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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「アグリバイオメトリクス」って何だ?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「アグリバイオメトリクス」。これからは「野菜や果物を買う時は携帯カメラで写真を撮ってから」が正しいショッピングスタイルになる?!

1.「アグリバイオメトリクス」とは?

生体が持つ個体特有の特徴、例えば人の指紋、顔などの特徴を使って認証を行うことを「バイオメトリクス」と呼んでいるが、同じく生物である農産物の個体ごとの特徴を使って認証を行うことを、日本電気では「アグリバイオメトリクス」と呼んでいる。2011年、同社ではこのアグリバイオメトリクスを使って、大量の果物の1つひとつを、写真から高精度に識別できる農作物の照合技術の開発に成功した。
 この説明だけでは、アグリバイオメトリクスは農業あるいはその流通関係者だけが重宝する特殊な技術と早合点するかも知れない。しかし、このアグリバイオメトリクスは我々一般消費者にとってもいろいろな可能性を秘めている画期的な技術なのだ。
 それでは、今回日本電気が発表したアグリバイオメトリクスの実証実験の様子から紹介しよう。実証実験は、同一種・同一産地(つまり見た目が似通ったもの同士)のメロン1800個を農家の生産者が市場に出荷する場合を想定して実施された(図1)。

図1 アグリバイオメトリクスをメロン出荷に応用した例
図1 アグリバイオメトリクスをメロン出荷に応用した例

資料提供:日本電気

図2 照合ソフトウェアの処理画面
図2 照合ソフトウェアの処理画面

(クリックすると大きな画像が表示されます。)

資料提供:日本電気

アグリバイオメトリクスのシステム構成は至ってシンプルで、アグリバイオメトリクス専用の照合ソフトウェアが搭載されているPC(あるいはサーバ)とデジタルカメラを用意するだけ。まず、1800個のメロンを、ヘタの部分を中心にできるだけ真上からカメラ(どこにでもある一般的なデジタルカメラや携帯電話の内蔵カメラで問題ない)で撮影し、その写真をPC(認証サーバ)に転送する。PCでは画像認識が行われ、データベースに保存される(図2)。そして数日後、場所とカメラを変えて再び1800個のメロンを撮影した。なぜ数日後なのか、その理由は実際の流通を考えるとスーパーの店頭にメロンが並ぶまで時間がかかり、メロンの表面など(新鮮度)も多少変化する可能性があるので、実証実験もこうした条件を加味して行われた。また、出荷時点での撮影は畑などの屋外が想定され、入荷時点での撮影は店舗などの屋内が想定される。更に、出荷と入荷では使用するカメラが同じ機種になるとは限らないので、場所とカメラも変えて実験が行われた。その結果、偽物を本物と間違える確率は100万分の1、本物を偽物と間違える確率は0.4%を達成することができ、十分実用に耐えることが実証された。

2.「アグリバイオメトリクス」の必要性と仕組み

なぜアグリバイオメトリクスが必要なのか

以前から、食品や農産物の世界では、産地や栽培履歴の情報などを偽装する悪質なケースが多発している。こうした問題を解決するため、個々の農産物にラベルや電子タグを付けて情報を管理する取り組みが行われているが、こうした方法ではラベルの取り付けにコストがかかる上、ラベルの貼り替えや中身の入れ換えなどの偽装には対処できない。また、DNA鑑定や元素分析で産地を証明する方法も一部で利用されているが、これも手間と時間がかかり過ぎて一般的ではない。
 一方、農作物は味、鮮度などを価値として訴追し続けており、産地のブランド化も進んでいる。しかし、類似品種では消費者には見分けがつかず、包装・タグを信じるしかないのが現状だ。そこで、日本電気では同社がこれまで培ってきた画像認識技術を応用すれば、安全・安心な食料流通に貢献できるシステムを低コストで開発できるのではないかと考え、数年前から取り組みを開始した。その成功例の1つがメロンの照合システムである。

アグリバイオメトリクスの技術ポイント

アグリバイオメトリクスのPC上のソフトウェアでは、撮影したメロンの写真を使って2つの処理が実行されている。まず1つは、同社の指紋認識技術を応用して開発された「特徴抽出・照合」処理である。果物(メロン)の表皮の模様は、同一品種でも1つひとつすべて異なることから、表皮の模様に適した特徴点抽出技術が開発された。
 そしてもう1つは、同社の顔認識技術を応用して開発された「対象物の向き補正」処理である。これはデジタルカメラでメロンの写真を撮る場合、店舗や栽培現場などで、すべてのメロンを同じ撮影方向で一定して撮るのは難しい。そこで、撮影時に変化する向きを補正する技術が開発された。
 アグリバイオメトリクスでは、この2つの処理により、生産者が登録したデータ(特徴量)と消費者(店舗)が撮影したデータ(特徴量)を比較照合(同一性を評価)し、真贋判定を実施している。

図3 アグリバイオメトリクスの技術ポイント
図3 アグリバイオメトリクスの技術ポイント

資料提供:日本電気

3.「アグリバイオメトリクス」の適用分野

今回のメロンの実証実験により、異なる場所で撮影した青果物の同一性を照合するアグリバイオメトリクス技術の開発に目途がついた。これで、人工的なタグを付けることなくトレーサビリティを実現できるようになる。今回はメロンを使ったが、この技術では青果物が生来持っている生体パターンを用いて照合することから、スイカやリンゴなどでも実現できそうだ。表皮の模様が時間経過とともに変化するような農作物の場合には、ヘタや根っこなどの個体ごとに固有の特徴を持ち、なおかつその特徴が変化しない部位を付けたまま収穫して出荷すればいい。
 また、アグリバイオメトリクスの場合、システムに画像登録されたもの以外をはじき出すことができるので、例えば放射能で汚染されていない農作物として検査証明を受けたものを登録しておくような使い方をすれば、検査済みのものだけをピックアップすることができ、真贋判定だけでなく、検査済か未検査かどうかの判定にも活用できると期待される。
 課題としては、アグリバイオメトリクスを流通業者までに留めて活用するか、一般消費者まで拡大してサービス提供を行うかだ。情報公開が一般化している今、一般消費者がこのシステムを利用できるようになることが望ましいが、スーパーの店内で買物客が勝手に商品の写真を撮ってもよいという状況にはなかなか成り得ない。実用化・普及にあたっては技術面だけでなく運用面での工夫も求められている。

取材協力 :日本電気株式会社

掲載日:2011年10月12日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2011年9月7日掲載分

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