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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
石英ガラス半永久ストレージってなんだ!?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「石英ガラス半永久ストレージ」は、数十万年から数億年!という超長期間に渡ってデータを保存できるストレージ技術。ビジネスから行政、学術、文化、芸術まで幅広い分野の記録媒体が、紙からデジタルデータへと急速に移行している現在、デジタルデータの長期保存技術の切り札として、大きな注目を集めています!

1.「石英ガラス半永久ストレージ」とは?

「石英ガラス半永久ストレージ」とは、日立製作所中央研究所が開発した技術で、耐熱性・耐水性に優れている石英ガラスの内部に、デジタルデータを超短パルスレーザー(フェムト秒レーザー)で刻印することにより、半永久的なデータストレージを実現するものである。

この方法で書き込まれたデータは、極めて高い保存性を発揮するため、デジタルデータの半永久的な保存方法として、有望視されている。

図1 製品のイメージ
石英ガラスの内部にレーザーを用いて3次元的にデジタルデータが記録される。

石英ガラスの内部にレーザーを用いて3次元的にデジタルデータが記録される。

資料提供:日立製作所

3億2千万年ものデータ保存が可能!?

以下のグラフは、700℃と900℃という高温での加速試験の結果、それぞれ記録されたビットのコントラストが1db(デシベル)下がるのに45分と9分、さらに3db下がるのに212分と26分が経過したことを示している。
 これを基に、室温が27℃のときの劣化時間を予測すると、コントラストが1db低下するのは11万年後となり、ほぼ半永久的な保存性を示すこととなる。また、3db程度のコントラストの低下であれば、データの読み出しが不可能になることはないため、この場合の保存可能年数は、3億2千万年となり、人類の歴史を大幅に上回る超長期間のデータ保存が可能となる計算だ。

図2 記録データ劣化の加速試験結果
縦軸が時間、横軸は絶対温度の逆数。高温での劣化時間から、室温27℃(300K:ケルビン)における、データ寿命を予想できる。

縦軸が時間、横軸は絶対温度の逆数。高温での劣化時間から、室温27℃(300K:ケルビン)における、データ寿命を予想できる。

2.「石英ガラス半永久ストレージ」の特長

LEDを用いたシンプルなデータ読み出しシステム

「石英ガラス半永久ストレージ」のもう1つの重要な特長は、書き込まれたデータを、デスクトップサイズの簡便なシステムでも、読み取ることができる点にある。

図3 試作した可視光断層撮影装置
LEDの光を平行光線として石英ガラスストレージに照射し、光学系とカラーフィルターで散乱光を除去。ストレージを3度ずつ回転させて、-39度から+39度の27枚の投影画像を基に断層画像を得る。※コリメータレンズとは、光源を焦点におき、平行光を得られるように収差補正されたレンズのこと。

LEDの光を平行光線として石英ガラスストレージに照射し、光学系とカラーフィルターで散乱光を除去。ストレージを3度ずつ回転させて、-39度から+39度の27枚の投影画像を基に断層画像を得る。
※コリメータレンズとは、光源を焦点におき、平行光を得られるように収差補正されたレンズのこと。

資料提供:日立製作所

LEDを光源とした平行光線をストレージへと照射し、これを後ろの光学系を用いて2048pixel×2048pixelの白黒CCDへと拡大投影して、角度の異なる27枚の投影画像を撮影する仕組みである。
 3度刻みで回転させた投影画像を得るに当たっては、図4のように、石英ガラスの屈折率の関係上、得たい撮影角度に屈折率を乗じた角度までストレージを多く回転させることになる(回転角度の補正)。

図4 記録媒体の断面図
屈折の影響で、実際の投影角度θiを得るには、θi×石英ガラスの屈折率=θaまで回転させる

屈折の影響で、実際の投影角度θiを得るには、θi×石英ガラスの屈折率=θaまで回転させる

資料提供:日立製作所

こうして得た27枚の画像を画像処理で合成することで、断面図を再構成することができる(断層撮影)。下の図では、17×17のbit(レーザーによる書き込み有無で表される0/1データ)で表された、横線と市松模様のデータが、画像処理によって再構成されている。

図5 復元したデータの断面画像
図5 復元したデータの断面画像

資料提供:日立製作所

現時点で実験に用いられているのは、30mm×30mm×5mmの石英ガラスサンプルの中央部、1.6mm×1.6mm×1.6mmのキューブ状のエリアに、17bit×17bit×17bitのデータを記録し、これを読み取るシステムである。各ビットの間隔は100マイクロメートル(0.1mm)で、ビット自体は、50マイクロメートル(0.05mm)の大きさで書き込まれている。
 この方法は、特殊なレーザー等ではなく、LEDによる可視光線を用いているため読み取りによるストレージの劣化の心配が少ない。また、原理が単純であるため、10万年といった長期間を経ても、特殊な回転装置や制御機構が不要なため、読み出し技術の再現が容易だと考えられている。

3.「石英ガラス半永久ストレージ」開発の背景

集積度と技術的な永続性のバランス

今回開発された「石英ガラス半永久ストレージ」は、30mm×30mm×5mmの石英ガラスのチップに、17の3乗ビット、すなわち4.8Kbit(=600Byte)のデータを記録するものである。当然のことながら、4.8Kbitでは今日のデータストレージの要求に応えるにはあまりにも容量が小さい。実用化に向けた技術目標としては、少なくともDVD程度の情報量を記録することが検討されている。
 また意外に思えるが、情報の記録密度を上げること自体は、フェムト秒レーザーを利用した微細加工技術を用いれば、難しいことではない。しかし、「石英ガラス半永久ストレージ」が目指しているのは、現在の技術水準の限界ではなく、将来に渡って技術伝承が途絶えた場合にも、極端なハイテクノロジーや機械制御技術なしに、データの読み出しが可能な記録方法なのである。
 文明の盛衰は、人類の歴史の必然であり、人類全体の技術水準が後退する局面も当然ありうる。こうした予想のもとに本システムは開発されている。オーバーテクノロジーになってしまっては、本末転倒なのだ。

超長期デジタルデータ保存の必要性

現在実用化されているデジタルデータの保存方法は、耐久性に優れていると考えられている光ディスクでさえ、100年程度の寿命だと考えられている。従って、データの長期保存を行うには、数十年ごとにデータのコピーを行う必要がある。
 また、かつて広くアーカイブ用途に用いられていたDAT(デジタルオーディオテープ)やMOディスク(光磁気ディスク)などのメディアを、前例として挙げることができるが、旧世代メディアの衰退速度はハードウェア(メディアドライブ)とソフトウェア(ドライバソフトウェア)の両方において極めて速く、ともするとデータ自体は残っていても、読み出しデバイスの調達コストが高すぎて利用できないといった事態も発生しうる。
 日常的な業務においては、その時点で広く普及する高密度メディアを用いるのがコストと利便性の両面において優れているが、重要な成果物や記録をアーカイブするにあたっては、最先端技術ではなく、将来に渡って利用可能なことが保障できる単純で堅牢なストレージ技術が求められる。
 今後、広い分野でデジタルデータの長期保存が必要とされるだろうことは疑いようのない事実であり、そのためには、信頼性が高く、かつ汎用性のある技術が必要不可欠である。「石英ガラス半永久ストレージ」が、その有力な候補のひとつであることは間違いないといえるのではないだろうか。

取材協力 :株式会社日立製作所

掲載日:2010年4月28日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2010年03月17日掲載分

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