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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「宇宙太陽光発電システム」ってなんだ!?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「宇宙太陽光発電システム」。宇宙空間にも宇宙船や人工衛星のためのガソリンスタンド(充電スタンド?)ができるかも?!

1.「宇宙太陽光発電システム」とは?

宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power Systems)とは、宇宙空間に太陽光の大規模集光装置を設置して、太陽光エネルギーをマイクロ波またはレーザー光に変換して地球に伝送し、電力として利用するシステムのこと。国内では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とした大学および国立研究所の研究者により研究が進められている。
 SSPSは、地上約3万6000kmの静止軌道上に設置された「宇宙プラント」と「地上・海洋プラント」から構成されている。宇宙プラントでは、太陽エネルギーを収集し、マイクロ波またはレーザーに変換して地上に伝送する。地上・海洋プラントでは、送られてくるマイクロ波またはレーザーを受けて電力または水素に変換する。まずは、マイクロ波SSPSとレーザーSSPS、それぞれの仕組みについて解説しよう。

マイクロ波SSPS
図1 マイクロ波SSPS(M-SSPS)
図1 マイクロ波SSPS(M-SSPS)

資料提供:JAXA

マイクロ波SSPSの宇宙プラントは主に反射鏡と発電送電モジュールから構成されている。まず、反射鏡を利用して、太陽光を常に太陽電池面に導く。このとき、反射鏡は常に太陽光を指向する姿勢をとり、反射鏡を集光型にすることで、太陽電池面に入射させる太陽光の密度を高めることができる。地上で100万kWの電力を得るためには、宇宙プラントに設置する反射鏡は直径2km~3kmの大きさが必要になる。

発電送電モジュールは太陽電池、マイクロ波発振回路、送電アンテナの3つからなり、送電アンテナの裏の面にマイクロ波発振機器や回路が収められている。太陽電池により発生した電気エネルギーがマイクロ波発振器によりマイクロ波エネルギーへと変換され、反対面の送電アンテナから送出される。送電アンテナは常に地球に指向するように制御され、マイクロ波は地上の受電設備に向けて伝送される。1つの発電送電モジュールは一辺が数メートルの大きさで、このモジュールを多数組み合わせることにより直径2km~3kmの太陽電池面/送電アンテナ面を形成する。このシステムで利用するマイクロ波は電子レンジなどで使われている電磁波の一種であり、エネルギーを伝送する媒体として利用することができる。現時点では、産業、科学、医療用に割り当てられている2.45GHz帯または5.8GHz帯(雲や雨の影響を受けにくい周波数帯)が使用される予定になっている。

地上・海洋プラントでは、受電アンテナを使ってマイクロ波を受信し、これを整流することで電気エネルギーを取り出す。地上の受電設備を直径2~3kmの規模にすれば100万kW程度(原子力発電所1基分相当)の発電を行うことができる。

レーザーSSPS
図2 レーザーSSPS(L-SSPS)
図2 レーザーSSPS(L-SSPS)

資料提供:JAXA

レーザーSSPSの宇宙プラントは集光鏡と放熱板、レーザー発振ユニットから構成されている。集光鏡を使って500~1000倍という高倍率に集光した太陽光をレーザー発振ユニットに導くようになっている。1つのユニットのレーザー出力を1万kWとすると、一次集光鏡の大きさは1枚あたり200m×200m程度となる。

レーザー発振ユニットでは高倍率の太陽光が入射するため、発生した熱を排熱するための放熱板が必要となる。1万kWのユニットでは、100m×200m程度の放熱板を2枚設けることにより排熱を行う。レーザー発振ユニットでは太陽光が直接レーザーの増幅エネルギーに利用される。途中で電気に変換される過程がないため、高い効率(20%)でレーザーを発振させることが可能だ。伝送に用いるレーザー波長は、大気での吸収が少ない1064nmの近赤外が使用される。
 地上・海洋プラントでは、マイクロ波の場合とは異なり受電アンテナは不要で、光電変換素子を使って軌道上から伝送されるレーザーを効率よく電力に変換する。なお、レーザーSSPSの場合、地上で受光されたレーザーは、燃料電池の燃料となる水素の製造に活用される予定だ。水素生成方式としては、光触媒による光分解方式と、光電変換素子による電気分解方式が検討されている。

2.「宇宙太陽光発電システム」開発の背景

SSPSのような宇宙空間における太陽光発電という構想は決して新しいものではない。1968年、米国のピーター・グレイザー博士が宇宙太陽光発電所(SPS:Solar Power Station)という名称で提案したのが始まりである。この提案を受けて当時のNASAでは具体化に向けた検討作業に入ったが、途中で緊縮財政などの影響を受けて中断された時期もあった。しかし、石油資源の枯渇に対する懸念や、地球温暖化をめぐる環境問題の浮上とともに、SSPSは究極のクリーンエネルギーとして再び注目を集めるようになってきたのである。  ここで、SSPSが他のエネルギーシステムよりも優れているポイントを整理してみると、次のようになる。

地球環境に優しい

化石燃料を利用する発電システムと比べ、宇宙エネルギーシステムの二酸化炭素排出量は一桁程度低い。また、原子力発電のように核廃棄物を出さない。

安定供給が可能

太陽エネルギーは地上でも利用可能だが、地上では夜間や雨天の日には太陽エネルギーを利用することができない。これに対し、宇宙ではほぼ24時間、365日太陽エネルギーを利用することができる。また、太陽エネルギーは宇宙から地上へ到達するまでに約70%減衰することから、太陽エネルギーの利用を比較すると約10倍程度宇宙のほうが有利となる。地上での太陽電池は、30年間運用で製造の際に投入したエネルギーの5~9倍のエネルギーしか生成できないが、SSPSでは、30年間運用で投入エネルギーの34倍ものエネルギーを生成することができるのだ。

枯渇する心配がなく、日本でもエネルギー輸出国に

太陽エネルギーは半永久的に利用可能で、化石燃料のように枯渇する心配がない。この無限のエネルギーを科学技術により利用可能にすれば、エネルギー資源の少ない日本でもエネルギー輸出国になれる可能性がある。

すぐれた安全性

SSPSで地上に送るマイクロ波やレーザーは、鳥や航空機への影響がないことが確認されているレベル以下のものが使用される。また、地上の受電部/受光部の内部に人が入れないように管理を行い、その外のエリアでは、人体の安全性に問題はないと考えられている基準値以下になるように設計されている。例えば、原子力発電所内やダム湖などの施設に地上プラントを設置するなどの方法が考えられる。

 

ここで、1つ不思議に思う点があるかも知れない。それは、なぜ静止軌道上にあるSSPSに太陽光が常にあたっているのかという点だ。その答えは、地球の自転軸である地軸が23.4度傾いているからである。この傾きのおかげで、赤道上空高度3万6000kmにあるSSPSの宇宙プラントは春分、秋分の一時期を除いて地球の陰に入ることなく、1年を通じて太陽光を受けることができるのである。

図3 静止軌道上のSSPS
図3 静止軌道上のSSPS

資料提供:JAXA

3.「宇宙太陽光発電システム」実用化への道のり

SSPSは2030年頃の商用化開始を目標に研究が進められている(図4参照)。まずは宇宙空間で発電した電力を現在運用中の人工衛星に供給する「宇宙ガソリンスタンド」の開発を目指す。そして2030年頃には、100万kW級のSSPSの完成を目指している。すでに地上での電力伝送実験が行われており、JAXA角田宇宙センターでは、500mの距離でレーザーによるエネルギー伝送実験が続けられている。また、今後3年程度を目途に、大気圏での影響やシステム的な確認を行うために、「きぼう」(国際宇宙ステーションのJAXA実験棟)や小型衛星を使った軌道上の実証実験にも着手する予定だ。
 実用化までには、まだまだいろいろな障害を乗り越えなければならないが、その中でも特に大きな課題は宇宙プラントの機材を如何にして打ち上げるかだ。SSPSの宇宙プラントは100万kW 級になると1万トンにもなるが、現在のH-IIBロケットでは1回あたり8トン程度しか打ち上げられない。そこで、スペースシャトルのような有人型ではなく、物資輸送専用の再使用型ロケットの開発動向もSSPS実用化の1つの鍵を握っている。

図4 SSPSのロードマップ
図4 SSPSのロードマップ

資料提供:JAXA

取材協力 :宇宙航空研究開発機構

掲載日:2010年5月12日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2010年04月07日掲載分

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