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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
ケータイでも復号!?「紙の暗号化」とは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「紙の暗号化」は、印刷物の中の機密情報を特殊な方法でモザイクのように暗号化し、携帯電話のカメラやスキャナで復号する技術です。文字などのモノクロ画像だけでなく、カラー写真の復号も実現。機密情報の管理はもちろん、ブログなどにアップするポートレートなども手軽にセキュアに扱うことが可能になりそうです!

1.「紙の暗号化」ってなんだ?!

1-1 「紙の暗号化」とは

図1 ケータイで暗号を復号できる
図1 ケータイで暗号を復号できる

文書の機密部分だけを暗号化し、携帯電話のカメラで復号できる。

(資料提供:富士通研究所)

紙の暗号化とは、文書の一部をスクランブルに似た形で暗号化し、その部分を携帯電話のカメラで撮影したり、スキャナで読み込んだりすることで元に戻す(復号する)技術である。富士通研究所の開発したこの技術は、デジタルデータだけでなく、印刷物やウェブ上の画像など、目に見えるあらゆる情報を、パスワードを使って暗号化できる点で一般的な暗号化技術とは全く異なるものである。

AES、DESといった一般的な暗号技術では、デジタルデータそのものに対して、数学的な操作を加えるため、画像化された文書が、わずかでも劣化すると復号することが不可能になってしまう。具体的には、JPEG化などの非可逆圧縮や、印刷などの操作を行うだけで、復号不能になってしまうのだ。

図2 印刷物から復号できる原理
図2 印刷物から復号できる原理

セキュリティが高く、かつ印刷後も復号可能

(資料提供:富士通研究所)

紙の暗号化アルゴリズムは、パスワードで一意に決定される画像変換とスクランブルを組み合わせることで、印刷はもちろんのこと、携帯電話のカメラによる撮影などの劣化を経ても、安定した復号が可能になっている。

1-2 携帯電話で復号するための技術

前述のアルゴリズムにより、圧縮や印刷といった劣化に耐える紙媒体の暗号技術が実現したわけだが、本来復号のためには、スキャナを用いた歪みのない再デジタル化が望ましい。紙の歪みやカメラ撮影によるブレや台形歪み、さらにレンズ収差に起因する樽型歪みなどは、どれも復号の大きな妨げになる要素だ。

このため富士通研究所が実用化した2008年6月当初は、紙媒体をスキャンして復号するのが本技術の基本的な仕様だった。しかし、「より手軽にセキュアな情報をPCのない環境でもやりとりしたい」というニーズが数多く寄せられた結果、携帯電話でも復号可能にする取り組みが行われた。

暗号化部分の枠
図3 暗号化画像の拡大図
図3 暗号化画像の拡大図

(資料提供:富士通研究所)

スクランブルと画像変換を再実行する際には、暗号化された矩形部分を正確に読み取り、元のデジタルデータとできるだけ同一になるよう歪み補正を行う必要がある。それを可能にするのが、暗号化された部分の枠線部分である。

暗号化された部分を枠線で認識し、ゆがみを補正することにより精度の高い復号を実現している。また枠線は復号された際には見えなくなるので、カラー写真などを継ぎ目なく復元することができる。

ブレや歪みに対応する画像選択フィルタ

また、携帯電話の限られた処理能力で、負荷の高い画像処理を行うには、フローの最適化が必要である。そのため本技術では画像処理の前に「画像選択フィルタ」による処理を行っている。

図4 画像選択フィルタなしの処理フロー
図4 画像選択フィルタなしの処理フロー

(資料提供:富士通研究所)

カメラからの入力画像を逐次処理しようとすると、ブレや歪みのある画像に対して、高負荷な領域検出処理と復号処理を行っては失敗を繰り返してしまうため、実際に復号が成功するまでに時間が掛かってしまう。利便性を損なうのはもちろん、CPUを酷使するため、バッテリーの消耗も早めてしまうデメリットがある。

図5 画像選択フィルタありの処理フロー
図5 画像選択フィルタありの処理フロー

(資料提供:富士通研究所)

演算量の多い復号処理を行う前に、比較的軽量な画像選択フィルタ処理を行うことで、復号に要する時間を大幅に短縮することができる。画像選択処理は、復号処理の50分の1という短時間で実行されるため、例えば、復号対象の画像を取得できたのが5枚目の場合でも、1枚目で取得できた場合の1.1倍の時間で復号完了するという。体感的には、1枚目で復号できたのとほとんど変わらない感覚で使うことができることになる。

2.紙媒体の暗号技術の必要性

この技術の開発された背景には、紙媒体による情報漏洩インシデントが、全体の55.2%を占めるという現状がある。
 紙媒体の郵送やFAX送信は、メールで送付することができない重要文書において利用されることが多く、そもそもより高いセキュリティが求められる。しかし、誤配送や紛失、不適切な廃棄など、情報漏洩の危険性は、物理的にゼロにすることが難しい。

こうした紙媒体の本質的な問題点を解決するのが、印刷物に対する信頼性が高く、かつ手軽な暗号化技術だったのだ。また、文書全体を暗号化する技術では、本来機密を要するのが一部分に過ぎないにも関わらず、文書の活用範囲を大きく限定することになってしまう。ID、パスワードやクレジットカードナンバー、製品スペックの数字、社内限定の期日情報など、文書に含まれる機密部分は、ごく一部である場合が多い。その部分だけを暗号化して読めなくすることができれば、文書の取り扱いは、より手軽で、かつセキュアになるはずだ。

今日、平文の機密文書はビジネスでも数多くやり取りされているが、社内文書の売り上げ数のカラムだけを削除して取引先に見せたり、打ち合わせ時に「この場で見るだけで、持ち帰りは不可」と前置きして資料配布したりするなど、情報を紙でやりとりする際の少々不自然な習慣は少なくない。たった1つの数字を削除し忘れていたために、配布文書のプリントアウトを数十部単位でやりなおすといった理不尽な経験を、誰しも一度はお持ちではないだろうか。こうした紙にまつわる不便な操作が、必要な部分を手軽に暗号化できれば、ほとんど不要になるのだ。

3.ビジネスからコンシューマ、教育まで幅広い活用範囲

デジタル画像から紙媒体まで、文字情報もカラー画像も暗号化できる本技術には、幅広い活用範囲が期待できる。

ビジネス

前述のように個人情報や企業の機密情報などに、セキュアな暗号化を施すことができるのは本技術の基本的なメリットだが、このほかにも、改ざん防止など幅広い活用が期待できると考えられている。

図6 改ざん検知・防止
図6 改ざん検知・防止

(資料提供:富士通研究所)

コンシューマ

一般向け用途としてまず挙げられるのは、各種サービスのID、パスワード、暗証番号などの安全な管理だろう。

複数のパスワードを管理するのが面倒で、ついつい同じものを使ってしまったり、紙に書いてPC周辺に保管していたり、プライベートとなるとセキュリティ的には最悪の運用をしてしまうこともしばしばだが、手書きのパスワードメモなどをPCに取り込んで暗号化してプリントアウトしておけば、特別な気遣いをしなくても、手軽にセキュアな運用を行うことが可能になる。

また、本技術はJPEGなどの圧縮画像でも利用できるため、ブログやプライベートなウェブサイトに、家族や友人だけに見せたい画像を、暗号化してアップするといった使い方も可能である。

教育

教育の現場でも、個人情報の取り扱いに慎重さが求められるようになってきている。学校には、数多くの個人情報が集まる上、完全なIT化が難しい現場だけに、紙媒体で情報をセキュアにやり取りするニーズは高い。

例えば連絡網はその代表的な活用方法となる。連絡網にある電話番号の部分を暗号化しておけば、生徒が学校から自宅へ持ち帰る際に万一紛失したとしても情報が他人に漏れることはない。このほかにも成績情報から生徒の顔写真まで、公開先を限定したい情報に、本技術による暗号化は有用だと考えられている。

さらに、暗記カードや小テストの答え合わせなど、学習プロセスにおいても、手軽に情報を見えなくできる本技術の応用は期待できる。例えばパスワードを正解から導けるものにして、問題を正解したときにだけ、その確認ができる(正解を公開せずに、正確な答えあわせが可能になる)仕組みなども、本技術ならではの応用方法だと言える。


このほか、工夫次第ではスタンプラリーや懸賞クイズなどのイベントやキャンペーン、ゲームなど、セキュリティとは異なる方面にも、本技術は幅広い応用ができるのではないかと考えられている。

取材協力 :株式会社富士通研究所

掲載日:2009年12月 9日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2009年10月28日掲載分

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