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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
電気の代わりに光で書き込み!光RAMとは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。
 今回のテーマは、電気の代わりに光で情報を書き込み、読み出す「光RAMチップ」です。超低消費電力、超広帯域の光ルータや光プロセッサ実用化の扉を開き、エネルギー消費増加に歯止めをかけるという、光RAM研究の現状をのぞいてみましょう。

1.光RAMとは何か

情報を記録してランダムに取り出せるRAMは、情報処理に欠かせないデバイス。おなじみのDRAMやフラッシュメモリ、新技術のReRAMやMRAMなどいろいろ種類があるが、今までに実用化された高速なRAMは全部、電気の世界のデバイスだ。光RAMは、電気ではなく、光を情報の記録と読み出しに使うところが根本的に違っている。
 光ファイバを使ったネットワークが、メタル回線を置き換えることにより、情報通信がこの十数年で飛躍的に広帯域化していくありさまを、私たちは目の当たりにしてきた。そんな革新が、今度は情報処理デバイスの領域で起ころうとしている。この光RAMを利用すれば、超広帯域で超低消費電力のネットワークが実現し、やがてはプロセッサの超低消費電力化も可能になるという。

1-1  光RAM開発の背景

光RAMの研究は、現在の「情報爆発」と呼ばれる情報量の急増が背景にある。社会の情報流通量(トラフィック)は、2006年の637Gbpsから2025年には約200倍近い121Tbpsにまで増大し、これに関わる消費電力量は、2006年には470億kWhだったものが、2025年には2400億kWh(5倍)に上昇、2050年には5500億kWh(12倍)にのぼると見られている。中でもネットワークの電力消費率は年々高くなり、2006年の80億kWhから、2025年には1033億kWhに伸びる見込みだ。(経産省「グリーンITイニシアティブ」資料 平成19年12月6日)。
 これは、ネットワーク機器が現状のままでは処理速度が不十分であることを示していると同時に、電力消費への影響が大きく、省エネ化のネックとなることも示唆している。

1-2  信号パケットをすべて光のまま処理すれば電力は極小に

ネットワーク機器の代表であり、最も多くの情報量を処理するのがルータだ。高速動作が求められるルータの処理能力を上げ、消費電力を下げることができれば、上述の問題解決に大きく貢献できる。これを劇的な形で達成すると思われているのが光RAMだ。
 光ルータと呼ばれる機器は以前からあるが、実は光ファイバからきた信号は、一旦電気信号に変換され、RAMに記録されたのちに処理されて、出力の電気信号は光信号に変換されて出ていく。この電気と光の変換に大きな電力が必要になり、発熱も大きいために速度向上の障壁になっている。
 それなら、光を電気に変換せず、そのままルーティング処理すればよい。この考え方で、光スイッチやレーザ技術、光インターフェースなどの技術が現在開発されているところで、光化の目途がようやくたちつつある。その中で完全に光で処理するパケットルーティングのために、最後に残っているのがRAMの光化だ。

1-3  1チップに集積できる光メモリを「フォトニック結晶」で実現

光出力の2状態を切り替えることで0と1のビット情報を記憶する光メモリは、いくつかの方式が生まれてきた。しかしどれも、消費エネルギーが大きいことと、デバイスサイズが大きくなることから、チップ化して利用するための前提となる集積化ができていなかった。
 そこに登場したのが、NTTによる光RAMだ(今年2月に発表)。これは、従来の他方式とは違い、「フォトニック結晶」と呼ばれる材料を使い、デバイス内に「光を閉じ込める」方法をとった。これにより光メモリのデバイスサイズは、他の研究機関による成果の2分の1以下(10μm2以下)に、消費パワーは約13万分の1以下(他研究機関による成果は最小で4mWなのに対して30nW)にまで低減することに成功した。しかも4個の光メモリを1チップに集積して、4ビットではあるが、40Gbpsの高速光信号に対応するRAM動作が確認できた。フォトニック結晶による光メモリは2008年に開発されていたが、集積化してRAMとしての動作を実現したのは、これが世界で初めてだ。

図1 NTTが実現した4ビットの光RAM
図1 NTTが実現した4ビットの光RAM

資料提供:NTT物性科学基礎研究所 ナノフォトニクスセンタ

2.光RAMの原理

この光RAMに使われている光メモリが光を閉じ込めることができるのは、光を反射せず、吸収もしない物質(自然界にはない)を作り出すことに成功したからだ。それは光絶縁体と呼ばれ、半導体に空気中の光の波長よりも細かい間隔で小さい穴(空孔)を周期的にあけたものだ。その間に光を通すと、光は漏れ出すことができなくなる。このような構造を持ったものを、フォトニック結晶という。

2-1 光を長い時間、漏らさずに閉じ込めるフォトニック結晶

光の閉じ込めには、光ファイバのように光の屈折率の差を利用して外に光が漏れないようにする方法と、鏡による反射を繰り返して閉じ込める方法とがあった。しかし前者ではファイバを小さく曲げると光が漏れるので、微小化に問題があり、後者では、反射するたびに5%程度の損失が出るため、20回反射を繰り返す極めて短い時間しか閉じ込められなかった。
 しかしフォトニック結晶で、光は反射も吸収もされない微小な空間に長い時間閉じ込めることができる。 これがメモリとしての基本動作をどのように行うかを、図2に示す。バイアス光を常時通し続け、書き込み光パルスを送ると、読み出し用の光パルスに対して強い強度の光を出力するようになる。反対に消去用の光パルスを送ると、読み出し用の光パルスに対してずっと低い強度の光を出力させる。この強度のギャップは「光双安定性」という物性を反映したものだ。この強度の違いを0と1に対応させて、メモリとして動作する。
 フォトニック結晶は光を強く閉じ込めることができるため、双安定動作をさせるために必要な光の強度が極めて小さくでき、更にメモリのサイズも小さくできるため、これまでの光メモリよりも小型で消費電力の低いものが可能になる、というわけだ。

図2 超低消費パワー光メモリ基本動作の実証
図2 超低消費パワー光メモリ基本動作の実証

資料提供:NTT物性科学基礎研究所 ナノフォトニクスセンタ

2-2  フォトニック結晶2種類を組み合わせる工夫

NTTはフォトニック結晶の研究で多くの実績を上げており、2008年に既にInGaAsP(インジウムガリウムヒ素リン)という半導体を使ったフォトニック結晶による光メモリで、消費パワー10μW、メモリ保持時間250nsの光メモリ開発に成功していた。しかし今回は、先に記したように消費パワー30nWになったのに加え、メモリ保持時間は一気に1000万倍以上の10s以上を達成した。
 この飛躍的な改善は、InP(インジウムリン)の薄膜にInGaAsPの層を埋め込むことで実現した。熱伝導が悪いInGaAsPのみで作った光メモリは、熱効果によりメモリを長く保持できなかったが、熱を逃がしやすいInPをベースにすることで、InGaAsPの示す双安定性を有効に生かすことができるようになったのだ(図3)。

図3 埋め込みヘテロ構造フォトニック結晶共振器(光メモリ)
図3 埋め込みヘテロ構造フォトニック結晶共振器(光メモリ)

資料提供:NTT物性科学基礎研究所 ナノフォトニクスセンタ

3.光RAMが実現する超低消費電力ルータとプロセッサ

光RAMを利用したルータのパケット処理部の構成イメージは図4のようなものだ。光ファイバから入力された情報は、光のまま処理されて、光で出力される。

図4 光RAMを利用したルータの構成イメージ
図4 光RAMを利用したルータの構成イメージ

資料提供:NTT物性科学基礎研究所 ナノフォトニクスセンタ

現在は4ビットで素子面積10μm2というサイズだが、将来的には10k~1Mビットの光RAMが、10mm2以内のチップに集積できる見込みだ。その場合の総消費電力は、100mW以下になりそうだ。
 また、光RAM技術は超低消費電力マイクロプロセッサにも応用できる(図5)。現在はCPUがメニーコア化している。このコア間でどう情報をやりとりするか、効率的なチップ内でのネットワークづくりがこれからの課題だ。近い将来には、コア間を光配線で結べるようになる。
 そのあと、演算処理などを電気回路で行うCMOSレイヤと、フォトニック結晶を使うネットワークレイヤを組み合わせるCPUが誕生し、更にその次、2025年頃までに、光RAMを使うルータをオンチップで搭載するCPUが登場し、そしてチップの中に高速で柔軟な光ネットワークができ上がるという展望が描かれている。

図5 今後の展望:チップの中のネットワーク処理へ
図5 今後の展望:チップの中のネットワーク処理へ

資料提供:NTT物性科学基礎研究所 ナノフォトニクスセンタ

以上、今回は光で動作する光RAMの原理とルータやプロセッサへの応用について紹介した。実用化はまだ先の話だが、製造には既存技術で十分間に合うとのこと。光ルータが実用化しても、キャリア、ISPなどの大規模ネットワークから適用され始め、一般企業が採用できるようになるのはそのあとのことだろう。とはいえ、ITデバイスの光化は見逃せないトレンド。今後の発展に注目していきたい。
 なお、ここで紹介した研究は、NTT物性科学基礎研究所とNTTフォトニクス研究所が、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の委託を受けて、共同で実現したものだ。

取材協力 :NTT物性科学基礎研究所

掲載日:2012年7月11日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2012年6月6日掲載分

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