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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
光と熱のハイブリッド型発電デバイスとは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」は、従来はそれぞれ別のデバイスが必要だった光発電と熱発電(温度差による半導体発電)を、単一のデバイスで実現します。電池ナシに多様なセンサーの緻密なネットワークを構築してインテリジェントな社会インフラを実現する可能性を秘めた画期的な技術です!

1.「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」とは?

富士通研究所が開発した「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」は、人間の身の回りに遍在する「光」と、体温をはじめとする「熱」の両方のエネルギー源を、単一のデバイスで電気へと変換できる発電システムである。

P型半導体とN型半導体の接続を、光発電モードでは並列に、熱電モードでは直列にと変化させることで、光と熱のいずれからも電力を取り出せる仕組みである(図1)。これらの半導体は有機材料で作製されており、コスト面、環境負荷面でも優れた特徴を備えている。

図1 光と熱のハイブリッド型発電デバイスの仕組み
光と熱のハイブリッド型発電デバイスの仕組み

1つのデバイスが光発電モード(左)と熱電モード(右)の両方で動作

資料提供:富士通

1-1 ハイブリッド型発電デバイスは「エネルギーハーベスト」の基礎技術

地球環境を調査する環境センサや、航空機や産業プラントの運用状況を把握するワイヤレスセンサ、24時間健康状態チェックするためのヘルスモニタなど、さまざまなセンサが社会環境に配置され、これらをネットワークで結び、クラウドを初めとするデータベースに集約することで、従来では考えられなかった社会的なベネフィットを生み出すことが現在期待されている。そこで、こうしたセンサ群を活用していくICT(情報通信技術)において、課題となっているのがセンサの数だけ必要となる電源の確保である。

そこで考えられているのが、身の回りの光や熱、振動や電波といった量としては小さいエネルギーを「収穫」して、電気エネルギーに変換する「エネルギーハーベスト」という方法である(図2)。「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」は、エネルギーハーベストを行うための基礎技術であり、2つのエネルギー源を利用することで汎用性を高め、かつデバイスを単純化することでコストを削減するといった効果が期待できる。

図2 身の回りの小さなエネルギーを収穫
図2 身の回りの小さなエネルギーを収穫

資料提供:富士通

2.エネルギーハーベストの利用メリット

光と熱は、地球環境のほとんどの場所で利用でき、特に人間の生活の場には遍在するエネルギー源である。そこで「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」は幅広いシーンで活用することができると考えられている。

2-1 多彩な活用シーン

医療センシング

体温、心電図、脈拍など、医療の現場では多くのセンサーが活躍している。

図3 人の体温と環境光の両方を利用する例
図3 人の体温と環境光の両方を利用する例

資料提供:富士通

こうした医療用センサの電源として「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」を活用できれば、電池交換も不要なため、構造の単純化ができ、衛生上の管理も容易なセンシングの仕組みを実現することができるだろう。

ヘルスモニタ

医療からさらに進んで、日常的な生活の場にもセンシング技術を適用することも考えられている。

例えば、携帯電話をセンサのローカルホストとして活用し、絆創膏サイズの小型のセンサからの情報をクラウド上のサーバなどに集約すれば、医療以前の健康管理に活用でき、いわゆる「未病」の段階での予防的な医療を発展させることが可能になる(図4)。

健康な生活者の詳細なデータを集約することで、疫学的な知見も飛躍的に向上し、現在では発見できないようなごく初期の病気の兆候を発見して治療することも可能になるだろう。

図4 絆創膏サイズの無電源センサー
図4 絆創膏サイズの無電源センサー

資料提供:富士通

環境モニター

気象や地殻変動などを調査研究する地球科学において、重要な役割を果たすのが、気温や気圧や湿度などのデータを収集するセンサである。こうしたセンサの数を増やし、観測のメッシュサイズを細かくすることで、コンピュータの演算する気候モデルを緻密化することができ、より精度の高い予報や警報を実現することが可能になる。

例えば、ヒートアイランド現象に伴う都市型集中豪雨の予測には、現在のアメダスの 1kmメッシュでは足りないため、5mメッシュのセンシングが必要という話もある。メッシュサイズの二乗に反比例してセンサ数は増加するため、既存の電池などでは資源や環境負荷の問題が大きくなってくる。そこで「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」のようなエネルギーハーベストとセンサを組み合わせることで、ブレイクスルーをもたらすことが期待されている。

安全・安心技術への応用

東日本大震災以降、安全・安心を支える技術への注目が高まっている。原子力発電所のような巨大プラントの状態を、外部電源なしに常時モニタできるようなセンサネットワークが構築されれば、その安全に大きく寄与することは間違いないといえる。航空機を初めとする乗り物や、ビルなどの建物など、数多くの人の安全を左右する場所に、ローコストで外部電源不要なワイヤレスセンサーを稠密に配置することができれば、あらゆる危険の兆候を、未然に発見し、防ぐことも可能になるはずだ。

2-2 有機材料であることも大きな利点

従来の光発電はシリコンを材料にしており、熱電素子にはビスマスやテルルといった希少資源が用いられてきた。これらの資源は、需要の高まりとともに枯渇が懸念されており、コストも環境負荷も高い点が問題となっている。

一方、今回開発された「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」は、出力こそまだまだ実用段階にはないものの、有機材料から作製されているため、コストが安く(従来比 1/10以下)、軽量(従来比1/5以下)で、環境負荷も低い。有機材料は耐久性を高くすることが難しいが、逆に有機的に分解されるように設計することで、これは一方では環境中にセンサを無数に配置しても、環境負荷がなく、かつ回収の手間も省けるセンサネットワークを構築できる可能性も秘めている。

有機材料は安価な原材料から化学プロセスによる合成で大量生産が可能であるため、従来のセンサの常識を覆す大量投入と使い捨て型の利用方法も十分射程に入るだろう。農業などの従来経験に頼ってきた分野においても、センサを使ってデータを収集蓄積することで、予測可能な科学的アプローチを確立することも可能になる。

3.センサーネットワークとクラウドの作る未来

ここまでで述べてきたように、エネルギーハーベストとセンサーの組み合わせが、有機材料をつかって実現できれば、社会環境のあらゆる側面をリアルタイムで情報化し、継続的な分析と迅速な予測の対象とすることが可能になる。そして、センサ群から生み出される大量のデータを効率的にリアルタイムに蓄積しつつ、相互参照を自在に行うために注目されるのがクラウド技術である。

これまで人間の創りだす文章や写真などのデータの蓄積先として注目されてきたクラウドだが、センサ群が生み出す沢山の数値をインテリジェントに解釈しつつ蓄積し、世界中から理解しやすい形で利用できる仕組みをつくるにも、大きな役割を果たすことだろう。

「光と熱のハイブリッド型発電デバイス」の技術内容自体は、既存技術の延長であり、実用化に向けたハードルはさほど高くない。実用化時期として想定されているのは2015年頃。センサネットワークとクラウドのつくりだす未来は、思いの外すぐそこまで来ているのだ。

取材協力 : 富士通株式会社

掲載日:2011年6月29日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2011年5月25日掲載分

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