置するといったことができる。ソフトウェアで制御することも可能だ。
 なぜ電波が遠くまで飛ばないのか、なぜセンシングポイントの配置が変えられるかはこの技術のキモとなっているが、特許申請の都合もあり現時点では秘密とのこと。2014年春には公開される予定だ。

2-2.データ解析、視覚化、認識技術

解析プログラムでは、得られたデータを2次元映像にプロットし、画像補間などのグラフィックス処理を駆使して鮮明化を行う。これにより、靴の形状、その向き、歩き方などが分かるようになる。その映像のパターンに対して「人である」「車椅子である」「女性である」「杖をついた人である」「犬である」というように情報を与えて機械学習させ、それをベースにデータを自動認識させる。デモで利用したシステムでの学習時間はわずか6分だったということだが、足の向きや車椅子、車椅子と介助者といった通行情報を見事に区別して見せた。学習さえ十分に行えば、「3人の人がいる」「そのうち右方向に向かう人が1人いる」「その人は子どもと思われる」というような情報を引き出すことが可能になる。

図6 データ解析~認識に用いられる画像鮮明化の例
図6 データ解析~認識に用いられる画像鮮明化の例

資料提供:日本電気

2-3.トイレの個室も監視!プレゼンスセンシングシステムの今後

今回紹介したセンサシート自体の厚みは数ミリしかなく、少々の歪みがある廊下や起伏のある通路などでも広い範囲で適用可能とのことだ。また固いプラスチックなどの材料で表面を覆うことができるので、耐久性、メンテナンス性もあるという。更に消費電力は2平方メートルで約10W/時間程度とのこと。従来の圧力センサを利用する場合に比べ、導入とランニングの両コストを抑えながら、これまではカメラ設置などができなかった部分への適用ができそうだ。実際には、高齢者福祉施設や病院等のフロアなどでの異常発見、立入禁止エリアへの不審者侵入有無や侵入者の動線の把握、特定エリアの混雑状況の把握などの用途を想定している。また、プライバシーの関係からカメラの設置が難しいトイレの個室などにも導入でき、個室内で倒れてしまったなど万一の際にも状況が検知できるようになるはずだ。

取材協力 : 日本電気株式会社

掲載日:2014年2月13日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2013年12月18日掲載分

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