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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
1Gbps無線LAN「マルチユーザMIMO」とは?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「マルチユーザMIMO」は、無線LANの通信速度を1Gbpsまで高速化する次世代の通信技術。ギガビットLANの普及が進む中、無線LANにもさらなる高速化の波が訪れようとしています!

1.「マルチユーザMIMO」とは?

現在普及している無線LANは、1999年に標準化されたIEEE 802.11aやIEEE 802.11b、また IEEE 802.11bの上位規格として2003年に標準化されたIEEE802.11gといった標準規格に準拠している。さらに、2009年9月には、IEEE 802.11aとIEEE 802.11gの上位規格としてIEEE 802.11nという最新の標準規格が策定された。これらの標準規格は、短縮した11a、11b、11g、11nといった呼び方をされることも多い。現在最も多く利用されていると考えられるのは11gで、最大通信速度は物理レイヤにおいて54Mbpsであるが、最大実効スループットは25~30Mbps程度になる。

表1 各標準規格の通信速度
表1 各標準規格の通信速度

最新の規格である11nでは、最大実効スループットで100Mbps以上を実現している。11nでは従来の11aにおいて1チャネルあたり20MHzだった周波数帯域幅を倍の40MHzとし(チャネルボンディング)、さらにMIMO(Multiple Input Multiple Output)というテクノロジを用いることで高速通信を可能にしている。11nのMIMOは、1対1の通信を行うことから、シングルユーザMIMOと呼ばれる。シングルユーザMIMOでは、送信側は複数のアンテナから異なるデータ系列を同時に並行して送信するので、各アンテナからの電波は周辺の壁などに反射して様々な経路(マルチパス)を通って互いに干渉した状態で受信側に届く。受信側は複数のアンテナでこれを受信し、送信側と受信側の各アンテナ間の電波の到達経路の違いを用いて高度に信号処理し、各データ系列を分離する。これにより、同一周波数帯域における同時並列通信、すなわち空間分割多重通信を行うことができ、限られた電波の帯域を効率的に活用する仕組みとなっている。
 このため、送信側と受信側の両方のアンテナ数を増やすほど、原理的には同時並列通信数(空間ストリーム数)を増やすことができ通信速度が増加する。しかし、スマートフォンなどの携帯端末では、大きさやバッテリーなどの観点から、アンテナ数や、データ系列を分離するための信号処理能力が親機に比べて限定されるため、たとえ親機のアンテナ数を増加し通信能力を向上させたとしてもその能力を十分活用できずに、実効スループットが端末側の性能で頭打ちになってしまう課題があった。

図1 シングルユーザMIMOの基本的な仕組みと課題
図1 シングルユーザMIMOの基本的な仕組みと課題

資料提供:NTT未来ねっと研究所

このシングルユーザMIMOをさらに改良して、システムスループット1Gbps以上の通信を実現するキーとなるテクノロジが、マルチユーザMIMOである。2010年5月7日の発表によると、NTT未来ねっと研究所は、マルチユーザMIMOを用いて、1Gbpsを超えるデータをリアルタイムに信号処理して伝送する実験に、世界で初めて成功している。

図2 マルチユーザMIMO無線伝送装置
マルチユーザMIMO無線伝送装置

資料提供:NTT未来ねっと研究所

2.「マルチユーザMIMO」の技術

マルチユーザMIMO技術は、MIMOの技術をさらに発展させ、MIMOによる1対多の通信、すなわち空間分割多元接続通信を実現した技術である。
 マルチユーザMIMOは、同時に送信される複数の端末宛ての電波が互いに干渉しないように親機側で高精度な指向性のコントロール(ビームフォーミング制御)を行う。具体的には、親機が持つ複数のアンテナから送信する電波の位相や振幅を、親機と各端末間の電波のマルチパス環境に応じて、特定の端末宛ての電波が他の端末に届かないように調整する。これにより、シングルユーザMIMOで必要であった受信側での高度な信号処理を軽減できる。

図3 MIMO技術の高度化:マルチユーザMIMO
マルチユーザMIMO無線伝送装置

資料提供:NTT未来ねっと研究所

この高精度なビームフォーミング制御を各端末のアンテナ数などの通信能力に応じて行うことで、複数の端末との同時並列通信を実現し、親機の通信能力を最大限活用できることが、マルチユーザMIMOのポイントなのだ。これにより、親機のカバーする通信エリア全体のスループット(システムスループット)を親機の最大通信能力まで高めることができる。
 従来のシングルユーザMIMOでは1対1の通信が基本のため、親機に複数の端末が接続すると、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)により時間をずらして順次通信する。接続する端末が増えると、端末あたりのスループットが端末数に反比例する形で低下する。
 マルチユーザMIMOでは、携帯端末などのアンテナ数の少ない低速端末については、接続する端末数が増えるても、親機の最大同時並列通信数、すなわち最大空間ストリーム数までシステムスループットを増加させることができ、端末あたりのスループットは低下しない。また、多くのアンテナを備えるデスクトップ PCやテレビなどの高速端末については、空間ストリーム数を多く配分することで映像などの大容量データの高速通信を実現することができる。

3.「マルチユーザMIMO」の今後

マルチユーザMIMOの導入はIEEE802.11acの予定

無線LAN親機のアンテナ数を増やすことによって、周波数帯域、変調多値数を増加させることなくシステムスループットを向上させることができるマルチユーザMIMOは、無線通信の高速化、大容量化の切り札となる技術だと言える。原理的には親機のアンテナ数を増やすと最大空間ストリーム数が増え、システムスループットを向上させることが可能と考えられているが、前述の高精度なビームフォーミング制御に要する演算処理も膨大になる。
 こうしたシステムスループットと制御技術のバランスを考え、現在実用化に向けて検討されているのが最大空間ストリーム数8によるマルチユーザMIMOである。
   次世代無線LAN(IEEE 802.11ac)はシステムスループット1Gbpsを目標に、現在IEEE 802.11ワーキンググループ内の「TGac」というタスクグループによって標準化活動が進められており、NTTが研究開発を進めているマルチユーザ MIMOは、標準規格のコア技術となると見られている。現時点での標準化の完了予定は、2012年12月である。その頃には、いよいよ各家庭にギガビットクラスの無線LANが登場することになるだろう。

無線LAN親機間の干渉を回避

IEEE 802.11acでは、さらなる高速化のため、チャネルあたりの周波数帯域幅をIEEE 802.11nの40MHzから80MHz以上へと拡大する見込みである。チャネルの周波数帯域幅が80MHzへと倍増すると、必然的にチャネル数自体は減少する。したがって、マンションなどの環境では同一周波数帯を利用する親機が、現在以上に増えることが予測されている。そうした環境における親機間の干渉(セル間干渉)回避のコア技術としても、マルチユーザMIMOは期待されている。
 マルチユーザMIMOは、電波の伝搬特性を端末からフィードバックされる情報(チャネル推定情報)に基づいて動的制御する技術であるため、セル間干渉についても、同技術の応用によって回避することが可能だと考えられるからだ。
 周波数資源は有限であり、特にマイクロ波帯(携帯電話や無線LAN、Bluetoothなどで利用する周波数帯域)においては、すでに帯域の枯渇が予想されている。こうした高密度な通信環境下で、有線伝送とシームレスにつながる高速無線伝送を実現するために、マルチユーザMIMO は、今後重要な役割を果たすといえるだろう。

取材協力 : 日本電信電話株式会社 NTT未来ねっと研究所

掲載日:2010年7月28日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2010年6月16日掲載分

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