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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「EPUBバージョン3」って何だ?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。  今回のテーマ「EPUB」は、アップルやグーグルが採用する事実上の世界標準の電子書籍の規格。この10月には縦書きやルビなどの日本語の表示に対応するバージョン3「EPUB 3」が正式決定となりました。これにより日本の電子書籍業界にグローバルスタンダードの波が押し寄せるかもしれない!?

1.「EPUB」とは?

1-1 EPUBの基礎知識

EPUBとは、「Electronic PUBlication」からとった名称で、電子書籍の標準化団体の1つ「International Digital Publishing Forum(IDPF、国際電子出版フォーラム)」が策定を進めている電子書籍のファイルフォーマットである。
 EPUBの実態は、XMLやXHTML、HTML、CSSといったオープンな規格のファイルと、JPEG、PNG、GIFといった画像ファイル、SVG(Scalable Vector Graphics:スケーラブル ベクター グラフィックス)などで描いた図表などのファイルを、ZIPでまとめて圧縮し、「.epub」という拡張子を付けたものであり、形式そのものはHTMLに極めて近くオープンな規格である。
 HTMLとの大きな違いは、インターネット接続がなくても、電子書籍リーダなどの端末からオフラインで閲覧できるようにコンテンツのセットをひとまとめのパッケージとする点と、表紙や目次や索引、章立て、ページ番号といった、書籍特有の機能のマークアップ(タグによる記述)方法が標準化されている点にある。

1-2 「EPUB 3」は縦書きに対応

バージョン2までの「EPUB」は、縦書きに対応しておらず、ルビや圏点(傍点、脇点)などの日本語特有の表記も記述できなかったため、シャープが提唱して普及が進められてきた「XMDF」形式や、株式会社ボイジャーの開発した「エキスパンドブック(EBK)」の後継フォーマット「.book」形式など、比較的標準化が進められてはいるものの原則的にはプロプライエタリ(独自仕様)で、利用にライセンスの必要なフォーマットが、日本の電子書籍フォーマットにおいて、主流となってきた。
 独自仕様のフォーマットには、ソフトウェア、ハードウェアの販売とメンテナンスが継続されなければコンテンツの価値が損なわれるという欠点がある。
 今回、XMLやHTML、CSSといったシンプルでオープンな規格をベースとした「EPUB」がバージョン3へとアップデートされ、日本語をはじめとする2バイトコードの言語の記述方法に対応したことで、日本語の電子書籍においても、世界標準の規格を利用できるようになることは、大いに歓迎すべきことだと言えるだろう。
 「EPUB 3」では、いままでのEPUBではできなかった縦書きはもちろんのこと、「ルビ」や「圏点」、「縦中横」といった、日本語の文芸書などに必要不可欠な表現も可能になった。

図1 ルビ、圏点、縦中横の例
図1 ルビ、圏点、縦中横の例

「EPUB 3」はルビ、圏点、縦中横などの日本語特有の表現に対応

出典元:W3C

また、「XMDF」や「.book」といった形式もベースはHTMLであるため、「EPUB」形式への変換は比較的容易である。どの形式が優れているか、という競争ではなく、様々な形式を幅広い電子書籍リーダがサポートする環境下で、各フォーマットの利点を活かしたコンテンツがより活発に流通するようになることが、日本の電子書籍市場全体を盛りたてることにつながるはずだ。

2.「電子書籍」最新事情!課題は著作権保護?

電子書籍の普及の鍵となると考えられているのが、著作権保護の仕組みである。一般にデジタルコンテンツの著作権保護には、DRM(デジタル著作権管理)と総称される技術が用いられている。

2-1 コストとトレードオフになるDRM

DRMの方法にはいくつもの種類があり、インターネット映像販売において世界で70%のシェアを持つ「WindowsMediaDRM」や、「iTunes Music Store」に導入されたFairPlayといった技術が普及している。
 しかし、映像コンテンツにおいてDRMが事実上破られてしまっていることは、広く知られている事実であり、問題の背景こそ若干異なるものの地上波デジタルのB-CAS方式も、フリーオなどの非正規チューナーの登場により無効化されてしまっている実態がある。

 

電子書籍においては、AdobeのDRM技術である「ADEPT(Adobe Digital Editions Protection Technology)」が、「Sony Reader」をはじめ世界的に普及している。しかし、有償のホスティング型サービスであるため、配信業者にとってコストの負担が大きい。
 DRMの厳格化のためには、コンテンツ閲覧時にサーバ認証を必ず行うなどの対策が必要不可欠だが、それではダウンロードしてオフラインで閲覧可能にするという「EPUB 3」のコンセプトが根底から覆ってしまう。
 DRMはコスト及び利便性とのトレードオフの問題であり、いつでもどこでも、何年後でもどの端末でも閲覧可能な電子書籍を、コピーできず、不正に他社に配布できない形で配信することは不可能に近いと言われている。

2-2 ゆるやかな保護の仕組み「ソーシャルDRM」

コピーを物理的に防ぐことができないとしても、不正配布の抑制に有効なアプローチの1つとして、「ソーシャルDRM」という方法がある。ソーシャルDRMでは、暗号化されたコンテンツデータの中に配信元、配信ルート、配信先IDなどを埋め込むことで、不正に流出したファイルがあれば、埋め込まれたデータから流通させた購入者を特定することを可能にする。
 ソーシャルDRMは前述の「XMDF」にも用いられている技術であり、利用するユーザー層に一定以上のモラルが期待できる場合には、そうした仕組みが実装されているという事実を周知するだけで、不正コピーの蔓延を抑止する効果が期待できる。

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2-3 厳格化を求めたいコンテンツホルダー

電子書籍の版元は、様々な権利者との契約責任を負って出版物を電子化して配布することになるため、DRMについて可能な限りの厳格化を求める傾向があるようだ。
 現在でもマンガなどの出版物が、いわゆる「自炊」を通じてP2Pやウェブ上に流出している現状があるが、それでもユーザによる勝手な複製であり、スキャナなどを経て劣化したコピーであるため、極端に大きな問題とはなっていない。スキャン可能であることは「紙」の書籍が持つ本質的な脆弱性であり、これを物理的に防ぐことまでは求められていないからだろう。
 こうした現状に対して、正規のデジタルデータの完全なコピーが流出した場合には、その影響は少なからず大きくなることは想像に難くない。特に文芸書などテキストデータを中心としたコンテンツの場合には、データサイズ自体が画像、映像、音声に比して圧倒的に小さいため、数千冊、数万冊単位のデータが、まとまった形で容易にダウンロード可能になってしまえば、電子書籍の正規の流通に障害となる可能性は否めない。

3.書籍自体の持つ利便性と脆弱性

いずれにしても、グローバルスタンダードの「EPUB 3」の登場と、それに対応する電子書籍リーダ、及びスマートフォン、タブレットデバイス向けの「EPUB 3」対応アプリの普及によって、日本の電子書籍の市場は急速に拡大することが予想される。  オープンな標準規格である「EPUB 3」ファイルが普及すれば、多様なコンテンツを、汎用性の高いAndroidやWindowsなどのOS上でファイルの閲覧が行えるようになり、ユーザの利便性は飛躍的に高まるだろう。

図2 リフロー(動的レイアウト)の例
図2 リフロー(動的レイアウト)の例

「EPUB 3」は画面サイズや文字サイズに合わせて動的にレイアウト(リフロー)変更が可能

「EPUB 3」はHTMLで記述するウェブと同様に、画面サイズ及び文字サイズに応じて、レイアウトを動的に行うことができるため、PCからタブレットデバイス、電子書籍リーダー、スマートフォンまでの多様な端末から、同一コンテンツを快適に利用することも可能になる。
 しかしその利便性の反面、画面上に表示される書籍は、その端末が使用するフォントや、埋め込まれたフォントで正確に表示されるデジタル画像であり、汎用OSで動くシステム上からこれをキャプチャしてOCRすること、すなわちOCR技術を用いて画面表示からテキストデータへと一種の逆コンパイルすることは、技術的に十分簡単で、かつ精度も非常に高くなることは想像に難くない。
 実際にそうした一種のハッキング行為が行われるかどうかは予想できないが、こうしたリバースエンジニアリング的な手法まで考慮すると、電子書籍に対するDRMは、映像や音声のコンテンツ以上に困難な課題だと言える。

3-1 無法地帯化している世界の日本マンガ流通事情

更に世界規模でみた時には、電子書籍の著作権保護はより難しい問題だと言える。例えば、世界に流通する日本のマンガの状況を、“Mango”というAndroidのアプリケーションを通じて覗いてみると驚愕すべき状況になっている。世界中の有志(といっても違法行為であるに違いないのだが)による翻訳サークルが複数存在して、ほとんどの日本の人気マンガが無料でAndroid端末から英語で読めてしまう状況が存在している(※)。具体的には“Mangafox”、“Mangareader”、“Mangable”といったキーワードでインターネットを検索すればすぐ分かるが、「ワンピース」や「ナルト」、「けいおん!」といった現在連載中の人気作品から「スラムダンク」のような過去の名作マンガまでがすべて無料で、Webブラウザからも、洗練されたAndroidインターフェイスからも、連載からさほど遅れることもなく英語で読めてしまう現実がそこにはある。
 こうした状況は、マンガのような強力なコンテンツでさえも、英語へのローカライズと、各国へ紙媒体を流通させるためのコストに阻まれ、世界の巨大市場に十分な量の商品を供給することができていないことの裏返しではないだろうか。
 日本語から英語へのローカライズという、本来であれば相当高いはずのハードル、異なる言語という一種の本質的なDRMが、世界中のマンガファンの熱意と努力によって(非合法であれ)超えられてしまうのであれば、生半可な著作権保護の取り組みでは歯が立たないだろう。

※ 海外マンガサイトの調査にあたっては、著作権の侵害を避けるべく、正規日本語版を所有する作品を中心に、目的を限定して内容の確認を行った。

3-2 現実に即した柔軟なコンテンツ流通を

上述のとおりマンガのような極端な状況であっても、世界各国の物価や社会情勢にあわせて、柔軟な価格設定を行って、より上質な正規コンテンツとして電子書籍の販売を行うことができれば、少なくとも現状のように、巨大な市場が存在するにもかかわらず、正規経済の外側で非合法コンテンツがまるで合法かのように溢れかえる状況にはならないはずだ。世界市場を踏まえた上で電子書籍の普及に取り組んでいくためには、著作権保護という無理難題にこだわりすぎず、ソーシャルDRMのような一定以上利用者のモラルを信用した仕組みと、日本特有ではない「EPUB」のような世界標準のフォーマットで、購入しやすい価格で、半永久的な価値が保証され、かつ複数の端末からも利用しやすい方法が、コンテンツホルダーにとっても、世界のユーザにとっても、最も望ましいに違いない。
 映像や音楽などのコンテンツに比べて、データ量が小さく、活用の自由度の高い「文字」という媒体を中心とした電子書籍は、本来デジタル化の恩恵を最も大きく受けるコンテンツ領域である。
 それだけに、公衆のモラルと流通コストと利便性のベストバランスとなる方式が順調に普及して、不況が叫ばれて久しい出版業界の救世主となってくれることを、是非とも期待したいところだ。

取材協力 :各種資料からキーマンズネットが作成

掲載日:2011年11月24日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2011年10月19日掲載分

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