本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > デジ・ステーション

デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「盗撮防止技術」ってなんだ!?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「盗撮防止技術」。盗撮した映像にだけノイズが映り込んでしまうというお話。この技術が採用されれば、もう映画館で盗撮防止のCMを流す必要はなくなるかもしれません!

1.「盗撮防止技術」とは?

盗撮防止技術とは、スクリーンやディスプレイに表示された映像の盗撮を防止するための技術のことだ。本稿では、国立情報学研究所の越前 功准教授がシャープと共同で開発した最新の盗撮防止技術を中心に解説を進めていく。
 これは人間とデバイスの分光感度特性の違いに着目して開発された技術で、人の視覚に影響を与えないノイズ光源を用いて、撮影映像にノイズを重ねることで盗撮を防止することができる。既存のデジタルビデオカメラに新たな機能を追加する必要はなく、早期の実用化が期待されている。

人間とデバイスの感度の違いを利用した映像の盗撮防止方式

図1は人間の目とデジタルビデオカメラの撮像素子(イメージセンサなどのデバイス)による感知可能な光の領域を表した概念図である。一般的にイメージセンサやマイクロフォンなどのデバイスは、人間の視覚や聴覚特性に合わせて設計されているが、デバイスの特性上、完全に一致させることは不可能なため、図中の2つの領域に差異が生じている。本技術は図中の青色部分の領域に相当するノイズ信号を生成することで、人間の目による視聴には一切影響を与えずに、デジタルビデオカメラによる撮影時だけに映像品質を劣化させることで、映画などのコンテンツの盗撮を防止する。

図1 人間とデバイスによる感知領域の概念図
図1 人間とデバイスによる感知領域の概念図

資料提供:国立情報学研究所 越前研究室

図2に、国立情報学研究所で開発された映画の盗撮防止システムを紹介する。近赤外線によるノイズ光源が映画用100 インチスクリーンの背面に組み込まれており、これをプロジェクタで投影する仕組みだ。ノイズ光源は9個のユニットから構成されており、1ユニットは18個の赤外LEDで構成されている。この前面には短波長カットフィルタが、後面にはファンが取り付けられている。このノイズ光源は点滅調整回路により点滅するようになっているが、これはBartley効果(断続光(フリッカ光)が10Hz(1秒間に10回)前後のときに、断続光がもっとも明るく見えるという人間の視覚効果のこと)を利用することでノイズ効果を高めるためである。

図2 盗撮防止システムの仕組み
図2 盗撮防止システムの仕組み

資料提供:国立情報学研究所 越前研究室

映画用スクリーンには音響と映像を一体化させるために、スクリーン全体に直径1~2mm の無数の穴(ホール)が空いており、このホールを通してスクリーン背面に設置したスピーカーから観客席に音響信号が伝わるようになっている。本システムの近赤外線光源はこれらのホールを通してノイズ光を照射することができる。従って、実際に映画館に本システムを導入する際にも、スクリーンには何も手を加えることなく、システムを組み込むことが可能だ。

図3 スクリーンに取り付けた盗撮防止システム
図3 スクリーンに取り付けた盗撮防止システム

資料提供:国立情報学研究所 越前研究室

図4 盗撮画像
システム作動中のスクリーンに映像を投射し、それをデジタルカメラで撮影するとノイズ光が映る(図の場合は9つの光)。

システム作動中のスクリーンに映像を投射し、それをデジタルカメラで撮影するとノイズ光が映る(図の場合は9つの光)。
(クリックすると大きな画像が表示されます。)

資料提供:国立情報学研究所 越前研究室

そして、この装置が組み込まれたスクリーンの映像をデジタルカメラで撮影すると、図4のように、カメラで撮影した映像にはノイズが撮影される。

なお、ノイズ信号としては、紫外線と赤外線という2つの選択肢があるが、ノイズ信号は人間の目にも入ることからその安全性が問われることになる。紫外線の場合、長時間使用すると皮膚、目、免疫系への疾患の恐れがあることが知られており安全性に問題がある。これに対し、赤外線は安全性が確保されており、放射角度が大きく(映画館のどこの位置でも妨害可能)、発熱が少ない(光源の高寿命、コンパクト化)といった優位性も持っていることから、このシステムでは近赤外LEDがノイズ光源として採用されている。

2.「盗撮防止技術」開発の背景

映画の盗撮問題

「映画の盗撮の防止に関する法律」によると、映画の盗撮は「映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われる映画について、当該映画の影像の録画又は音声の録音をすること」と定義されている。最も典型的な盗撮行為は映画館で観客がデジタルビデオカメラを使ってスクリーンに表示された映画を撮影する行為だ。
 米映画協会(MPAA:Motion Picture Association of America)は、映画の海賊版によってエンタテイメント業界が年間30 億ドルの損害を被っていると推定している。また、日本国際映画著作権協会によると、映画の盗撮による損害額は国内だけで約180 億円(2005年)と推定している。同年の日本における映画興行収入が約1980 億円であったことから、海賊版の流通が興行収入を1 割近く減少させている可能性がある。さらに、海賊版の流通により映画館の観客数やビデオソフトの販売・レンタルの売上げが減少し、映画業界は多大な損害を受けているといわれている。
 こうした状況に対し、映画業界では「盗撮防止キャンペーン」「手荷物検査、巡回・監視の強化」などの対策を実施しているが、映画館従業員の人手不足などにより対策には限界がある。また、法律による対策として、2007年8月に「映画の盗撮の防止に関する法律」が施行され、盗撮者に10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方を科すことになり、これまで著作権では取り締まることができなかった私的使用を目的とした録画・録音も取り締まることができるようになった。しかし、この法律では「盗撮防止のための努力規定」も設けられており、これは法律による対策の限界を示している。これを裏付けるように、法律施行後も以下のような盗撮行為が依然として行われているのが現状だ。

●崖の上のポニョ:公開後2週間で中国の動画共有サイトに流出(2008/7)
●エヴァンゲリオン新劇場版:公開後3週間で中国の動画共有サイトに流出(2009/6)
●ハリー・ポッターと謎のプリンス:ファイル共有ソフト「Share」で、海外で盗撮された映画が流出(2009/8)
盗撮の従来対策

一方、技術的対策としては、DRM (デジタル著作権管理:Digital Rights Management)などの不正コピー防止技術が開発されているが、これはスクリーンやモニタに表示されたアナログコンテンツは対象外であり、盗撮対策としては無力である。また、電子透かしによる盗撮抑止技術(映像に埋込んだ電子透かしにより盗撮映画館/盗撮時間を特定したり、音源に埋め込んだ電子透かしの強度を解析して盗撮位置を推定したりできる技術)も開発されているが、これらの技術は盗撮を抑止する効果はあるものの防止することはできない。
 さらに、これらの従来方式で盗撮行為を防止するためには、撮影機器に電子透かしの検出器と記録制御器からなる盗撮防止機能を組み込むことが必要になるが、市場に流通している全ての撮影機器に当該機能を組み込むことが前提となるため、従来方式による盗撮防止は現実的に不可能である。

3.「盗撮防止技術」実用化への道のり

今回新しく開発された盗撮防止技術は、既存の映画館に設置されている設備に付加するだけで簡単に導入可能なことから、実用化までにはそれほど時間はかからない。2、3年後の商品化が期待されている。システム自体もそれほど高価なものにはならず、数十万円で実現できそうだ。
 また、この技術は映画館での盗撮行為の防止に役立つだけでなく、デジタルサイネージなどの様々な表示媒体の著作権や肖像権の保護に役立つ技術としても期待されている。
 今後の検討課題としては、さらにノイズ(妨害)効果を向上させるための「ノイズ光源の配置方法」や「点滅パターンの複雑化」に関する研究が必要だ。また、映画館のスクリーンだけでなく、液晶ディスプレイやLEDディスプレイに映し出される映像への適用なども検討されている。

取材協力:国立情報学研究所 越前研究室

掲載日:2010年6月23日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2010年5月12日掲載分

検索

このページの先頭へ