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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
ホワイトスペースを狙え!IEEE802.11afとは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは新しい無線LANの国際規格「IEEE802.11af」。 日本の独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が世界に先駆けて最新暫定規格(IEEE802.11af Draft 2.0)に基づく、TV放送周波数帯の空きチャネル(ホワイトスペース)を利用した通信の実証実験に成功しました!

1.スーパーWi-Fi無線LANの限界を突破!?「IEEE802.11af」とは何か?

無線LANの新しい標準規格。従来の無線LAN規格の限界を突破する「スーパーWi-Fi」と呼ばれる2つの規格の1つ(もう1つはIEEE802.22)だ。現在はDraft 2.0が公表されている段階だが、このたびNICTが暫定規格に準拠した「アクセスポイント」と「端末」を開発し、実証実験に世界で初めて成功した(2012年10月)。

IEEE802.11afのどこが「スーパー」なのか?

●急増する無線通信トラフィックを既存無線帯域に合理的にオフロード(分散)して帯域を有効活用できる。

●UHF帯の周波数を利用できるので伝送距離に優れ、障害物を迂回・透過して通信しやすくなる。

●隣接するアクセスポイントの利用チャネルを自動的に振り分けて干渉を回避できる。

モバイル通信の月間トラフィックはこの1年で2.13倍に急増しており(総務省・9月公表資料)、この調子でいくと10年後には少なくとも数百倍から千倍になると予想されている。現在でも都市部の公衆無線LANサービスではつながりにくさや遅延に悩まされることが多いのに、これ以上無線LAN端末が増えると使いものにならなくなりそうだ。その悩みを解消するための取り組みの1つがIEEE802.11afだ。その最大の特徴は、他の目的に利用されている周波数帯域の中にある隙間(ホワイトスペース)を利用して通信を行うこと。先ごろ米国の通信業者がテレビ放送のホワイトスペース(TVホワイトスペース)を利用する「スーパーWi-Fi」サービスを米国内で提供し始めた。「長距離伝送できる無線ブロードバンド」をうたっているが、本当のところはどうなのか関心が高まっているところだ。ともあれ、ここではNICTが開発、実証実験したIEEE802.11af準拠製品の仕組みについて説明していこう。

電波の隙間(ホワイトスペース)とは?

電波の周波数帯域は細分化されていて、総務省がそれぞれの周波数帯域の利用目的を規定している。例えば今利用されている無線LAN規格(IEEE802.11b/g/n/a)では2.4GHz帯と5GHz帯を使っているが、かなり狭い領域であるとともに他の用途の無線とも重なり合う部分がある(図1上・中)。ところが一方で実際には使われていない領域が多い割り当てもある。TV放送のための領域だ。現行のTVは470MHz~710MHzまで13~52チャネル(6MHz刻み)が利用できる(図1下)。周波数帯域割り当てに空きはないが、地域ごとに細かく見てみれば、実は使われていないチャネルがかなりある。例えば13番チャネルは全国各地でよく使われているが北海道の小樽など地方では空きチャネルになっている場合がある。52番チャネルとなると使われている地域のほうが少ない。そうした地域ごとの空きチャネルが「ホワイトスペース」だ。
 それなら、そのホワイトスペースを上手に使って無線LANを通そうというのが、IEEE802.11afの主旨だ。狭い通路で人通りが滞るなら、それを解消するためには通路を広げるか、新しい通路を作るかすればよい。IEEE802.11afは、今後ますます混み合う2.4GHz帯と5GHz帯の通路を迂回できるように、UHF帯のホワイトスペースという新しい通り道を作るものだ。一部のトラフィックであってもオフロードできれば、全体として通信の接続性や速度の維持・向上につながるはずだ。

図1 2.4GHz帯、5GHz帯近傍の周波数の利用帯域(上・中)とTVが使用する周波数帯域(下)
図1 2.4GHz帯、5GHz帯近傍の周波数の利用帯域(上・中)とTVが使用する周波数帯域(下)

※710~770MHzのTV放送業務による使用は2012年7月24日まで(岩手県及び宮城県の区域においては、2013年3月31日まで)。青色の空欄は2012年7月25日から携帯電話で利用されている領域。

資料提供:総務省「使用状況の詳細(平成24年4月現在)」

ホワイトスペースを割り出し、通知する「ホワイトスペースデータベース」

ホワイトスペース通信でまず問題になるのは、端末がある地点でどのチャネルがホワイトスペースなのかを割り出すことだ。無線LANの電波が、本来の利用権があるTV放送に影響(干渉)するのは絶対に避けなければならない。そのためにはまず、放送局のアンテナと端末間の距離や地形、標高差、出力強度などの要素から、TV電波の使用状況を算出し、どの地域でどのようにTV放送のチャネルが利用されているかを把握する必要がある。
 NICTでは日本の放送局の諸元に基づき、ホワイトスペース実用化で先行する米国FCC(Federal Communications Commission・連邦通信委員会)の基準をベースに電波利用状況がシミュレートできるホワイトスペースデータベースを作成した(2012年5月発表)。
 図2はTVの13番チャネルを利用している放送電波の状況を示すシミュレーション結果だ。同一チャネルの電波が互いに重なり合いながら面的に広く覆っていることが分かる。東京周辺や近畿地方ではホワイトスペースはほとんど見当たらない。図の右側のペインには、今アクセスしている端末の位置でどのチャネルが空いているのかが○×で示されている。これは東京都内のある場所の場合だが、14、16番チャネルなど8つの○印が画面上に見える。これらがホワイトスペースだ。

図2 米国FCC規定に基づくTVホワイトスペース判定シミュレータの画面例
図2 米国FCC規定に基づくTVホワイトスペース判定シミュレータの画面例

放送エリアが赤く示されている。この図は13chの状況。

資料提供:NICT

同じように52番チャネルの電波使用状況を表示したのが図3だ。赤い部分は大幅に少なくなり、ホワイトスペースが多くなっていることが分かる。

図3 米国FCC規定に基づくTVホワイトスペース判定シミュレータの画面例
図3 米国FCC規定に基づくTVホワイトスペース判定シミュレータの画面例

放送エリアが赤く示されている。この図は52chの状況。

資料提供:NICT

IEEE802.11afの利用において前提になるのがこのホワイトスペースデータベースだ。ただし、現段階では研究用のシステムであり実際の検証はこれからだ。特に日本の地理は複雑なのでFCC基準がそのまま適用できるとは考えにくく、細かい条件を慎重に取り入れて計算法を検討する必要がある。山などによる電波の影を考慮できれば、FCC基準を単純に適用した場合よりもホワイトスペースが増える場所もあるのではないかと考えられている。

2.IEEE802.11af(Draft 2.0)準拠のアクセスポイントと端末の用途とメリット

今回(2012年10月)NICTは、このホワイトスペースデータベースと、新開発したIEEE802.11af(Draft 2.0)準拠のアクセスポイント(図4)及び端末を用いて、ホワイトスペース通信の実証実験に成功した。

図4 IEEE802.11af(Draft 2.0)準拠のアクセスポイント
図4 IEEE802.11af(Draft 2.0)準拠のアクセスポイント

資料提供:NICT

このアクセスポイントは、TVホワイトスペースを利用するIEEE802.11af Draft 2.0準拠の通信モジュールに加え、従来からの無線LAN規格IEEE802.11a/b/g/n に対応する通信モジュールも搭載している。LTE、WiMAX、PHSのような通信モジュールをUSBで接続すれば、インターネットへの接続が可能になる。
 またアクセスポイントと端末には、複数の端末がアクセスポイントと通信する時に、お互いに干渉して通信品質が劣化しないよう、RLSS(Registered Location Secure Server)という干渉防止用ローカルサーバを用いて各端末を別のチャネルで動作させる仕組みも盛り込んだ。これにより、例えば同じ部屋の中に複数台の端末がある時、それぞれの端末からの通信が干渉し合わないようにチャネルを自動的に割り振り、通信品質の劣化を防ぐことができる。

ホワイトスペース通信による従来の無線LAN通信のオフロード

このアクセスポイントと端末を用いて、IEEE802.11af Draft 2.0準拠のホワイトスペース通信が無線LANトラフィックのオフロードに本当に利用可能なことを実証したのが今回の実験だ。この実験により、図5に示すような無線ネットワークが従来よりも効率的に利用できることが示された。

図5 ホワイトスペース通信による無線LANトラフィックのオフロードのイメージ
図5 ホワイトスペース通信による無線LANトラフィックのオフロードのイメージ

資料提供:NICT

ホワイトスペース通信が行われるのは、図の緑色の線(接続)だ。
 図の左上の従来型無線ネットワークでは、端末すべてが従来の無線LAN規格によってアクセスポイントと通信しているために、無線LANシステム間で干渉が発生してしまう。その一部を図左下のようにホワイトスペース通信に替えることができれば、干渉は解消できる。
 また、広域で無線LANシステムを形づくる場合には、図の右側のように複数のアクセスポイントを無線でメッシュ接続する必要がある。この場合、端末とアクセスポイント間及びアクセスポイント相互間での通信が同じ帯域を使っていると、干渉が起きやすくなってしまう。このうちアクセスポイント相互間の通信をホワイトスペース通信に置き換えれば、同じ帯域での通信の混雑・干渉を防ぐことができる。
 ホワイトスペース通信なら他の装置との干渉も少なく、アクセスポイント同士のメッシュ接続が容易になるため、インターネットなど別のネットワークへの接続ゲートウェイの数を少なくできる。これにより通信のオーバヘッドが軽減し、通信に要する電力の削減も期待できることにもつながる。

今後の展開

IEEE802.11afの規格策定完了は2014年が目標だ。NICTは規格策定にも参画しており、標準化活動のかたわら日本での実用化を目指しホワイトスペースデータベースを更に緻密なものにしていく予定だ。実証実験のシステムには電波伝搬シミュレータを連携させており、常に実際の電波状況の計測が行えるようにしている。今後は様々なホワイトスペース算出法を試行した結果の計算値と、詳細な電波伝搬シミュレーションや実測値との比較を行いながら、最適な計算方法を探索していくことになる。日本の地形や利用形態の特徴にも対応できるように、より精密な算出方法の確立を目指す。
 総務省ではホワイトスペース推進会議が「ホワイトスペース利用システムの共用方針(平成24年1月24日付)」をとりまとめ、ホワイトスペース利用の方向性を示しているが、主にエリア放送やラジオマイクの用途について述べられており、無線LAN通信に関してはこれから議論が重ねられることになるだろう。

さて、果たしてIEEE802.11afは日本でも「長距離伝送できる無線ブロードバンド」として実用化できるだろうか。日本では連続するTVホワイトスペースがとれる可能性は米国に比べて少なく、地理・地形上の問題もあって伝搬距離は数百メートル程度のようだ。帯域幅が1チャネルあたり6MHzと狭いので、1チャネルだけの使用だと速度は最大でも20Mbps程度だ。しかし、複数のチャネルを同時に使用する方式も検討されており、その場合にはより高速な通信も期待できる。今後どのような制度化が行われるかは未知数だが、上述のようにUHF帯だからこそのつながりやすさがあり、またメッシュ構成技術などを導入すれば、快適な無線通信のためのインフラ強化に役割を果たすことは確かなようだ。
 いずれにせよ商用製品の登場までは少なくとも2~3年はかかりそうだ。海外での実用化や普及の状況をにらみつつ、国内の研究の進展や実証実験の次の発表を待ちたい。

取材協力:独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)

掲載日:2013年2月13日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2013年1月9日掲載分

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