本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > デジ・ステーション

デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
テイクオフ!“空の上”に浮かぶ無線局とは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは大災害時に孤立化した地域との通信を支える「無人飛行機による無線LAN中継」。軍用小型無人飛行機が、災害対策のための無線中継目的で初めて空を飛びました!

1.無人飛行機による無線LAN中継とは?

1-1.大災害で孤立した時、通信はどうなる? 無人飛行機が解決!

「某月某日、日本のある地域が突発的な自然災害に遭い道路が崩壊し、電力、有線/無線通信がともに途絶してしまった。有線電話はもちろん携帯電話やスマートフォンもつながらない。インターネットへの接続回線も失われ、外部への被災状況報告も安否情報発信もできなくなった。外部からの情報も入らず不安が募る中、やがて救援隊がヘリコプタでやって来た。救援隊は救援活動を始めると同時に、小型通信モジュールがついた三脚を広げて発電機につないだ。しばらくすると、孤立地域上空に小型の無人飛行機が現れ、地域上空を旋回し始めた。すると避難者のPCやスマートフォンの無線LANがつながりはじめた。インターネットとの接続が可能になり、地域外とのメールやSNS、音声通信サービスやWebカンファレンスシステムまでが復活した。これにより負傷者情報や安否確認情報、被災状況報告、救援物資要請など、あらゆる外部との情報交換が住民自身及び行政担当者らの手で行えるようになり、情報通信の面での孤立が解消されることになった……。
 これが、今回紹介する「無人飛行機での無線中継」を使った災害対応で想定するシナリオだ。

1-2.世界初の無線中継実験が成功

災害時に孤立地域で情報通信を確保する大切さは東日本大震災の折に痛烈に思い知らされた。有線電話網、携帯電話網、コンピュータネットワークがすべて機能しなくなると、残るのは防災用の無線システムやアマチュア無線などだけになるが、利用できる人が限られて自由な情報交換に難がある。そこで考えられたのが、無線LAN局を被災地に設置して、その上空を飛ぶ飛行機で無線通信を健全な通信ネットワークを持つ地点にまで中継する仕組みだ。この仕組みを独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が実際に開発し、実験に成功した。去る3月25~26日の2日間、仙台にある東北大学所有の造成地で、この無線中継システムの実験及びデモンストレーションが行われた。これは災害対策のための無人飛行機運用として、世界でも例を見ない試みだった。
 実験は図1のような形で行われた。被災して孤立化した地域に見立てたのが、黄色で表示されている「Wi-Fiゾーン」だ。PCやスマートフォンなどはいつも使っている無線LAN機能を利用してこの中の無線局(地上基地局)に接続できる。地上基地局は、小型無人飛行機に搭載されている通信モジュールとの間で無線通信を行う。この通信は、実験用に特別に許可された2GHz帯の周波数を使い出力2Wと比較的強め(一般の無線LANでは100mW以下)の電波を利用した。無人飛行機は、実験場所に隣接している東北大学青葉山キャンパス内の地上局との間で通信を確立し、既設の耐災害性の高い「メッシュネットワーク」(「関連するキーワード」の項参照)に接続する。このネットワークに接続できさえすれば、LANやWAN、インターネットへの接続ができるようになるわけだ。この接続がうまくできるかどうかが実験の焦点だ。

図1 無人飛行機による無線中継実験の概要
図1 無人飛行機による無線中継実験の概要

資料提供:情報通信研究機構

図2 孤立地域に設置される地上基地局
図2 孤立地域に設置される地上基地局

PCと下の箱は通信モニタ用

資料提供:情報通信研究機構

災害で孤立した地域に見立てた地点に設置されたのは、無線モジュールがついた三脚と電源のみ(図2)。これで地上基地局の完成だ。この実験では端末からの通信にはIEEE802.11bと11gの方式が使われたが、一般的な無線LAN方式なら何でも対応可能だ。このモジュールから半径百メートル圏内ならPCや他の端末の無線LAN機能による通信が行える。
 またそれから少し離れた地点が無人飛行機の離発着地点に設定され、そこには飛行機の制御用の無線基地局が用意された(図3、図4)。こちらもコンパクトで持ち運びやすくできており、手動操作には携帯用ゲーム機を少し大きくしたようなコントローラが使える。

図3 無人飛行機の制御用の地上局
図3 無人飛行機の制御用の地上局

資料提供:情報通信研究機構

図4 無人飛行機の制御用地上基地局(左)と制御コンソールとなる装置
図4 無人飛行機の制御用地上基地局(左)と制御コンソールとなる装置

資料提供:情報通信研究機構

図5 使用した小型無人飛行機
図5 使用した小型無人飛行機

資料提供:情報通信研究機構

使用した無人飛行機(図5)は、アメリカ製の軍用小型無人飛行機だ。翼長は2.8m、重さは5.9kgと、簡単に1人で持ち運びができるようになっている。驚くのは離着陸の方法だ。電源を入れてプロペラが回ったら、手持ちのまま放り投げて飛ばす(図6)ことができる。少し開けた場所なら、滑走路も何もいらない。また着陸の仕方は、ただ失速させるだけだ。落ちる場所は安全が確保できさえすればどこでもよい。いわば墜落させるわけだが、プロペラは折りたたまれ、両翼や尾翼は衝撃によって本体から外れるようになっており、しかも丈夫な「ケブラー樹脂」という素材でできているため、それでも壊れないのだ。

図6 無人飛行機の飛ばし方
図6 無人飛行機の飛ばし方

資料提供:情報通信研究機構

図7 無人飛行機の「本体」
図7 無人飛行機の「本体」

資料提供:情報通信研究機構

図8 無人飛行機の翼(取りはずしが可能)
図8 無人飛行機の翼(取りはずしが可能)

資料提供:情報通信研究機構

図9 上空を飛ぶ無人飛行機
図9 上空を飛ぶ無人飛行機

資料提供:情報通信研究機構

最初の飛行は3月25日の午前10時頃に開始された。「放り投げ」られた飛行機はプログラムされた想定孤立地域に見立てた地点まで順調に飛行し、高度400m付近を100mほどの半径で2時間弱ほどの間、旋回し続けた。
 その通信の接続状況は、専用に作られたモニタ用プログラムによってリアルタイムに観察された(図10)。左側で研究者が指さしているのが飛行機の位置であり、ピンク色の線は通信のリンク状況を示している。リンクが確立したら線が現れ、断絶したら線が消える。実験では想定どおりの接続が確認できた。通信速度は500kbps程度まで可能で、最大通信可能時間は搭載バッテリの制約から1時間半程度だった。

図10 無人飛行機の位置とネットワークのリンクのモニタ
図10 無人飛行機の位置とネットワークのリンクのモニタ

資料提供:情報通信研究機構

無人飛行機は3台購入され、うち2台を同時に飛行させて、機体間で通信をホップさせる実験も行われ、成功した。無人飛行機による中継が可能な距離はおよそ4~5kmだが、飛行機間での中継が行えれば、その距離が約2km程度拡大できる。
 また無線中継実験だけでなく、例えば被災情報の上空から確認などが行えるよう、カメラによる撮影の実験も合わせて行われた(図11)。

図11 無人飛行機からの映像を映し出すコントローラ(左)と飛行機本体のカメラ(右)
図11 無人飛行機からの映像を映し出すコントローラ(左)と飛行機本体のカメラ(右)

資料提供:情報通信研究機構

準備期間も合わせると合計5日にわたって何度も飛行が繰り返され、想定されたとおりの結果を示して実証が終了した。

2.無人飛行機による無線中継のポイントと課題、応用

2-1.無人飛行機の特徴と開発された通信モジュールの特徴

この方法の主役は、何と言っても軍用小型無人飛行機だ。実験で使われたのはアメリカのエアロバイロンメント社製の「Puma-AE」という機種(「関連するキーワード」の項参照)。人が持ち運べて、滑走路などの施設が不要、コンピュータ制御で自律飛行できるという特徴がある。リモコンのヘリコプタや飛行機など国産製品も当初は検討されたが、安全性や騒音などの面で劣るため、高額ではあったが軍用の製品が選ばれた。このような飛行機が飛ぶのは日本では初めてのことで、各種の法規制があるため許可申請がたいへんだったという。無人飛行機は現在のところ3機のみだが、実用化にあたっては機体を増やして柔軟に運用できる体制を作る必要がある。それにより通信距離・通信範囲の拡大や通信速度の高速化が図れるが、飛行機同士及び地上との通信共用に関する問題が出てくる可能性がある。これらの点の解決がこれからの課題だ。法的な面での整備も必要になりそうだ。
 なお、機体に搭載する装置には重さ500g程度、サイズは10cm角程度という制限がある。今回の開発では長時間使用可能な通信モジュールとバッテリをこのサイズと重さに収めることに力が注がれた(図12)。通信時間は想定以上の結果が出たものの、今後は更に長時間通信できるモジュールの開発を目指すという。

図12 無人飛行機内の装置収容スペース(左)と今回開発の通信モジュール(右)
図12 無人飛行機内の装置収容スペース(左)と今回開発の通信モジュール(右)

資料提供:情報通信研究機構

2-2.無人飛行機の応用領域

この研究は総務省平成23年度補正予算「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発」によるものなので、大規模災害時の孤立化防止が主眼とされたが、無人飛行機の用途はそれにとどまるものではない。カメラをはじめ各種の計測装置などが搭載できるため、有人飛行機やヘリコプタではできない火山活動観測をはじめ、大規模な火災の観測、大気や水の汚染状況の観測、農作物の生育状況の確認、魚群の探知など、様々な可能性が考えられる。

取材協力 : 独立行政法人情報通信研究機構

掲載日:2013年6月12日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2013年4月17日掲載分

検索

このページの先頭へ