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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
日米間通信が30倍高速に!UNAPとは

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「新データ転送方式・UNAP(ユーナップ:開発コード名)」。ソフトウェアだけでアメリカまでの通信ならスループットがなんと30倍に!?いったいどんなヒミツがあるのでしょうか!

1. UNAPとは?

「UNAP(Universal Network Acceleration Protocol)」は今年1月に富士通研究所が発表した新しい通信プロトコルだ。同社の特許技術が利用されたこのプロトコルを利用すれば、従来「WAN高速化装置」が担ってきたような長距離通信高速化をソフトウェアだけで実現できるようになる。大容量のバックアップの時間短縮や、ストレスのない仮想デスクトップ利用、モバイル端末からの通信の高速化が期待できる。

1-1. 従来のTCPの弱点とは?

UNAPが改善するのは通信の中でもTCPが規定している送信側と受信側のやり取りの部分だ。この世の通信の9割以上が今やTCPだと言われるほど普及しているプロトコルなのに、「改善の余地あり」とはどういうことなのか。まずはそこから説明していこう。

TCPを利用すると長距離通信で遅延が起こりがち

TCPはIPデータをはじめとする通信データを確実に相手先に送り届けるためのプロトコルだ。「確実に」というところが肝心で、万全を期すために「接続確立」「フロー制御」「輻輳制御」などの仕組みを持っている。
 その仕組みの処理に時間がかかるのが問題だ。特に困るのはインターネット上でパケットが失われた時の対応だ。なくなったパケットは送り直してもらい、受信済みのパケットと合わせて順番どおりに組み立てる必要がある。そのためには通信中、常に送達確認を行わなければならない。また送信順どおりには届かないパケットを送信時の順番に直したり、相手先やネットワークの状況変化に応じて送信量を落としたりといった仕事もある。そうした処理の多さで遅延が起きてしまうのだ。ネットワークの距離が長いとパケットロスも大きくなるので遅延が深刻化する。

1-2. 遅延を起こさずに通信するUDPとは?

それならTCPのように遅延を起こさないUDPならどうだろうか。UDPはTCPよりもはるかに簡単な処理しかしないので、ずっと高速に通信できる。そのシンプルさはプロトコルヘッダをみれば一目瞭然だ(図1)。

図1 TCPヘッダ(左)とUDPヘッダ(右)の例
図1 TCPヘッダ(左)とUDPヘッダ(右)の例

このようにUDPはいわば「送りっぱなし」のプロトコルで、パケットロスも順序も管理しない。確実性を犠牲にしても、高速・リアルタイム性が重要な音声通話や動画配信などで使われている。しかし業務データを伝送するにはリスクが大きい。
 更にもう1つ別の問題もある。TCPにはあるフロー制御(通信量の制御)機能がUDPにはないので、UDP通信がTCP通信とネットワークを共用していると、TCP通信を押しのけるように帯域を占有してしまうことだ。TCPで交わされる多くの通信が一部のUDP通信によって悪影響を受けてしまうのは困る。

WAN高速化装置やストレージへの伝送効率化は実現したが課題は残る

TCPでは遅延がつきもの、UDPでは確実性と帯域占有の問題が......という課題を前にして、これまでとられてきた解決法の1つは、TCPの範囲内でパラメータを最適化したり、データを圧縮したり、途中でデータキャッシュを行ったりといったTCP高速化策だ。「WAN高速化装置」はこれらを実現している。これを送信側と受信側に設置すればよいが問題はコスト。数百~数千万円という高価な装置が多いので簡単には導入できない。またモバイルPCやスマートデバイスには搭載不可能だ。
 もう1つの解決法はストレージ装置へのデータ転送に限るもので、データ圧縮や重複排除によって高速化が可能だ。しかしデータ通信に汎用的には使えない。

2. UNAPの仕組みは?

TCPとUDPそれぞれの限界を前に世界の技術者が悩む中、富士通研究所では、以前研究していたHDDのエラー訂正に関する技術や符号理論の蓄積を生かし、UDPにたった2つの「番号」を加えるだけでTCP同様の信頼性とUDP同様の高速性が実現できることを発見し、このたび実証した。そこには3つの新しい技術が盛り込まれている。

品質の悪い通信環境においてスループットと遅延時間を改善する新プロトコル(UNAP)

ネットワーク空き帯域のリアルタイム計測による通信帯域制御技術

既存のTCPアプリケーションに手を加えずに性能を大幅に改善する方法

以下に順に説明しよう。

2-1. UDPにプラスした「パケット番号」「データ番号」が再送を効率化

同社がまず開発したのはUDPでもパケットロスが発生したらそれを検知し、届かなかったパケットについて送信元に再送要求を行い、再転送を行うための高速で軽量なプロトコル(UNAP)処理だ。これをソフトウェアで組み込み、モバイル端末でも十分な性能で処理できるように作り込んだ(特許技術)。このソフトウェアを前提にすると、図2のように損失したパケットの再送が合理化する(図2)。

図2 UNAPのパケット再送の仕組み
図2 UNAPのパケット再送の仕組み

資料提供:富士通

図2の左側のようにUDPプロトコルのペイロード先頭に「データ番号」のフィールドを設けて管理する試みはこれまでにもあった。しかしそれだけでは再送パケットが届くまでの間、受信側は再送要求を何度も続けてしまう。送信側としての対応は2通りになる。パケットが途中でロスしたと判断してすぐに再送するか、ネットワーク遅延の影響だと判断して再送を少し待つかだ。前者の場合、無駄な再送を何度もしてしまう可能性があり、後者の場合は余計な遅延を引き起こす。
 そこで同社はもう1つ「パケット番号」を加えることにした(図2の右側)。「データ番号」はパケットの順番を示し、「パケット番号」は再送分も含めて全パケットの送信順を示すようにしたのだ。これならパケット番号とデータ番号がともに「3」のパケットが届かない場合に、受信側は「パケット番号4を受け取っているが、データ番号3のパケットを送って」と再送要求できる。送信側は、パケット番号を5にしてデータ番号3のパケットを再送する。そのあとまったく同じ再送要求が来たら、それはネットワーク遅延が原因だと判定できるので無視すればよい。基本的にはこのシンプルな方法で、時間がかかりがちな再送制御が行えるので高速化できるというわけだ。

2-2. ネットワーク占有の問題はリアルタイムの帯域制御で克服

UDPのもう1つの課題である帯域占有に対しては、ネットワークの空き帯域を小さなUDPパケットの伝送状況計測によって常に測定し、空き帯域の大小に応じてUNAP通信の帯域利用率を制御してTCP通信の帯域を圧迫することがないようにした。これもソフトウェアでの処理だ。

2-3. 既存のTCPアプリケーションがそのまま使える

さて、この新プロトコルをどうアプリケーションに組み込むかが問題だ。既存のアプリケーションはTCP通信前提で作られているものが多く、手を加えるとしたらたいへんだ。しかしその心配はない。遅延が問題になるのは主にWANだ。そこに適用してこそUNAPの良さが生きる。こう考えると、LAN内では従来どおりTCPを利用しWANを介する通信だけをUNAPにすればよい。ゲートウェイからWANに出ていくまでの間にプロキシサーバを置き、そこでTCPをUNAPに置き換える変換ツールを稼働させておけば、アプリケーションには何も手を加えずに外部との通信が高速化できる。
 WAN高速化装置をご存知の方は、そのハードウェアがプロキシサーバに置き換わると考えればよい。その場合の構成イメージ図を描くとすればほとんど違わないが、かかるコストが大違いだ。更にソフトウェアであることの利点を生かして、設置位置を柔軟に変更することも可能だ。

2-4. 日米間通信がTCPから30倍高速に!高速化効果

このような技術を利用した結果、日米間で国際専用線を利用した1TBのデータのバックアップのケース(帯域4Gbps、遅延100ms、ロス率0.1%)でTCPの場合23時間かかるものが、UNAPでは40分にまで縮まり、30倍もの高速化が行なえた。また同様のネットワークで仮想デスクトップを利用した場合、遅延時間は3秒から0.5秒に短縮した。これは6倍の高速化だ。
 スループットの向上と遅延時間の短縮のシミュレーション結果を図3に示す。ネットワーク品質が悪ければ悪いほど、相対的に改善効果が高いことが分かる。

図3 TCP通信とUNAP通信のスループット、遅延時間の比較
図3 TCP通信とUNAP通信のスループット、遅延時間の比較

資料提供:富士通

2-5. UNAPの応用領域は?

有望な適用領域の1つは、モバイル端末でのネットワーク経由の仕事の効率化だ。WiMAX(条件:帯域20Mbps、遅延150ms、ロス率0.1%)でTCPとUNAPを比較すると、1MBサイズのデータ転送時間が5秒から1秒に短縮した。5倍の高速化は体感的にはとても速く感じるはずだ。また3G回線(条件:帯域14Mbps、遅延320ms、ロス率0.5%)でTCPとUNAPを比較すると、1MBサイズのデータ転送時間が16秒から6秒に短縮した。コンパクトなサイズで処理も軽いUNAP通信用のツールならスマートフォンなどにも容易に導入できる。
 また遠く離れた場所から仮想デスクトップで業務を行うことも現実的になるだろう。実際、マウスを動かしても画面に反映されるのにひと呼吸が必要になるというのではなかなか仕事する気にならない。サクサクとした操作感が実現すれば、仮想デスクトップ導入を検討する企業も増えそうだ。
 もう1つは遠距離間のシステムやデータセンタの高速連携だ。大容量データの転送がラクになることから、バックアップのみならずさまざまな業務システムの遠隔地間での連携が改善することが考えられる。

「確実性があっても遅くなる」TCPと、「速いけれども信頼性がない上、他の通信の邪魔をする」UDPの長所を採り込み短所を削ったのがUNAP。同様に通信を高速化する技術として以前にも同社ではRPS(Random Packet Stream)という消失パケットの自動生成機能を持つファイル転送エンジンを開発していた。また他社でもさまざまな角度から高速化を追求している。今後グローバル化とデータの大容量化がますます進む中で、通信高速化の技術動向にはますます注意が必要だ。

取材協力 :富士通株式会社

掲載日:2013年5月 8日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2013年3月19日掲載分

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