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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「ARM系CPU」って何だ?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。  今回のテーマ「ARM系CPU」は、「iPhone 4S」や「Galaxy SII」といったスマートフォンから、「PlayStation Vita」のような最新ゲーム機まで、およそありとあらゆる最新のデバイスに搭載されているCPU(またはSoC:System on a Chip)です。表立って名前の出ることの少ないARM(アーム)社ですが、組み込みプロセッサの世界では、もともと独占状態に近いほどの圧倒的シェアを誇るCPU技術の開発元。惜しまれつつも急逝したスティーブ・ジョブズの残したデジタルライフ革命を今後更に加速させていくのはARMの技術かもしれません!

1.「ARM系CPU」とは?

スマートフォンやタブレットデバイスなどのスペックが話題になることの増えた昨今、数多くのデバイスのCPUの名称に「ARM」という文字が入っていることにお気づきの方は少なくないことだろう。しかしながら、CPUのメーカーはサムスンであったり、アップルであったり、クアルコムであったりして、ARM製のCPUは一切存在せず、不思議に思うこともあるのではないだろうか。

そもそもARMホールディング(以下、ARM)とは、CPUを"製造"する会社ではなく、CPUやその周辺の設計ブロックを"知的財産権:IP(Intellectual Property)"という形で、世界中に提供する会社である。

そのため、本コーナーでも「ARM系CPU」という呼び方をしている。

図1 ARMのコアのブロックダイアグラム
ARMの次世代IPコア「Cortex-A15」のブロックダイアグラム

ARMの次世代IPコア「Cortex-A15」のブロックダイアグラム

資料提供:ARM

ARMがIPとして提供するのは、CPUやメモリコントローラといった回路の設計図(IPコア)であり、ライセンスを受けたメーカーは、必要に応じて複数のコアを組み合わせて独自のチップを設計し、製品を作り上げる。

そうした製品の1つとして、アップルが「iPhone 4S」や「iPad 2」に搭載している「Apple A5」が挙げられる。これは「SoC(System on a Chip)」と呼ばれるチップで、文字通り1つのチップの中に、複数のCPUやGPU(グラフィック演算装置)、キャッシュメモリや通信用回路などが詰め込まれたもの。「Apple A5」内部のメインCPUにはARMの「Cortex-A9」というIPコアが採用されている。

実は、スマートフォンやタブレットはもちろんのこと、ガラケーと呼ばれている日本の携帯電話から、自動車のカーナビやデジタルテレビの画像処理やインターフェースまで、ありとあらゆる機器にこうして実装されたARM系CPUをベースとしたコンピュータが使用されている。

図2 ARMの設計するIPコア採用例
ARMの設計するIPコアは、身の回りのあらゆるデバイスに使われて、圧倒的シェアを誇る

ARMの設計するIPコアは、身の回りのあらゆるデバイスに使われて、圧倒的シェアを誇る

こうしてユーザに特に意識されることなく動いているコンピュータを一般に「組み込み」と呼ぶが、この組み込み型のプロセッサの世界で圧倒的なシェアを誇るのがARMからライセンス供与を受けて生産されるARM系CPUなのだ。

ARMのシェアは全世界の携帯電話の95%以上を占めると見積もられており、携帯ゲーム機、デジタルセットトップボックスなどのエンターテインメント機器から、自動車のブレーキ システムやネットワークルータまでの幅広い範囲で使用されており、全世界のデジタルデバイスの4分の1までもが、ARMのIPコアを使用しているという。

2.なぜARM系CPUなのか

これまでCPUと言えば、前述のようにコンシューマPCや、サーバ・ワークステーション向けの高性能プロセッサにばかり注目が集められてきた。

組み込み系では、「PlayStation 3」に採用され、東芝製のハイエンド・デジタルテレビ「CELL REGZA」にも搭載された、ソニー、IBM、東芝による共同開発のCellプロセッサなどは若干の注目を集めたものの、こうした数少ない事例をのぞけば、よほど詳しい人でない限り、ゲーム機やテレビ、携帯電話に搭載される組み込みCPUは、ほとんど意識されて来なかったといえる。

なぜ今ARM系CPUが注目を集めるのか

こうした状況に変化をもたらした一因が、スマートフォンの爆発的なヒットにあることは疑うべくもない。iPad発売のニュースが流れ始めた2010年春には、iPadと次世代iPhoneのためにアップルが初めて独自開発するCPU(より正確にはSoC)である「Apple A4」の性能に、世界中の関心が寄せられた。

既に普及を始めていたスマートフォンを通じて、日常的な体験を劇的に変える可能性のあるデバイスの心臓部として、組み込みのSoCの重要性に、遅まきながら多くのユーザが気づき始めたのである。


従来の携帯電話と、スマートフォンやタブレットデバイスとの違いは汎用OSを搭載している点にある。汎用OSを搭載する端末では、ユーザが好みのアプリケーションを自由にインストールして利用することが可能になる。多様なアプリを自分の仕事や生活に役立てたり、写真やHD映像を撮影し、加工編集して、鑑賞したりといったことが日常的となれば、当然のことながら、快適さを決定づける要素、すなわちCPUの性能にユーザは注目するようになる。

同じことができるなら、より性能の優れた製品を選びたいのは、全くPCと同じ図式で、PCの世界がMacとWindowsに二分されるように、スマートフォンの世界もiOSとAndroidに二分される点でも、両者は相似形にある。

しかしスマートフォンにおいて少し状況が異なるのは、その性能の中枢を担うCPUコアは、ほぼ例外なくすべてARMの設計、すなわちIPコアであるということなのだ。そう考えてくると、いまARM系CPUが注目を集めるのは当たり前のこととも言えるだろう。

3.ARM最新事情

ARM系CPUもマルチコアへ

現在製品化されているARMの最新プロセッサコアは「Cortex-A9」で、ソニーの次世代携帯ゲーム機「PS Vita」にもこのプロセッサコアの搭載が予定されている。Cortex-A9はARMが正式にマルチコア構成に対応した初のコア(これ以前にもクアルコム社のSnapdragonなど、ライセンス先メーカーが独自開発したデュアルコアは存在する)で、4コアまでの対称型マルチプロセッシングに対応する。

例えばサムスンの最新スマートフォンであるGalaxy SIIは、最大1.2GHzで動作するCortex-A9ベースのCPUコアをデュアルコア構成で搭載しており、現時点で最大級の処理性能を発揮する製品の1つである。

次世代のプロセッサコアである「Cortex-A15」では8コアまでのマルチコア構成が想定されており、最大2.5GHzで動作して現在のCortex-A9の倍近い性能を発揮するべく設計が進められている。

PC向けと性能が近づきつつあるARM系CPU

最大動作周波数2.5GHz、8コアというCortex-A15のスペックを目にすると、詳しい方ならコンシューマPCやエンタープライズ向けサーバ用のプロセッサと、数字の上では見劣りがしなくなってきたことに気づかれることと思う。

実際には、バッテリ駆動を前提としてきたARM系CPUと、100W前後の消費電力で駆動する前提のインテルやAMDのプロセッサとを、単純に数字で比較するのは適切ではないのだが、それでも両者の性能は徐々に近づきつつある。

例えばインテルのAtomシリーズは、低消費電力が求められるモバイル機器や組み込み用途をターゲットに、競合するARMや日立製作所のSuperHに対抗することを目標に開発されたプロセッサである。

Atomシリーズは、スマートフォンやタブレットへの採用には至らなかったものの、その消費電力の低さとコストの安さから、ネットブックやネットトップという新しい市場を作り出すことに成功した。

また、このAtomシリーズ用のプラットフォームとしてNVIDIAが開発したIONは、比較的低消費電力なAtomに、同社が得意とするGPUを組み合わせることで、HD映像や3Dゲームなどを手軽に快適に楽しむことができる製品づくりを目指したものである。こうしたネットブック、ネットトップ、IONプラットフォームといった流れは、コンシューマPCを出発点として進められてきた小型軽量、低消費電力のアプローチであり、携帯電話という非力なデバイスの高性能化を進めてきた結果生まれたスマートフォンやタブレットと、結果的に性能面で非常に近くなってきているのだ。

「Windows 8」にはARM版が登場

マイクロソフトからリリースされる次世代OS「Windows 8」には、従来通りのx86アーキテクチャ(インテル、AMDのプロセッサが採用する基本設計)に加えて、ARMアーキテクチャがサポートされることが正式に発表されている。

「Windows 8」が両方のアーキテクチャで使用できる状況になれば、その利用シーンも重なってくることは間違いない。バッテリ駆動で丸一日以上普通に使えるWindows搭載のARM系CPU搭載デバイスが登場すれば、ノートPCなどのビジネスツールの位置づけも変化してくる可能性が出てくる。

特にモバイルデバイスにおいては性能が交錯しつつある両アーキテクチャのプロセッサだが、設計自体のアプローチも徐々に近づいてきている。

もともとSoC構成が前提となってきたARMアーキテクチャに対して、AMDもインテルも、メモリコントローラーやPCI Expressバスコントローラ、GPUなど、かつてノースブリッジと呼ばれていた外部チップの機能をCPUへと統合した、よりSoC的な設計へと移行が進んでいるのだ(こうした構成のプロセッサをAMDではAPU:Accelerated Processing Unitと呼んでいる)。

また、チップセット事業から事実上撤退したNVIDIAは、得意とするGPU技術とARMのIPコアを組み合わせた「Tegra」というSoC製品をリリースして、タブレットなどのモバイル製品に進出してきている。

プロセッサ市場は渾然一体になって進化する

2011年現在のIT市場には、潤沢な電力を前提にPC及びサーバ市場で活躍してきた企業と、組み込みプロセッサ及びモバイル市場で低消費電力を前提に高性能化を進めてきたARMを始めとする企業とが交錯しつつある。これは数年前には予測もしなかったほどに、急速な市場環境の変化である。

この市場の融合と交錯が、単なる競争に終わらず、それぞれの技術的な独自性と優位点を生かした多彩な製品づくりへとつながるならば、惜しまれつつも急逝されたスティーブ・ジョブズが世界にもたらしたような、革命的なIT環境の進化は、更に加速度的に進んでいくのではないだろうか。

CPUとGPUという主要なプロセッサのIPコア開発に強みを見せつつ、複数のメーカーに広く技術を提供し続けるARMが、この大変革における台風の目の1つであることは間違いないだろう。

取材協力 :各種資料からキーマンズネットが作成

掲載日:2011年12月28日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2011年11月16日掲載分

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