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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「量子ドットレーザー」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「量子ドットレーザー」は、DVDやブルーレイの読み書きや、光ファイバによる通信に用いられている半導体レーザーの性能を飛躍的に向上させるナノテクノロジーです。通信速度の向上はもちろん、消費電力が少なく、幅広い温度で安定した性能を発揮するため、装置の小型化や高効率化を実現する最先端の技術として、大きな注目を集めています!

1.「量子ドットレーザー」とは?

量子ドットレーザーとは、富士通研究所と東京大学の荒川研究室の産学連携で開発した、大きさがナノメートル(10億分の1メートル)サイズの半導体微粒子(量子ドット)を発光部に適用した半導体レーザーである。
 2010年5月には、量子ドットを従来よりも高密度に配列、積層することで、世界で初めて従来の2倍にあたる25Gbpsの高速データ通信に成功しており、100Gbpsを目指す次世代高速データ通信の光源としての適用が期待されている。

図1 量子ドットレーザー
N型/P型半導体の間の層にはさんだナノメートルサイズのとても小さい粒(10~20ナノメートルサイズ)「量子ドット」から発光する。

N型/P型半導体の間の層にはさんだナノメートルサイズのとても小さい粒(10~20ナノメートルサイズ)「量子ドット」から発光する。

資料提供:富士通研究所

一般の半導体レーザーでは、駆動電力の全てを光に変換することはできず、電力の一部は熱として放出されてしまうが、量子ドットレーザーでは、電子の動ける範囲を量子ドットによって制限することで、「量子効果」によって電子のエネルギーを高い効率で光へ変換することが可能になる。
 量子ドットレーザーは、温度変化による出力の変動が少なく変換効率に優れているため、光通信の低消費電力化と高速化を実現する次世代の光源として期待されている。

2.「量子ドットレーザー」の仕組み

現在実用化されている半導体レーザーでは、半導体をナノメートルサイズの薄膜にし、厚み方向の電子の動きを制限する量子井戸という構造を利用することで、変換効率や応答性の向上を図ってきた。

量子井戸では厚み方向のみ、すなわち一次元の方向にのみ電子を閉じ込めるが、これを3次元的に上下左右全ての方向で電子の閉じ込めを実現することで、より高い量子効果を発生させるのが量子ドットという構造なのだ。

図2 他の半導体レーザーとの比較
量子ドットでは、取りうるエネルギーの状態が極めて制限される(離散化)。

量子ドットでは、取りうるエネルギーの状態が極めて制限される(離散化)。

資料提供:富士通研究所

半導体レーザーの基本的な原理は、電圧をかけることで高いエネルギー状態の電子が、半導体の中を流れる際に低いエネルギー状態へとジャンプし、この際に、差分となる決まった量のエネルギーを、決まった波長の光として放出する現象を利用している。このとき電子が取りうるエネルギー状態が、発光する条件に当てはまるように制限されていればいるほど、電力を光に変換する効率が高くなる。

図3 発光の原理
図3 発光の原理

資料提供:富士通研究所

このように電子の位置を、半導体の物理的な構造によって制限し、量子力学的に電子のエネルギー状態を制限することで、量子ドットレーザーは優れた特性を実現しているのだ。

3.「量子ドットレーザー」の製造技術

量子ドットは10~20ナノメートルという極めて微細なサイズの構造が要求されるため、その製造にも高度な技術が要求される。

図4 量子ドットの製造方法
図4 量子ドットの製造方法

資料提供:富士通研究所

ガリウムヒ素の基板にMBE(分子線エピタキシー)という手法でインジウムとヒ素の原子をぶつけ、薄膜から凝集して、量子ドットを形成させる。
 具体的には、GaAs(ガリウムひ素)の基板の上に、In(インジウム)原子とAs(ひ素)の原子をぶつけ、基板上に薄膜を形成させ、一定の厚みのある膜から自己形成作用で丸いドットを作り出している。

この現象は、ガリウムひ素とインジウムひ素の原子が並ぶ間隔の違いから、インジウムひ素は、安定な結晶になることができず、接触面積がある程度大きくなるとインジウムひ素が自然に丸く集まる(凝集)現象を利用している。
 製造に用いるMBEという手法は、超高真空と呼ばれる超低圧な真空空間で、材料を蒸発させて薄膜を形成させる技術であり、膜の成長速度や温度などの条件を自由に制御しやすい点で他の成膜技術よりも優れている。
 膜の成長状態を精密にコントロールする必要がある量子ドットの形成には、MBEは最適の手法だが、宇宙空間並の超高真空の環境を必要とするため、量産のための技術的なハードルは低くない。

4.将来の展望と適応範囲

量子ドットレーザーは、従来の半導体レーザーを凌駕する優れた特性を持っている。変換効率が高いことはもちろん、温度による特性の変化も極めて少ないため、レーザーデバイス自体の小型化、冷却装置の簡素化などが可能であり、高速通信機器の維持管理コストの削減も期待できる。

図5 量子ドットレーザーの温度特性
温度による出力低下が少なく、発光を始める閾値も低い。

温度による出力低下が少なく、発光を始める閾値も低い。

資料提供:富士通研究所

従来の半導体レーザーと比較して、発光に必要な電流量が少ないのも特徴のひとつである。このことは、光通信において、より低電力、低発熱でコンパクトなシステムを構築できるメリットがある。90度以上の高温になっても発光効率が下がらないため、砂漠や熱帯などの高温環境においても空調設備なしで通信施設を敷設することも可能だろう。
 またレーザー自体の活用方法も、通信技術だけでなく、レンズによる集光を必要としない特性を生かし、小型プロジェクタに搭載するなど、幅広い範囲での応用が見込まれている。現在開発中の量子ドットレーザーの波長は、光通信に用いられる赤外線領域だが、波長を変換する素子などを用いれば可視光領域での応用も期待できるという。
 高効率で安定性が高く、小型化に適した量子ドットレーザーが、こうしたコンシューマ市場にも登場するようになれば、スマートフォンや携帯電話にプロジェクタ機能を搭載するなど、まったく新しい製品の可能性も広がってくる。

このように、量子ドットレーザーの機能、性能は、従来の半導体レーザーをあらゆる面で上回るもので、一日も早い製品化が望まれる。製品化に向けた1番の課題は、既述の通り、超高真空が必要となる製造工程を、量産に適したものへと改良することであろう。今後ますます需要が高まると予想される光ファイバによる高速通信網の中核技術として、量子ドットレーザーには多くの期待が寄せられている。

取材協力 :株式会社富士通研究所

掲載日:2010年10月13日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2010年8月25日掲載分

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