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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
1枚15TB!「2光子吸収」ディスク登場

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは光ディスク1枚でゆくゆくは15TBの超大記録容量を達成するという、新しい情報記録技術です。富士フイルムが「2光子吸収記録媒体」を利用した「超多層光ディスク」の試作に成功しました。最新ブルーレイディスクの100倍を優に超える容量はどのように実現されるのでしょうか?

1.「2光子吸収記録媒体」と記録・再生技術とは

ディスク形態の記録メディアの便利さは誰でも知っているはず。その形態の利便性と、光を使って記録・再生をする基本的な枠組みはそのままに、更に大容量データを記録できるようにと、かねてから各社が研究にしのぎを削っている。その中で登場したのが今回紹介する「2光子吸収記録技術」と「光ディスク超多層化」の実証実験だ。現在の光ディスクの最大記録容量は、ブルーレイディスク(BDXL規格)の4層128GBまでだが、富士フイルムによる今回の発表(2012年10月4日ISOM '12※で発表)では、それを一気に片面500GB、両面で1TBにまで拡大することに成功したという。1回書き込みのみ可能な追記型ではあるが、同じ技術を利用すれば、いずれは両面記録で15TBにまで拡大できるとのことだ。ブルーレイディスク(BDXL規格)120枚分のデータを記録できる計算となる(BDXL1枚=128GB、1TB=1024GB)。

※ISOM:International Symposium on Optical Memory/光メモリ国際シンポジウム

1-1.光ディスクの記録容量増大はなぜ難しかったのか?

120ミリのディスク形態にデータを記録する方式はCDに始まり、DVD、ブルーレイディスクと世代を重ねてきた。次の世代の光ディスクは更に大容量記録が期待されているのだが、そのためにはクリアしなければならない技術的な壁がある。
 その最も大きな1つが従来の4層を超える超多層化だ。このためには従来の2次元的な記録方法を3次元的な方法に変える必要がある。これまでの記録方式では、今よりも多層化すると最深部の層まで「レーザー光が記録に十分な強度で届かない」課題がある。レーザー光の強度を上げれば透過させることは可能だが、現実的にはレーザー光の強度には限界がある。一方、記録層の光吸収率を高くすれば、記録感度が向上し弱いレーザー光でも記録が可能になるが、最深部に届く光が減ってしまう。つまり「各層での記録感度を高めるために光吸収率を高めることと、最深部にレーザー光を届かせるために光吸収率を下げることにトレードオフ」というジレンマがあるのだ。この解決には、記録したい記録層のみのピンポイントで光を吸収させ、途中の記録層では光を吸収させない2光子吸収記録方式が必要となる。2光子吸収記録方式によってこのジレンマを解消し、更に超多層化光ディスク生産の効率化までを視野に入れて研究されているのが、富士フイルムの「2光子吸収ディスク」だ。

1-2.2光子吸収現象を利用して、3次元でピンポイントに熱を発生

まず、2光子を用いて3次元で記録する方法を説明しよう。普通に記録材料に強いレーザー光を当てると熱が発生し、そこに穴が空いたり、材料の性質が変化(相変化)したりする。これが一般的な1光子吸収(図1の左)で起きる反応だ。これでは弱い光でも吸収が生じるために、レーザー光が記録層を透過するごとに光量が減衰して奥のほうを記録することができない。
 2光子吸収は、光子の密度が高ければ高いほどよく起こる。ハイパワーのパルスレーザー光を十分にレンズで絞って特定の場所に焦点を当てると、その部分で光子の数が多くなって2つの光子が同時に吸収される現象が起こりやすくなる(光強度の2乗に比例)(図1の右側)。2光子同時吸収が起きると、エネルギー(熱)が発生する。

図1 1光子吸収現象と2光子吸収現象のイメージ
図1 1光子吸収現象と2光子吸収現象のイメージ

1光子吸収はすべての記録層で光を吸収し、下層への光が通らない。2光子吸収は、焦点付近のみで吸収が起き、他では透過するので記録層の多層化が可能。
2光子同時吸収が起きた時に発生する熱量で初めて変化するような材料を記録層に利用すると、目的の記録層以外では透過し、目的の層でだけ2光子同時吸収による変化が起きることになるわけだ。

資料提供:富士フイルム

1-3.記録材料に熱膨張による「突起」を作ることで情報を記録、多値化の可能性も

図2 記録突起形状の作り方
図2 記録突起形状の作り方

資料提供:富士フイルム

図2左側の図の青色の3角形がレーザービームだ。緑色の記録層は、2光子吸収が起きやすい色素と一般的な樹脂でできている。レーザーの焦点部分で2光子吸収が起きると、その熱によって材料が膨らむ。レーザー照射が終わると急に冷えて膨張が元に戻るが、完全には戻らず「突起」を形成する。この突起の有無により、2値が記録できる。
 実験では2値でのみの検証にとどまっているが、図2右側に見るように、レーザー照射する時間を制御すれば、何段階かの高さの違う突起を形成できる。その高さの差は図のようにAFM(原子間力顕微鏡)で見てやっと分かる程度(200nm以下)だが、この高さの段階を値に対応させると、多値を記録することができる。
 4段階で高さを制御すれば4値、8段階なら8値だ。記録容量、記録再生速度ともに、4値で2倍、8値で3倍になるので、記録面積単位で大幅な高密度・大容量記録ができることになる。
 またこの実験では20層の超多層化光ディスクでも最深部の記録層までの光の透過率が87%と測定された。これは非常に高い数字であり、この結果を当てはめると、100層まで多層化しても約50%の光透過率が達成できることが見込まれる。
 要するに「1層25GB(ブルーレイディスクと同等)の容量で20層の多層化をした片面500GBの光ディスク」が実際に作り上げられ、その検証結果をもとにして、「100層までの多層化」と「多値化(8値化実現で記録容量3倍)」の可能性が具体的に見えてきたということだ。すなわち、「25(GB)×3(3倍記録)×100(層)×2(両面)」で合計15TBの記録容量が実現できるというわけだ。
 なお、記録の再生は基本的には従来と同様で、再生用のレーザー光を照射して反射を測定する仕組みだ。突起部への光は散乱して反射強度が低下するので、その程度を測定して値を読み取ることになる。

2.多層化光ディスクの作り方とコスト、応用分野は?

2-1.ディスク材料に「シール」を貼ればできあがり!シンプルな製造プロセス

記録/再生方法は分かったが、そんな多層化ディスクをどうやって作るのか?また実用化した時に値段的にはどうなのか?とご心配の向きもあるだろう。磁気テープメーカーでもある富士フイルムでは、リンテックと共同で20層多層化ディスクの製造プロセスまで検証している。その製造法は図3に見るように、ずいぶんとシンプルなものだ。

図3 多層ディスク製造プロセス
図2 記録突起形状の作り方

図の左側は一般的な多層(16層)ブルーレイディスクの製造プロセス、右側が富士フイルムの20層多層化ディスクの製造プロセス

資料提供:富士フイルム

例えば16層のブルーレイディスクを作ろうとすれば、ディスクをぐるぐる回しながら樹脂を均等に塗布するスピンコートと樹脂型を押し付けるスパッタを各16回繰り返す工程が必要だ。これに対し、新しい超多層ディスクは、まず記録層・中間層に粘着中間層を加えた、まるで両面粘着テープのようなシートを製造し、そのシートを打ち抜いてはディスク基板に貼り合わせる方法を採った。この方法によれば、20層のディスクを生産するのに10回のシート貼り合わせを行うだけで済む。しかもシートは同社のテープ製造技術(Web塗布)をベースにして1分あたり数百平方メートルが生産できるという。ディスクの面積で計算すると1平方メートルのシートで50層に相当する。スピンコート工程は1層あたり30秒と言われているのに対して、非常に生産性が高い。
 この生産性のよさを生かし、同社では「運用コスト(媒体コストを含む)を合わせて磁気テープストレージ並みを目指す」としている。大容量のハードディスクとテープの中間のポジションでの利用を見込んでいる。参考までに、既存ストレージと「2光子吸収ディスク」の比較表を最後に見ていただこう。

表1 ストレージ比較
表1 ストレージ比較

※1:2016の見込みで比較
※2:次項データ参照
テープストレージ:高転送速度で大容量のバックアップ・アーカイブ用途
ハードディスク:容量が小さな特定ファイルに早いアクセスを要する用途

資料提供:富士フイルム

なお、本研究は「突起記録方式によって2光子吸収記録媒体として初めて25GB/層の記録密度を実証」と「web塗布+貼合わせによる20層の超多層光ディスクの試作」という2つの研究から成っており、NEDO次世代戦略技術実用化開発助成事業として富士フイルムが実施したもの。また超多層光ディスク試作はリンテックとの共同研究だ。

取材協力:富士フイルム株式会社

掲載日:2012年12月26日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2012年11月21日掲載分

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