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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
殺菌ができる「ダイヤモンドLED」とは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「ダイヤモンドLED」。ただの照明として使うためのものではありません...紫外線による"殺菌"ができてしまうのです!半導体の王さまは「シリコン」ではなく、殺菌もできる「ダイヤモンド」!?

1.「ダイヤモンドLED」とは?

コンピュータの部品として使われているCPUやメモリなどの半導体は、シリコン(ケイ素)を使った半導体が一般的だが、その一方で、シリコン半導体よりもはるかに優れた特性を持つ究極の半導体として、人工ダイヤモンドを使用したダイヤモンド半導体の研究が進められている。その1つの研究成果として、独立行政法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)では、2006年の時点で、波長235nm(ナノメートル:ナノは10億分の1)の深紫外線を放射できるダイヤモンド LED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)の開発に成功している。
 そして、2010年、産総研では、独立行政法人 物質・材料研究機構と株式会社シンテックの協力を得ながら、ダイヤモンドLEDの高出力化(0.3mW)に成功した。
 今回開発されたダイヤモンドLEDの構造を図1に示す。このLEDは3つの層から構成されており、n層からi層へ負の電荷をもった電子が流れ込むと同時に、p層からもi層へ正の電荷をもった正孔(ホール)が流れ込む。その結果、i層には「励起子(れいきし)」と呼ばれる電子と正孔のペアが生成される。そして、この励起子が消滅するときにi層から紫外線が発生(発光)する仕組みだ。

図1 ダイヤモンドLEDの構造と発光スペクトル
図1 ダイヤモンドLEDの構造と発光スペクトル

資料提供:産業技術総合研究所

ダイヤモンドLEDが発光する光の波長を調べてみると、ピークの光の波長は235nmの深紫外線であることがわかる。ダイヤモンドLEDの発光の写真では、紫外線は見ることはできないが、同時に発光する弱い可視光の発光を確認できる。今回の実験では、発生した紫外線の多くは電極が邪魔になってLEDの外側まで取り出せていないにもかかわらず、紫外線の発光強度として0.3mWが得られた。

2.「ダイヤモンドLED」を殺菌に使用するワケ

では、この深紫外線を発光するダイヤモンドLEDを使って何ができるのだろうか?波長が350nm以下の紫外光源は、殺菌・浄水、高密度光記録用光源・蛍光分析などの各種情報センシング、医療・バイオ分野など、非常に幅広い分野で応用が進んでいる。例えば、殺菌の分野で見た場合、以下に示すように「熱による殺菌」や「化学薬品による殺菌」に比べて、「紫外線による殺菌」には多くのメリットがあり、すでにいろいろな場所で利用されている(殺菌装置の市場規模は4000億円程度)。

●熱による殺菌:殺菌したい対象すべてが高温になる。耐熱性の菌がある。
●化学薬品による殺菌:後に化学薬品が残る。
●紫外線による殺菌:直接DNAに作用し殺菌できる。耐熱性の菌にも有効。後に残らない。

ただし、紫外線による殺菌の現状を見ると、殺菌光源としてはおもに水銀ランプが使われており、以下のようなデメリットが指摘されている。

<水銀ランプの問題点>
環境に良くない水銀を使用している。
大掛かりな装置が必要で小型化が難しい。
割れると危険
短い寿命(数千時間)
高電圧(100Vから数100V)

このため、深紫外線を放射できるLEDの実現が望まれている。LEDなら以下のようなメリットを享受できるからだ。

<LEDのメリット>
水銀フリー
小型
割れない(安全)
長い寿命
低電圧(数Vから数10V)

現在のところ、深紫外線LEDの開発は、これまで青色LEDで成功した窒化ガリウム(GaN)系の半導体を中心に進められている。しかし、深紫外線領域のLEDにはアルミニウム原子を加えた AlGaN系や窒化アルミニウム(AlN)の化合物半導体を使用しなくてはならず、殺菌に有効な260nm付近の波長を持つLEDはまだ市販されていない。

図2 紫外線LEDの研究開発状況
図2 紫外線LEDの研究開発状況

資料提供:産業技術総合研究所

一方、ダイヤモンドは物質中最高の熱伝導率と硬度を持つだけでなく、その他にも優れた化学的特性、光学特性を兼ね備えている。そして、200℃以上になるような高温下でも波長が250nm以下の深紫外線発光が可能である。そこで、産総研の研究グループでは、高品質化や加工が困難なダイヤモンドの作製技術から電子デバイスに必要な技術に至るまで、10年以上に渡って蓄積してきた。その積み重ねに基づいて、高効率の紫外線発光に取り組み続けた結果、今回、ダイヤモンドのさらなる高品質化とデバイス構造の改良により、発光効率の向上に成功したのだ。

ダイヤモンドLEDの殺菌効果実証実験

この発光効率が向上したダイヤモンド LEDを使うことにより、殺菌効果が得られることを実証した実験の様子を図3に示す。この実験では、大腸菌を分散させた寒天の上方向およそ2mmのところにダイヤモンドLEDを置き、電流300mA(ほぼ0.1mWに対応)を100秒間照射し(実際には10ミリ秒当てた後、90ミリ秒休むというパルス的照射をするので、所要時間は1000秒)、照射後24時間培養して大腸菌の増殖の様子を見た。その結果、24時間後の写真が示すように、紫外線を当てた部分は大腸菌が増殖しておらず、ダイヤモンドLEDによる大腸菌の殺菌が成功したことが分かった。殺菌が行われた部分は10mm程度の円状で、電極の大きさである直径0.15mmの円から比べると、殺菌された領域は電極面積のおよそ1000倍にもなった。

図3 殺菌効果の実証
図3 殺菌効果の実証

資料提供:産業技術総合研究所

3.「ダイヤモンドLED」による殺菌の実用化へ向けて

ダイヤモンドLEDは小型化できるので、工場での利用が主であった水銀ランプとは異なり、医療現場や家庭での利用が可能になり、例えば内視鏡の先や歯科医での利用が期待できる。また、200℃以上の高温でも動作可能なので、高温環境の中で深紫外線を自由に放射させることができることになる。従って、ダイヤモンドLEDを使えば、高温下で紫外線による殺菌ができることになり、殺菌プロセスの簡素化にも役立つ。さらに、絶縁破壊電界はシリコンの約30倍、熱伝導率はシリコンの約13倍もあることから、過酷な環境での使用に耐える電子デバイスとしての利用も期待できる。  なお、今回開発されたダイヤモンドLEDの構造は、i層で発光した光のほとんどは電極に遮蔽されて内部で吸収されてしまい、電極の周りから漏れる発光だけによって殺菌されていることがわかった。実用的な殺菌能力を持つには1mW程度の出力を確保する必要があることから、今後、デバイス構造を改良することにより、発光強度をさらに増強していき、短時間での殺菌を実証し、ダイヤモンド紫外線LEDの実用化に繋げていく予定だ。

取材協力 : 独立行政法人 産業技術総合研究所

掲載日:2010年7月28日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2010年6月2日掲載分

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