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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
印刷した紙が真っ白に!消せる複合機とは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは複合機で印刷した紙のトナーの色を消し、紙の再利用を可能にする新しい仕組みです。1分に30枚という速さでトナーを消色し、紙を5回も再利用できます。省エネはやりつくした…という企業でも、こんなエコ技術はまだのはず。必見です!

1.瞬時に印刷が“消せる”複合機とは

熱を加えると透明になる特殊なトナーを利用する複合機。この複合機で印刷した紙は、専用の消色装置に入れると即座にトナーが消色されて白くなり、そのまま新しい紙として複合機にセットすれば上書きして再利用できる。東芝テックがこのたび製品化に成功した。

1-1.色が消えるトナーとは?

写真1は、この複合機で印刷した結果の紙だ。今のところ青色のトナーのみなので、見た印象は昔の「青焼き」(ジアゾ式複写)プリントのようなイメージだが、白い部分はあくまで白く、色が乗っている部分では濃淡の表現も含めてコントラストが明快で、目視で分かるようなぼやけはない。もちろん使用しているのは一般的なコピー用紙であり、紙自身に特殊な加工などはされていない。
 写真2は、印刷した紙を「消色装置」を使用してトナーの色を消したものだ。一見したところ、新品のコピー用紙にしか見えない。しかし目を近づけて斜めから光を当てるようにすると、写真からはよくわからないが肉眼ではわずかに文字や図形が透明に盛り上がって見える。消色装置はトナーを取り除くのではなく、トナーの色をなくすものなのだ。トナーそのものは透明になってはいるがまだ紙の上に残っていて、光の反射によってかすかに分かる。とは言え、最初から「何かある」と思って見なければなかなか気づかないだろう。

写真1 特殊なトナーで印刷した紙
写真1 特殊なトナーで印刷した紙

資料提供:東芝テック

写真2 消色装置でトナーの発色を消した紙
写真2 消色装置でトナーの発色を消した紙

資料提供:東芝テック

1-2.これまでの「消色技術」

実は東芝テックが「印刷紙の再利用システム」実用化にチャレンジしたのは今回が2回目だ。以前の開発は9年前にさかのぼる。このときの方式は、「消えるインク」(e-blue)を使うものだった。これは通常の色素と発色剤の他に消去剤を加えた特殊なインクだ。このインクで印刷した紙に熱や溶剤を加えて分子振動を発生させると、色素に結合している発色剤が切り離されて消去剤に結合し、色素が無色化して紙が白くなるという仕組みだった。
 このときの消色装置は400~500枚の印刷紙をセットできる書類箱のような形をしていた。そしてセットした紙を加熱すること2時間、冷却に約1時間、合計3時間ほどで紙が無色化した。これは画期的な技術ではあったが、1分あたりに換算して2~3枚のスピードでの消色では運用性に難があり、装置コストや電気代を考えると経済面でも課題が多かった。
 しかし、同社の開発陣の胸には「紙の再利用の道を開いた」自信がしまい込まれた。いつかは課題を克服し効率のよい消色技術を開発してやろうと、その後も多くの試行錯誤を含む研究開発が続けられた。その努力のさなかに、文房具の分野で注目すべき新素材が生まれていた。パイロットの「消える筆記具」フリクションボールペンのインクだ。

1-3.「フリクションインキ」をトナーに応用

フリクションボールペンを使ったことがある方は多いだろう。2007年に日本で発売されたこの製品は、書いた文字をペンの後端部に付いているラバーでこすると消えてしまう驚きの特徴を持っていた。消しゴムのようにインクを剥がし落とすのではない。ラバーで紙をこすることで発生する摩擦熱(65℃以上)で特殊な「フリクションインキ」を無色化してしまうのだ。
 このフリクションボールペンは発売早々に東芝テックの開発陣の目に止まった。開発陣はさっそく同ボールペンを400本購入、インクを抜いてトナーとしての利用可能性を実験した。「これは使える!」。そう確信した開発陣は、パイロットとの共同開発を提案した。パイロット側では思わぬ使い道の発見に喜び、かつまたいち早く実験を済ませていたことに驚いて、早々に提携が実現したという。それから2年をかけて要素技術を共同開発し、更に2年の商品開発を経て、今年11月の商品発売発表に至った。
 開発の課題は大きく2つあった。1つは液体状のフリクションインキを粉状のトナーに加工することだ。これには東芝テックのこれまでのトナー生産技術が生かされた。もう1つの課題はトナーの定着に従来のような高温を用いることができないことだ。これに対しては印刷機構を新しく設計し、「業界内では飛び抜けた低温」でトナーを定着できる技術を開発した。
 そして商品化されたのが、「Loops(ループス)」シリーズだ。図3の複合機「LP30」と図4の消色装置の「RD30」の2機種から成っている。見た目は一般的なスリムタイプのコピー機と小型冷蔵庫のような外観だ。

図3 「Loops LP30」(複合機)
図3 「Loops LP30」(複合機)

資料提供:東芝テック

図4 「Loops RD30」(消色装置)
図4 「Loops RD30」(消色装置)

資料提供:東芝テック

複合機で印刷したプリントは、例えば会議などで閲覧し、用済みとなったあとにその紙を会議室やオフィスに設置した消色装置にセットする。消色装置はオートフィーダで紙を吸い込み、消色が可能かどうか、汚れや破れなどがないかを自動的にセンシングする。消色だけなら、1分に30枚の速さでそのまま消色をして、「再利用トレイ」に重ねていく。分別機能を使用すれば、再利用ができない紙は、分別して別のトレイに吐き出すことができる。
 このシステムのもう1つの特色として注目したいのは、消色装置の側で、消色の前にスキャン画像を保存可能にしているところだ。紙文書のスキャンと電子ファイリングは複合機の得意とする分野だが、会議のあとに重要事項を個人的にメモした状態のプリントを電子化できるのがポイントだ。フリクションボールペンを使って書き込んだメモは、トナーと同時に消色装置で消色できる。その前に、書き込みをそのまま電子化して保存できるわけだ。紙も情報も再利用可能にしようという発想だ。

2.プリント紙の再利用で得られるメリットは?

そもそも「トナーの色を消す」ことは目的ではなく、「紙の量を減らしたい」という顧客の声に答えようとした結果、たどり着いたのがこの解決法だった。紙情報の電子化を図るソリューションは各社から提供されているが、情報のプリント機会は増加するばかりでなかなか紙の削減が追いついていなかった。そこでプリント出力量は減らさずに、紙の使用量は減らせる仕組みが考えだされた。
 瞬時に印刷が消せる複合機の仕組みなら1枚の紙が平均5回は利用できる。これによって得られるメリットは2つある。1つは環境負荷を軽減できること、もう1つはプリント関連コストが低減できることだ。

2-1.どれだけ環境負荷が軽くなるのか?

まず環境負荷の面から言えば、指標として代表的なのがCO2排出量だ。A4のコピー用紙の生産から廃棄までに排出するCO2の総量は1枚あたり約6.06gとされている。しかし1枚を5回(4回消色)使用するとすれば、紙そのものに関するCO2排出量は1/5になる。もちろん複合機や消色装置の電力も加算しなければ正確でない。東芝テックが環境負荷の計算を認証機関(国内:株式会社日本スマートエナジー、海外:BSIグループジャパン株式会社)が認める計算方式によって算出したところ、5年間でのCO2排出量は約57%削減できるという結果になったという(図5)。
 大企業においては既に省エネ対策をきめ細かく実施済みで、もうこれ以上の努力が難しいと感じている場合も多いだろう。そんなケースでも、更なる環境負荷軽減ができる有効な施策の1つになりそうだ。

図5 コピー用紙を5回利用した場合のCO2削減効果
図5 コピー用紙を5回利用した場合のCO2削減効果

※使用環境によって再利用できる回数は異なる。

資料提供:東芝テック

2-2.コストはどの程度か

ランニングコストはどの程度なのだろう。複合機の場合はコピー機と同様に使用枚数に応じて課金されるコピーチャージ方式での契約が多い。この紙再利用のシステムを用いると、一般的な料金よりも0.2円程度は高くなると東芝テックでは試算している。ただし、紙代は約0.6円、その廃棄コストは約0.2円と計算されるので、差し引き0.6円のコストダウンを見込むことができる。導入コストを算入しても、5年でTCOが下がるように考えた価格設定をしたという。

2-3.課題と今後の展開

こうした利点の背後には、まだいくつかの課題が残る。1つは熱に対する弱さだ。例えば真夏の炎天下に駐車した車の中では温度が極端に上がる。その中ではトナーが色を失ってしまう可能性がある。更に長期保存性はまだ検証されていない。通常のトナーよりも不安定であることは確かなので、法定保存期間のある文書などの印刷には向かない。また、トナー色が現在のところ青色だけなので、対外文書としては使いにくい。
 まだ用途が限られるとはいえ、瞬時に印刷が消せる複合機は国内600社の企業に印字サンプルを確認してもらい、その結果の声を取り入れて開発された経緯を持つ。それだけに実用性、運用性、低コスト性が練りこまれていて、国内企業・組織からの注目度は高いようだ。国内発売は来年2月が予定されており、次は環境意識が特に高いヨーロッパやアメリカ、アジアへと順次販路を広げていくとのことだ。

取材協力 :東芝テック株式会社

掲載日:2013年1月30日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2012年12月19日掲載分

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