本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > デジ・ステーション

デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「ディスプレイ盗撮防止技術」って何だ?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「ディスプレイ盗撮防止技術」。この技術が普及すれば、ディスプレイからの情報漏洩だけでなく、美術館や工場も「盗撮」に悩まされることがなくなる!?

1.「ディスプレイ盗撮防止技術」とは?

ディスプレイ盗撮防止技術とは、ディスプレイに表示された情報の盗撮を防止するための技術のこと。国立情報学研究所の越前功准教授によって開発された。この新しい技術は、越前功准教授が2009年9月に発表した“人間とデバイスの視覚に関する感度の違いを利用した映画(スクリーン)盗撮防止技術”を応用することで開発に成功したもの。映画盗撮防止技術については、以前このコーナー(盗撮防止技術)で取り上げているのでそちらを参照していただきたい。

この新技術の仕組みを説明する前に、どんな形で盗撮を防止できるのか、その様子を見ていただこう。準備は至って簡単。人の視覚に影響を与えない近赤外線ユニット(盗撮防止ユニット)を、盗撮されたくないディスプレイの前に設置するだけである(図1)。

図1 盗撮防止ユニット
図1 盗撮防止ユニット

資料提供:国立情報学研究所 越前研究室

この盗撮防止ユニットを設置しても、ディスプレイの通常の視聴には全く影響を与えない。この状態でデジタルカメラを使ってディスプレイの画面を撮影すると、図2(右)のような写真しか取ることができず、ディスプレイに表示された情報を判読することはほとんど不可能だ。もちろん、肉眼でディスプレイを見た時には、盗撮防止ユニットなしの場合と全く同じ状態で見ることができる。また、この新技術はディスプレイ以外の実物体でも同じ効果を得ることができる(図2)。つまり、デジタルカメラなどのデバイスを経由した場合に限り、盗撮防止ユニットで囲まれた情報源に関する可読性が著しく低下するというわけだ。

図2 盗撮映像の妨害効果
図2 盗撮映像の妨害効果

資料提供:国立情報学研究所 越前研究室

2.「ディスプレイ盗撮防止技術」の仕組み

盗撮防止ユニットの構成を図3に示す。このように、盗撮防止ユニットの上部と下部に赤外LED(ピーク波長870nm)と赤外LEDの可視域成分をカットする可視光カットフィルタが取り付けられている。そして、ユニット中央部に設置されているハーフミラーを使って、ディスプレイの表示画面に近赤外線を重畳する仕組みになっている。デジタルカメラ側に新たな機能を追加する必要はなく、既存のディスプレイに設置するだけでデジタルカメラによる盗撮を防止できる。

図3 盗撮防止ユニットの構造
図3 盗撮防止ユニットの構造

資料提供:国立情報学研究所 越前研究室

なぜ、この仕組みで盗撮を防止できるのか、その原理は以前紹介した映画の盗撮防止技術と同じで、“人間とデバイスの視覚に関する感度の違い”を利用しているからだ。簡単におさらいすると、図4に示すように、人間の目で見える範囲と、デジタルカメラなどに使用されている撮像デバイス(CCDやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサ)でとらえることができる範囲(分光感度特性)には違いがある。

図4 人間とデジタルカメラの感度
図4 人間とデジタルカメラの感度

資料提供:国立情報学研究所 越前研究室

光に関する標準仕様を勧告する国際照明委員会(International Commission on Illumination)によると、人間の可視域は波長380nm~780nm。一方、デジタルカメラに用いられるCCDやCMOSなどのイメージセンサは可視域外を含む広い領域(約200nm~1100nm)に渡って感度を維持している。そこで、近赤外線光源をディスプレイの前面に配置すれば、人の視覚には影響を与えることなく、撮影映像にのみノイズを重畳させることができ、その結果、デジタルカメラで撮影した映像や画像の品質だけを劣化(ノイズを付加)させることが可能になる。

なお、図4から分かるように、ノイズ信号としては赤外線のほかに紫外線という選択肢もある。しかし、この技術では紫外線は選択されなかった。その理由は安全性だ。ノイズ信号は人間の目にも入ることになるが、紫外線の場合、長時間使用すると皮膚、目、免疫系への疾患の恐れがある。これに対し、赤外線は現在の日常生活に深く浸透し、テレビのリモコンや暖房器具など様々な用途に利用されており、この装置で使用されている近赤外LEDは一般光源と同等の扱いが可能だ。更に、光源の高寿命、コンパクト化といった優位性もあることから、この技術では近赤外LEDがノイズ光源として採用されている。

3.「ディスプレイ盗撮防止技術」の適用分野と今後の課題

これまでも、情報漏洩対策や不正コピー対策として、DRM(デジタル著作権管理)や暗号化などの各種技術が開発されてきたが、これらの技術はデジタルデータのための保護技術である。一方、ディスプレイや映画館のスクリーンに映し出された情報は、その時点でアナログデータに変換されているので、無防備な状態に置かれている。つまり、不正コピー防止技術で保護された情報も、ディスプレイ表示によって一旦アナログ化されると、第三者がデジタルカメラなどを使って勝手に再度デジタル化することができてしまうという「アナログホール問題」が発生しているのである。特に、最近ではデジタルカメラ及びデジタルビデオカメラの高性能化、小型化が急速に進んでいることから、今後、盗撮は大きな社会問題としてその深刻さを増していくものと見られている。

例えば、薄くて小さい携帯型の音楽プレーヤの中にはビデオ撮影機能まで付いた製品も登場しており、「絶対にバレない擬装カメラの作り方」といった記事がインターネット上を飛び交う時代に突入している。また、医療施設の職員が患者履歴を表示したディスプレイをデジタルカメラで撮影し、撮影画像を外部への発表資料に許可なく用いるといった個人情報漏洩の事案も発生している。

そこで、こうした問題を解決するために考案されたのが、以前取り上げた映画の盗撮防止技術であり、今回取り上げたディスプレイ盗撮防止技術である。これらの盗撮防止技術は、実に広範囲に渡る分野での応用が考えられる。ディスプレイ表示や映画館での盗撮行為の防止に役立つだけでなく、デジタルサイネージなどの様々な表示媒体の著作権や肖像権の保護に役立つ技術としても期待されている。また、美術館などの展示物をこの盗撮防止ユニットで囲むことで、勝手に写真を取られて複製される心配もなくなるのだ。更に有名人やその家族、あるいは事件・事故の関係者のプライバシー保護のため、自動車の窓ガラスに取り付けたり、自宅やホテルなどの窓に取り付けたりするなど、活用範囲は広い。

課題は「装置の薄型化」と「盗撮検知」

越前研究室では、ディスプレイ盗撮防止技術の実用化を進める上で、現在2つの課題に取り組んでいる。1つ目は装置の薄型化だ。今回試作した盗撮防止ユニットは手軽に取り扱うには厚みがありすぎる。また、ハーフミラーのつなぎ目が画面中央に位置しているので、これを目立たなくするための加工技術も必要だ。そこで、越前研究室では、液晶のバックライト原理に着目し、赤外線を光源とした導光板をディスプレイ前面に貼り付けることで同等の効果が得られるとして更なる開発を進めている。

もう1つは、このディスプレイ盗撮防止技術をすり抜けようとするハッカー対策だ。この盗撮防止技術ではノイズ信号として赤外線を使っているが、もしデジタルカメラに赤外カットフィルタを付けて盗撮を行えば、カメラによっては赤外ノイズ効果を低減できる可能性が出てきてしまう。そこで、越前研究室では、赤外カットフィルタがカメラに取り付けられた場合に、そのフィルタで反射される赤外線だけを盗撮防止ユニットで検知できる仕組みの開発にも成功している。この仕組みと警備システムとを連携させれば、盗撮した瞬間に警報が鳴り響き、盗撮者はその場で御用となるといった具合だ。

取材協力 :国立情報学研究所 越前研究室

掲載日:2011年9月14日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2011年8月3日掲載分

検索

このページの先頭へ