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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「P2P観測システム」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します! 今回のテーマ「P2P観測システム」は、WinnyやShareなどのファイル交換ソフトウェアの利用状況を観測するシステム。著作権で保護されたコンテンツを違法に公開した逮捕者が続出するのはなぜなのか?その仕組みに迫ります!

1.「P2P」とは?

P2Pとはピア・トゥ・ピア(Peer to Peer)の略で、ネットワーク上の各ユーザが、特別なサーバなどを介さずに、おのおの直接通信するネットワークのアーキテクチャである。ファイル交換用のShareやWinnyといったソフトウェアが存在し、それぞれ独自のプロトコルを使って、各ソフトウェアのノード(末端)が協調的に動作することで、巨大なネットワークを構成し、多数のユーザの保有ファイル情報を交換しつつ、任意のファイルを探して、ダウンロードすることが可能となっている。
 P2P自体は、ファイル交換のためのネットワークに過ぎなく、その利用自体は違法でないが、その性質上、著作物の無断アップロード&ダウンロードの温床となっている。MP3などの音楽ファイルから、DVDのリッピングデータ、有料のソフトウェアパッケージまで、幅広い著作権に守られたコンテンツが、P2Pで違法に流通していることから、これまでに複数の逮捕者が出ている。
 2004年には、Winnyの開発者である元・東京大学大学院情報理工学系研究科助手の金子勇氏が著作権侵害行為幇助の疑いで逮捕されたが、氏の行為の違法性については未だ議論が続いており、裁判も継続中。2009年10月8日、大阪高等裁判所は一審判決を破棄し、無罪を言い渡し、同年10月21日、大阪高検は判決を不服として最高裁判所に上告している。

2.P2Pの通信を観測する方法

P2Pの通信は、各ノードが隣接するノードと「キー情報」と呼ばれる「ファイルの情報とそれを持つノードの情報」をやり取りして行われる。

図1 P2Pファイル交換ソフトウェアの一般的な動き
図1 P2Pファイル交換ソフトウェアの一般的な動き

キー情報には「ファイルの情報」と「ファイルを持っているノードの情報」等が含まれており、各ノードはこの情報を頼りにファイルをダウンロード

資料提供:資料提供:クロスワープ

P2Pのネットワークは、クライアントサーバ方式ではないため、最終的なデータ通信は、通信する相手のIPアドレスやTCPポート番号などを特定して、直接接続して行う必要がある。キー情報自体がどれほど暗号化されていても、通信時にはデコードするため、P2Pファイル交換ソフトウェアの通信方式を解析するなどすれば、キー情報に含まれるIPアドレスとアップロードしようとしているファイル名などの情報を紐付けて、明らかにすることができるのだ。

こうしたネットワークを、P2Pファイル交換ソフトウェアと同じ通信方法を実装した一種のロボットで巡回していくことで、ネットワークの観察を行うことができる。こうしたデータ収集プログラムのことを「クローラ」と呼ぶ。

図2 P2P観測システムの仕組み
図2 P2P観測システムの仕組み  

P2Pソフトウェア同士でやり取りされているキー情報やノード情報を取得し、その情報を頼りに次々と別のノードに接続、P2Pネットワークを巡回

資料提供:資料提供:クロスワープ

株式会社クロスワープの開発した「P2PFINDER」というシステムでは、複数のクローラを並列で実行することで、WinnyやShareといった主要なP2Pネットワークのノードおよび保持ファイルを短時間に高い確率で検出し、観察することに成功している。

図3 P2P観測システム「P2PFINDER」のカバー状況
図3 P2P観測システム「P2PFINDER」のカバー状況  

「P2PFINDER」では、複数のクローラを並列で稼働させることにより、ノードやファイルを短時間に高い確率で検出することができる。

資料提供:資料提供:クロスワープ

同社のシステムは、あくまで著作者の依頼に基づいた観測と報告だけを目的としているため、違法なアップロードを観測したとしても、これを通報するものではない。
 しかしながら警察庁では、2010年1月1日からP2P観測システムの運用を正式に開始したという。そのシステムの仕組みが今回紹介したものと同じとは限らないが、各ネットワークのノード及びキー情報は現在進行形で蓄積され、解析が行われている可能性がある。
 P2Pネットワークでは一次配布者(最初に該当ファイルをアップロードした人)の特定が難しいとされてきたが、連続的に十分大規模な観測と記録が行われれば、ネットワーク内に存在するファイルがコピーされ増殖する過程をさかのぼることで、一次配布者を特定することは可能なのだ。利用すること自体に違法性はなくとも、合法非合法を問わずほとんど全てのアクセスが、さして複雑でない方法で、観測可能であり、記録されている可能性が高いことは知っておいた方がよいだろう。

3.P2Pネットワークに潜む危険

マルウェア感染の危険性

前述のように、P2Pソフトウェア自体は合法的に利用することが可能であり、技術的にも優れたネットワークだが、そこに流通するデータには高い確率で違法なものが含まれ、かつ悪意を持ったユーザによるマルウェアが仕掛けられたファイルも多い。
 株式会社クロスワープの調査によれば、P2Pで流通するファイルのほとんどがZipやRAR、LZHといった圧縮ファイルであり、そのうち、Winnyでは約2割、Shareでは3%がマルウェア入りであるという。こうしたマルウェアは、Winnyなどのネットワークを通じてユーザのマイドキュメントやデスクトップに保存されたファイルを流出させるなどの動作をし、企業の保有する個人情報や機密情報の流出といったトラブルを引き起こしている。
 いかに利便性が高く、合法的な利用方法があるとしても、悪意あるノイズが多く含まれるP2Pネットワークは、現状のままではビジネスニーズにそぐわないばかりか、個人での利用もまったくお勧めできないと言わざるを得ないだろう。

一般化するP2Pネットワーク

WinnyやShareは、日本で開発され、利用者のほとんどが日本在住という日本独自のP2Pネットワークであり、法的整備が進む中で利用者は減少傾向にある。一方、世界全体では匿名性などを考慮しないオープンソフトウェアによるP2Pネットワークが普及している。

最も利用者数を伸ばしているのがGnutellaというP2Pネットワークの通信方式で、ネットワークのプロトコル自体が完全にオープンであるため、多数のサーバントが開発されている。その殆どがオープンソフトウェアとしてGNUおよびGPLライセンスで配布されており、入手も容易なため、全世界に普及している。日本でも「Limewire」や「Cabos」というソフトウェアの利用者が多くなっている。

図4 GnutellaとWinnyの違い
図4 GnutellaとWinnyの違い

資料提供:資料提供:クロスワープ

また、商用のファイル配布にも用いられるBitTorrentも、世界的にポピュラーなP2Pネットワークの1つである。
 Gnutellaのユーザ層はiTunesなどを通じたデジタル音楽コンテンツ利用者が多く、流通するファイルもMP3などの音楽ファイルが数多くアップロードされている。また、ソフトウェアの配布サイトが整備されており、有料版もあるなど、違法行為が簡単に行えるようなソフトウェアには全く見えないため、若者を中心に違法性をほとんど意識せず、気軽に利用するユーザが増加しているという。
 著作権侵害は刑事罰の対象ではあるものの親告罪(著作権者による告訴がなければ、検察官は公訴を提起することができない罪)であり、侵害行為が自覚のない多数の人々によって気軽に行われてしまうと、告訴対象が拡散してしまって法的な措置をとることは困難である。コンテンツ自体が合法なのか違法なのかも、ユーザ自身で判断するのは難しい。例えばYouTubeにアップロードされたプロモーションビデオなどでさえ、著作者自身がアップロードするものもあれば、違法コピーにあたるものもあり、それをコンテンツ自体から判断することはほぼ不可能である。
 こうした著作権侵害にまつわるP2Pネットワークの混乱した状況は、今後の法整備によって改善されていくことだろう。現時点でいえるのは、P2Pネットワークは決して安全ではないこと、そしてその観測手法はすでに確立されており、違法行為は高い確率で発見、記録されること、こうした点を踏まえて、安易な利用は控えるべきである、ということだろう。

取材協力:株式会社クロスワープ

掲載日:2010年7月14日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2010年5月26日掲載分

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