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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「ジェスチャーリモコン」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「ジェスチャーリモコン」は、テレビのチャンネルや音量をリモコンなどの装置なしに、簡単な手振りによるジェスチャーだけで操作できる技術。テレビだけでなく、エアコンの温度設定や室内照明の明るさなども、ジェスチャーでコントロールできる時代がやってきそうです!

1.「ジェスチャーリモコン」ってなんだ!?

1-1 「ジェスチャーリモコン」とは

図1 ジェスチャーリモコン操作の様子
日立製作所の開発したジェスチャーリモコン

日立製作所の開発したジェスチャーリモコン
(クリックすると大きな画像が表示されます。)

ジェスチャーリモコンは、日立製作所が開発した新しいテレビ用のユーザインターフェース。ユーザの動きを特殊なカメラで認識することで、リモコンいらずのチャンネル操作を実現する仕組みである。


ジェスチャーをインターフェースに活用する試みとしては、マウスのドラッグ動作にコマンドを割り当てるマウスジェスチャーなどがWebブラウザなどで普及しつつある。また、SF映画などでは、しばしば同様のシステムが描かれており、そのイメージについては広く知られている。任天堂のWiiや、アップルのiPhoneなどに搭載されている加速度センサを用いたインターフェースも一種のジェスチャーインターフェースだと言えるだろう。しかしながら、コントローラなしに人間の動作を認識して操作する仕組みは、現在のところ製品として登場していない。


そういう意味で、日立製作所の開発したジェスチャーリモコンは、最新のユーザインターフェースの1つと言えるだろう。

見つからない、多すぎる、といったリモコンの問題点を解消

テレビのリモコンに関する意識調査*において、ユーザが不満に感じていることの上位には次の2点が挙げられている。

(1) リモコンがどこにあるかがわからなくなる。
(2) リモコンが多くて置き場所に困る。

*株式会社アイシェア:テレビリモコンに関する意識調査(2007.4)

こうしたニーズに応えるべく日立製作所が取り組んだのが、リモコンの存在そのものをなくす方法、すなわち人の身ぶり手ぶりといったジェスチャーによるユーザインターフェースの開発である。

3年前からスタートしたこの研究の成果は、2008年、2009年のCEATECで発表され、大きな反響を呼び起こした。また、本システムは2009年4月から1年間、東京青山の「先端技術館@TEPIA」にて展示を行っており、デジタルサイネージ(看板、広告、コンテンツなどの表示をデジタルで行うディスプレイ)としてはすでに実用段階に入っているといえる。

1-2 手をリモコンに!ジェスチャーリモコンの仕組み

図2 距離画像カメラユニット
LEDで投射する赤外線の反射から距離を算出して画像化する

LEDで投射する赤外線の反射から距離を算出して画像化する
(クリックすると大きな画像が表示されます。)

ジェスチャーリモコンは、人間の動きをカメラで撮影し、その動きを検出・認識することで、テレビのコントロールを実現している。仕組みとしては単純なものだが、テレビの使用環境は、家庭ごとに大きく異なるため、通常のカメラでは動き認識の精度を十分に確保することは難しい。そこで、日立製作所が採用したのが、TOF(Time of Flight)方式の距離画像カメラである。

距離画像カメラは、通常の可視光の影響を受けず、投射する特定の波長の赤外線のみを感知して、その時間差(位相差)から距離を画像化して出力するデバイスである。これを用いることで、色彩や明るさにとらわれず、立体的な映像から「手」の動きを認識することが可能となっている。


距離で形状を把握する仕組みであるため、手袋をしていても、手を閉じていても、人差し指で指差していても、開いていても、変わることなく動きの検知を行うことができる。もっと言えば、正確には手である必要もなく、棒を手の代わりに使っても問題なくジェスチャーを認識することができる。

通常のカメラを用いて、昼間の太陽光の差し込むリビングから、夜の寝室までをカバーするには、高性能なカメラが必要になるのはもちろん、複雑な画像処理アルゴリズムを用いないと動きの検出が難しくなる。距離画像カメラは、環境光の影響が少なく、動きを安定して認識することができる点において、ジェスチャーリモコンに最適のセンサなのだ。

2.ジェスチャーリモコンの使い方

誰でも直感的に操作できることを目指して、ジェスチャーリモコンの操作に用いられる動作は、極めて単純化されている。

手を振ってスタート
図3 スタートの動作
テレビに向かって手を振ることでコントロールをスタート

テレビに向かって手を振ることでコントロールをスタート

資料提供:日立製作所

リモコン機能のスタートに用いるジェスチャーはテレビに向かって手を振る動作である。「家族や友人とリビングでテレビを見ているとき、私たちは様々な動作や身振り手振りを行いますが、テレビに向かって手を振るというのは、まず普通はしない動作です。そこでこの操作をトリガーとしてコントロールを開始することにしました」と開発を担当した松原孝志さんは説明する。

また、リモコンのセンサはある程度の角度を認識することができるため、操作可能な範囲に複数の人間がいることになるが、「そのうちの誰が操作しているのか」についても、この手を振る動作で特定することができる。また、テレビの電源がOFFになっているときには、手を振る操作で電源を入れることができる。

クルクルとジョグダイヤルを回す感覚
図4 チャンネルやボリュームの変更
図4 チャンネルやボリュームの変更

資料提供:日立製作所

手を振る動作には、横と縦の2種類が存在するが、そのそれぞれに、「チャンネルメニュー」と「音量メニュー」が割り当てられている。どちらのメニューも片手をクルクルと回すことで、チャンネルの選択や音量の調節を行うことができる。画面上にはリング上に光点が表示されていて、手の動きに合わせてクルクルと回転するので、自分の動作がちゃんと伝わっていることを確認でき、実際に触って操作している実感が持てる工夫となっている。

日常と共通の操作感
図5 操作の様子
図5 操作の様子

(クリックすると大きな画像が表示されます。)

資料提供:日立製作所

手を縦横に振る、回す、といった操作は、日常的に用いるジェスチャーであり、注意喚起、連続的な移動指示といった意味の上でも、日常とほぼ共通の動作であり、極めて直感的に操作することができるといえる。

上の3種類の動作のほかに、手をテレビに向かって押し込む動作(選択の確定)、や両手を前に出してから閉じる動作(電源OFF)、両手を前に出して車のハンドルを回す動作(エアコンの室温設定などの他のインターフェースへのメニュー切り替えが可能)といった動作を加えることで、ジェスチャーリモコンは汎用的なコントロールインターフェースをほぼ実現している。

3.ジェスチャーリモコンの今後

インターフェースのデファクトスタンダードを目指して

デジタル機器のユーザインターフェースは、あまり共通規格などが策定されることなく、広く普及したものが事実上標準として市場を統一していく傾向がある。PCにおけるプルダウンメニューや、スクロールバーなどがその典型であり、デジタルカメラの操作体系の共通化が進みつつあるのも、同様の事例だと言えるだろう。

テレビのリモコンも同様に数字キー、上下ボタンによるチャンネルキーと音量キーの組み合わせとしてデファクトスタンダードが決まってきたインターフェースである。今回日立製作所の開発したジェスチャーリモコンは、実用可能なレベルで実装されたものとしては、世界初のジェスチャーを用いたインターフェースだといえる。CEATEC以降、メディアの注目を大いに集めているのも、使いやすく実用的な実装が高く評価された結果である。

手旗信号や手話といった事例を考えれば、ジェスチャー自体の表現領域はキーボードと同じか、それ以上に広いものではある。しかし、使うのに練習が必要なようでは、テレビのようなコモディティ化の進んだ製品のインターフェースとしては不適当だ。そういう意味で、だれでも、1分と掛からずに理解でき、使いこなせるインターフェースに仕上がっている日立製作所の本技術は、ジェスチャーリモコンのデファクトスタンダードとして、大本命といってよいだろう。

実用化に向けたハードルは?

今回の取材では、デモ機を用意していただき、実際の操作を体験させていただくことができた。感想としては、すでに技術的には9割方完成しており、製品にこのまま搭載することも十分可能だと感じた。


距離を画像化するセンサと聞いて、大掛かりな研究用の装置を想像していたため、実際のセンサ部の大きさ(図2参照)には正直驚かされた。厚めの単行本程度のサイズに赤外線投射用LEDアレイとカメラが実装されており、現時点ではUSBでホストコンピュータと接続している。

このまま製品化して、既存のテレビに取り付けるオプション機器とすることも可能に思えるが、問題となるのは、距離画像センサのコストとのこと。現在一般的な用途ではほとんど出回っていない距離画像センサは、構造的にはCCDやCMOSなどの撮像素子とそれほど変わらないものの、製造数が圧倒的に少ないことから、まだまだ価格的には高価なのである。

しかし、逆に考えれば、こうしたインターフェースが十分な市場を持つことさえハッキリすれば、大量生産によって安価なセンサが出回るようになる可能性も十分考えられる。単なる映像放送の受信装置としてだけでなく、ホームネットワークのメインディスプレイとしての役割を担う可能性もあるテレビだけに、使いやすく拡張性に優れたコントロールインターフェースの実装には大いに将来性が見込まれる。それだけに、コスト面の課題を克服して、早々にジェスチャーリモコンが市場投入されることを期待したい。

取材協力 :株式会社 日立製作所

掲載日:2010年2月24日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2010年01月20日掲載分

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