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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「環境電波の電力変換技術」って何だ?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「環境電波の電力変換技術」。この技術が実用化されると、携帯電話やスマートフォン、モバイルPCの充電作業から解放され、バッテリ切れで慌てることもなくなる!?

1.「環境電波の電力変換技術」とは?

我々の周りには、テレビやラジオの放送波や無線通信の電波、電気製品が発生している電磁波など、いろいろな周波数の電波が飛び交っている。このうち無線LAN、携帯電話、放送波など比較的エネルギーの強い、身の回りに日常的に存在する電波のことは「環境電波」と呼ばれている。環境電波はすべて電気エネルギーを持っている。そこで、“環境電波(交流)を拾い集め、それを整流して直流に変えることで電力を取り出す仕組み”の研究が日本電業工作株式会社で行われている。この技術のことを、本稿では「環境電波の電力変換技術」と呼んでいる。
日本電業工作では2011年7月に東京ビッグサイトで開催された「テクノフロンティア2011」において、「環境電波の電力変換技術」を使って、エネルギーハーベスティング技術の公開実験を行った(図1)。エネルギーハーベスティング技術とは、周囲にある熱、振動、圧力、電波などのエネルギーを収穫して電気に変換する環境型の発電技術のこと。

図1 「環境電波の電力変換技術」を使ったエネルギーハーベスティング公開実験
図1 「環境電波の電力変換技術」を使ったエネルギーハーベスティング公開実験

資料提供:日本電業工作

この実験は、レクテナ(後述)と呼ばれている特殊な装置を使って環境電波を受信して、電力に変換し、ほかのデバイスに供給するというもの。実験は2通りのパターンが並行して行われた。1つは、実験スペース内に設置された無線LANルータから発せられているWiFi電波から電力を取り出す実験。もう1つは、会場から約6km離れた東京タワーから発せられているテレビ放送波(地上デジタル波)から電力を取り出す実験。
 実験の結果、前者で収集できた電力は100μW(ルータの放射電力が10mW、距離が10cmの時)、後者は0.1μWであった。ちなみに、後者の実験の場合、コンクリートで囲まれた東京ビッグサイトではなく、東京タワーに近い港区役所前で実験を行うと6mWの電力を取り出すことができたという。

2.「レクテナ」研究の経緯と仕組み

古くて新しい!電波を電力に変換する技術の研究

実は、環境電波に限定しなければ、電波を電力に変換する技術の研究はかなり以前から行われており、日本でも1950年代に軍事目的として研究されてきた。本格的な電力の空間伝送実験が始まったのは1975年ごろからで米国で開始された。しかし、従来のこうした研究では大型の送電アンテナから狭帯域の大出力で電波を飛ばし、それを大型の受電アンテナが付いたレクテナでkW以上の電力を取り出すといった大掛かりなものが中心で、環境電波をターゲットにしたような微弱な電力変換の研究はほとんど行われてこなかった。環境電波を電力に変換しても出力が小さく不安定だからというのがその主な理由だ。
 しかし、最近の省電力化技術の進歩により、ICタグや各種センサなど、微弱な電力で動作できるデバイスが次々と製品化されるようになってきたことから「環境電波の電力変換技術」に対する期待が高まってきたのだ。

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レクテナの仕組み

さて、ここで「環境電波の電力変換技術」で使用されている特殊な装置「レクテナ」(Rectenna:Rectifying antennaの略)について簡単に触れておこう。今回の「環境電波の電力変換技術」で使われているレクテナの内部構成を図2に示す。レクテナは受電アンテナと、入力低域通過フィルタ、整流器(ダイオード)、出力低域通過フィルタを含む整流回路から構成されている。入力低域通過フィルタは整流時に発生する高調波(ノイズ)がアンテナから空間に再放射されることを抑止する。一方、出力低域通過フィルタは基本波を含む高周波電力をダイオード側に反射し、直流成分のみを直流負荷へ出力する。
 今回開発されたレクテナは、従来のレクテナよりも電力変換の効率が高く(2GHz帯において90%以上、従来品は70~80%)、薄型(厚み0.2波長以下)・軽量化も実現されている。また、低損失・高減衰なフィルタの搭載により、整流回路からの不要波の再放射を-50dB以下までに低減することに成功している。

図2 レクテナの内部構成
図2 レクテナの内部構成

資料提供:日本電業工作

3.「環境電波の電力変換技術」が描く近未来の姿

「環境電波の電力変換技術」を中心とした電力の空間伝送が自由に行えるようになると、次のようなことが実現できるようになる(図3参照)。

高周波を利用する機器で使われなかった電波を電力変換することができる

例えば、電子レンジにこの技術を導入することで、従来、熱として廃棄されていたエネルギーを再利用できるようになり、装置の消費電力を最大40%削減できるようになる。

離れた場所へ無線で給電することができる

人が近づきにくい場所に装置を取り付けた場合、バッテリ交換のための保守作業をなくすことができる。また、送電線を敷設しにくい場所にも装置を取り付けることができるようになる。また、災害発生で停電したときにも、被災地に迅速に電力を送ることができる。

バッテリレスあるいはバッテリ充電の自動化を実現できる

携帯電話やスマートフォンなどのワイヤレス通信機器に応用すれば、バッテリを自動的に充電できるようになり、バッテリ切れで泣かされることがなくなる。また、ロボットや電気自動車に搭載できれば、作業中や走行中にバッテリがなくなる心配がなく、ロボットや電気自動車に対する信頼性向上に役立つ。

エネルギーハーベスティング技術の補佐役として活躍できる

環境型の発電技術「エネルギーハーベスティング」の代表選手と言えば「太陽電池」だが、この場合には曇りや雨の日は出力が大幅にダウンし、夜間はゼロになってしまう。これに対し、「環境電波の電力変換技術」は昼夜問わず24時間365日いつでも利用できる。
 ただし、現時点の「環境電波の電力変換技術」では収集できる電力はごくわずかで、そのままではいろいろなデバイスを動かすのは難しい。そこで、太陽電池などの蓄電デバイスと組み合わせて活用したり、必要な時だけ動作させる間欠動作のセンサの電力源に使うようにすれば、実用化までにはさほど時間はかからないだろう。

図3 「環境電波の電力変換技術」の応用例
図3 「環境電波の電力変換技術」の応用例

資料提供:日本電業工作

取材協力 :日本電業工作株式会社

掲載日:2011年11月 9日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2011年10月5日掲載分

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